著者
早瀬 良 大久保 暢子 佐々木 杏子 角濱 春美 沼田 祐子 三上 れつ 菱沼 典子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.79-88, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
19

本研究の目的は我が国の急性期病院において根拠ある看護技術の普及に関わる組織的要因とその具体的内容を明らかにすることであった. 根拠ある看護技術が普及している施設に勤務している8施設28名の看護師を対象とし, 半構成的面接調査を実施した. 結果, 根拠ある看護技術の普及に関わる組織的要因について, 237コードの意味内容から27サブカテゴリーに分類し, 5カテゴリー (【組織風土】【看護管理者の推進行動】【部署メンバーの態度・特性】【組織内の協力】【経済的な影響】) を抽出した. 根拠ある看護技術を普及させるために特有な組織的要因として, 個々人の特性である【看護管理者の推進行動】と【部署メンバーの態度・特性】が示され, 特に看護師長のリーダーとしての特性の重要性が見い出された. また, 組織構造の内部特性として【組織風土】【組織内の協力】, 組織の外部特性として【経済的な影響】が示され, 多職種連携の土壌の重要性ならびに診療報酬が普及を促進するきっかけとなることが見い出された.
著者
桑本 暢子 菱沼 典子 中山 和弘 鈴木 和代 青池 慎一 佐々木 杏子 佐竹 澄子 品地 智子 中村 佳代 古川 優子
出版者
聖路加国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

脳卒中患者に対する背面開放座位ケアプログラムの定着を目指した看護師支援ツール開発のために、普及理論をもとに質的研究を行った。結果、促進因子は,認定/専門看護師がオピニオンリーダーとなり,コアナースの育成,多職種/家族の協力,病棟文化,電子チャートにケア項目として入れる,プログラムをアレンジする,相対優位性/試行可能性,/両立可能性が高いことであった.阻害因子は,看護師の異動,採用拒否者の存在,教材不足,複雑性/観察可能性の低さであった.促進/阻害因子の多さ,強さによって,導入/実施継続,中断が起こっていた.定着には,プログラムの重要要素は保持した上で内容を変化させることが重要であった.
著者
佐々木 杏子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.4-13, 2014-01-20 (Released:2016-07-08)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究は,看護技術のイノベーションといえる褥瘡ケアの日本における普及過程を,文献レビュー,普及を裏付ける資料,インタビュー調査により明らかにし,その結果をロジャーズのイノベーション普及理論に基づき分析を行い,普及に影響した要因を明らかにする事例研究である.褥瘡ケアの普及の第一の促進要因として,課題とする現象に深く関心を寄せ活動を行う複数のチェンジ ・ エージェントの存在があげられた.チェンジ ・ エージェントを核として,現場で技術を示すことのできるローカルオピニオンリーダーが多数存在し実践活動を行っていること,マスメディアや学会等をはじめとするさまざまなコミュニケーション ・ チャンネルを有効活用したことも普及に関連した.また,イノベーションの科学的根拠を蓄積する研究が,基礎研究も臨床研究も積み重なっていなければならないことも示された.褥瘡ケアに特有な要因として,長年の褥瘡ケアへの不全感,成果が目に見えることがあげられた.
著者
沼田 祐子 角濱 春美 大久保 暢子 早瀬 良 佐々木 杏子 三上 れつ 菱沼 典子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.95-103, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
24

根拠のある新しい看護技術の普及は看護にとって喫緊の課題である. この課題に対し, イノベーションという言葉がしばしば用いられるが, その意味するところはあいまいである. そこで本研究は, 根拠のある新しい看護技術の普及戦略モデルを構築するために, 現在の日本の看護における「イノベーション」の概念を明らかにすることを目的とした. 研究方法はRodgers (2000) の概念分析の手法を用い, 「イノベーション」「看護」を含む和文献15件を分析した. その結果, 日本の看護におけるイノベーションの先行要件は, 問題の存在に気づき, 解決するために新しい技術を採用する過程であり, その過程に作用する要因があった. 属性は既存の看護技術や行動様式にとり替わる根拠に基づく技術の内容であり, その技術が組織に取り入れられることが一次的帰結, 取り入れた技術の施行による成果が二次的帰結であった. 看護におけるイノベーションは, 先行要件から帰結まで, 新しい看護技術の普及過程を示すものであり, 普及に影響する要因を含むものであった.