- 著者
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武石 典史
- 出版者
- 聖路加国際大学
- 雑誌
- 挑戦的萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
平成29年度は、陸軍における人材の選抜・配分の傾向と大正末期頃から陸軍で進行する権力の分化とが、どのような関係にあったのかという点を検討した。単に陸軍の動向をあきらかにするのではなく、文官官僚との比較をとおして、さらにはチリやブラジルといったラテンアメリカ諸国の政軍関係の研究成果を参考にしながら、後発国の軍部の特長について検討した。具体的には次の通りである。①『日本陸海軍総合事典』および『官報』に記載された情報を基礎資料とし、回顧録、新聞・雑誌記事の徹底的な分析をとおして、「陸軍内の選抜」と「諸ポストの階層性」との対応性の解明を試みた。なお、陸軍将校およびその関係者によって刊行された『偕行社記事』、『偕行』の網羅的な調査を実施した。②Leonard A. Humphreys, The way of the heavenly sword: the Japanese Army in the 1920's, Stanford University Press, 1995 や Edward J. Drea, Japan's Imperial Army: Its Rise and Fall, 1853-1945, University Press of Kansas, 2009、Meirion and Susie Harries, Soldiers of the Sun: the Rise and Fall of the Imperial Japanese Army, Random House, 1994 をはじめとする、外国人研究者の手による日本陸軍の研究群を綿密に検討し、その知見と考察を整理した。また、Alfred C. Stepan, The Military in Politics: Changing Patterns in Brazil, Princeton University Press, 1971 や José Nun, ‘The Middle-Class Military Coups,’ in Abraham F. Lowenthal, and J. Samuel Fitch, ed., Armies and politics in Latin America, Holmes & Meier, 1986 の分析結果の一部を、日本の比較材料とした。③上記の①と②の双方のデータを突き合わせ、相互に資料批判させるプロセスを経ながら、昭和期における陸軍の動向を検討した。