著者
佐々木 和夫 九内 淳堯 妹尾 菊雄 河野 之伴
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1980, no.6, pp.966-973, 1980-06-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
19

溶融炭酸塩を反応媒体に用い,二酸化炭素と炭素から一酸化炭素を生成する反応を700℃付近で行なわせることを試みた。それにさき立って数種の炭酸塩と炭素との反応を試みたところ,いずれの塩でも同温度での単純な固/気反応よりはるかに速い速度で一酸化炭素発生がみられた。反応はM2CO3+C=M2O+2COと考えられるが,この反応は熱力学的には自発反応ではない。しかし.炭酸塩そのものの熱分解が既往の熱化学値以上に進行するので,熱分解で生じた二酸化炭素が一酸化炭素に転化する経路をとるものと考えられる。 三元アルカリ金属炭酸塩の融体中に底部から二酸化炭素を供給し融体中に分散している炭素粒と反応させることにより気体二酸化炭素からの連続転化実験も行なった。容易に定常状態が得られるので,単純な速度解析が可能であり,擬一次速度定数を決めることができた。本報の結果は,実用反応としてまだ不十分であるが改善の可能性が大きい。
著者
佐々木 和夫 木谷 晧
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1990

本研究では、パラジウム系触媒と水素、酸素を用いて、一段階で高純度の過酸化水素を得ることを目的として、気相及び液相の二種の反応系について検討し,以下に述べる成果を得た。1.水素、酸素同時通気法による過酸化水素の一段合成気相法では、シリカゲル上にパラジウムを担持した触媒を用いて、条件を種々変化させて詳細に検討した。しかし、生成する過酸化水素を触媒相から搬送させることが因難であり、気相法は不適であると結論した。従来知られている液相一段合成法では、過酸化水素の分解を防ぐために安定剤を添加する必要があり、高純度の溶液が得られなかった。本研究において、担体であるシリカゲルの表面をトリメチリシリル化して疎水性にすることにより、過酸化水素の生成速度及び溶液濃度が著しく増加し、高純度の過酸化水素水溶液が得られることを見い出した。しかし平衡濃度は製品として利用できるほど高くなく、濃縮工程が必要である。このため、本法を過酸化水素のin situ発生法として用い、生成する過酸化水素を有機基質と反応させて酸化生成物を得る方法について検討した。2.過酸化水素を利用する芳香族化合物の酸化反応ベンゼンを溶媒として、パラジウム触媒分散下で水素、酸素の混合気体を通気すると、選択的にフェノ-ルが得られることを見い出した。実験条件を詳細に検討してフェノ-ル生成の最適条件を決定すると共に、水酸化反応は触媒上で生成する過酸化水素を経由することを明らかにした。また、安息香酸やナフタレンのような固体の基質については、酢酸を溶媒に用いることにより、同様に水酸化反応を効率よく行えることを見い出した。更に気相反応によるベンゼン酸化についても検討した。パラジウム触媒ではフェノ-ルは殆ど生成しなかったが、銅を共担持させると著しく触媒活性が向上した。
著者
野中 勉 佐々木 和夫 竹原 善一郎 藤嶋 昭 長 哲郎 杉野目 浩 宇根山 健治
出版者
東京工業大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

次世代の有機電気化学における新しい先端的研究領域の開拓と創造が模索された。前年度における研究成果に基づいて、有機電気化学の新領域は、電極反応の反応場である電極界面に対する新しい概念の構築と展開なしでは開拓できないという基本理念の下で研究が進められた。その結果、電極界面反応場は下記の3つの新しい概念から成り、各々に設計・制御の新しい原理と手法が求められることが検証された。(1)三次元機能修飾電極界面反応場:分子識別機能、選択的吸着・透過・配向機能、不斉機能などをもつ反応場が設計され、そこでの有機電極反応の解析を通じて機能発現が実証された。(2)超イオン雰囲気電極界面反応場:溶融塩系、固体電解質系、気相電解系、不均一電解液系、超強酸、超強塩基系、電解発生酸・塩基系、溶解電極系、超疎水性電極系などの反応場が設計され、そこでの有機電極反応の解析を通じて反応制御の新しい局面が開かれた。(3)エネルギー照射電極界面反応場:プラズマ系、超音波照射系、光照射系、磁場照射系、超高電位印加系などの反応場が設計され、そこでの有機電極反応の解析を通じて化学エネルギーだけでは生起しない新しい電極反応が開発された。以上により、有機電気化学の新しい研究領域は、電極界面反応場の新しい概念と原理・手法に基づく設計と制御によってもたらされる反応の帰納的、能動的かつ合目的的な超精密制御の追究にあると結論される。