著者
小島 克己 上條 厚 益守 眞也 佐々木 惠彦
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.p258-262, 1994-05
被引用文献数
4

マツノザイセンチュウの病原力の弱い培養個体群も, セルラーゼを体外に分泌していることを活性染色法により確かめた。マツノザイセンチュウが分泌するセルラーゼ酵素群の組成は, ニセマツノザイセンチュウとは異なるものの病原力の強い培養個体群と弱い培養個体群の間で違いはみられなかった。マツノザイセンチュウが分泌したセルラーゼの活性を比べると, 病原力の強い培養個体群の方が病原力の弱い培養個体群よりも強かった。またマツノザイセンチュウの分泌するセルラーゼが結晶セルロースを分解する能力をもつことを明らかにした。マツノザイセンチュウの分泌するセルラーゼがマツ樹体内においてもセルロースを分解しうると考えられた。以上よりセルラーゼがマツ材線虫病の病原物質であるという可能性がより確かになった。
著者
丹下 健 金 坂基 佐々木 惠彦
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.138-143, 1994-03-01

マツ材線虫病の進展過程におけるアカマツ成木の幹木部組織活性の変化を明らかにするために、枯死木の肥大成長停止時期の推定と自然感染によって枯死に至った立木の幹木部呼吸速度の変化を調べた。マツ材線虫病による枯死が毎年発生しているアカマツ林を調査地とした。枯死木の年輪解析から、肥大成長の停止は春材形成から夏材形成へ移行する時期と推定された。8月下旬にすべての針葉が褐変し枯死した供試木の呼吸速度は、7月下旬から減少し始めた。それ以前は、枯死しなかった供試木の呼吸速度と違いがなく、傷害呼吸による呼吸速度の増加はみられなかった。年越し枯れを起こした供試木の呼吸速度は、枯死する約1ヵ月前の5月下旬の時点ですでに他の供試木の呼吸速度の約50%に低下し、その後も減少傾向にあった。マツ材線虫病で枯死した供試木および枝条中にマツノザイセンチュウの存在が確認された供試木では、葉色等に異常がなく、測定部位の幹木部呼吸速度も低下していない時点で、日中に気温の上昇にともなう幹木部呼吸速度の上昇がみられ、すでに樹冠部で通水阻害が生じ、樹液流速度の減少が起こっていると推定された。