著者
早瀬 良 大久保 暢子 佐々木 杏子 角濱 春美 沼田 祐子 三上 れつ 菱沼 典子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.79-88, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
19

本研究の目的は我が国の急性期病院において根拠ある看護技術の普及に関わる組織的要因とその具体的内容を明らかにすることであった. 根拠ある看護技術が普及している施設に勤務している8施設28名の看護師を対象とし, 半構成的面接調査を実施した. 結果, 根拠ある看護技術の普及に関わる組織的要因について, 237コードの意味内容から27サブカテゴリーに分類し, 5カテゴリー (【組織風土】【看護管理者の推進行動】【部署メンバーの態度・特性】【組織内の協力】【経済的な影響】) を抽出した. 根拠ある看護技術を普及させるために特有な組織的要因として, 個々人の特性である【看護管理者の推進行動】と【部署メンバーの態度・特性】が示され, 特に看護師長のリーダーとしての特性の重要性が見い出された. また, 組織構造の内部特性として【組織風土】【組織内の協力】, 組織の外部特性として【経済的な影響】が示され, 多職種連携の土壌の重要性ならびに診療報酬が普及を促進するきっかけとなることが見い出された.
著者
早瀬 良 坂田 桐子 高口 央
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.104-115, 2013 (Released:2013-03-09)
参考文献数
38
被引用文献数
1

医療機関では,質の高い医療サービスの提供が求められている。本研究では,医療の質の指標の1つである患者満足度について,医療を提供する側である看護師と医療を提供される側の患者の両者の評価を用い,特に職種間の協力によるチーム医療に着目し,患者の満足度との関連を検討した。調査対象者は外来患者290名,入院患者205名,看護師108名であった。分析の結果,以下のことが示された。(1)外来患者は医師の接遇評価が肯定的であるほど,外来診療への満足度が高い。(2)入院患者は,病棟看護師の接遇評価および医療従事者間の連携評価が肯定的であるほど,入院生活への満足度が高い。(3)さらに,看護師が他者と協力して業務遂行しているという自己評価は,医療従事者間の連携に関する患者の評価を介し,患者の入院満足度を規定した。以上の結果から,質の高いサービスを提供するためには,看護師が他職種と連携することで,患者の満足度を高めることが重要である可能性が示唆された。
著者
早瀬 良 坂田 桐子 高口 央
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.135-147, 2011 (Released:2011-03-08)
参考文献数
47
被引用文献数
2 1

医療機関では,安全で質の高い医療サービスの提供が求められている。そのためには,医療機関のスタッフが,職種の異なるスタッフと協力することや,自発的に役割外行動に従事することが不可欠である。本研究の目的は,社会的アイデンティティ理論に基づき,看護師が安全で質の高いサービスを提供する心理過程について検討することである。調査対象者は看護職者217名であった。分析の結果,以下のことが示された。(1)自分の職種に誇りを感じることと同僚から尊重されることの両方が職種アイデンティティを増加させ,職種アイデンティティは協力行動を増加させた。(2)また,同僚から尊重されていることは役割外協力行動を増加させた。(3)さらに,職種アイデンティティは職種間協力行動を増加させ,病院アイデンティティは病院への定着意志を増加させた。以上の結果から,安全で質の高いサービスを提供するためには,看護師が職種と病院の両方に同一視することが有益である可能性が示唆された。
著者
沼田 祐子 角濱 春美 大久保 暢子 早瀬 良 佐々木 杏子 三上 れつ 菱沼 典子
出版者
日本看護技術学会
雑誌
日本看護技術学会誌 (ISSN:13495429)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.95-103, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
24

根拠のある新しい看護技術の普及は看護にとって喫緊の課題である. この課題に対し, イノベーションという言葉がしばしば用いられるが, その意味するところはあいまいである. そこで本研究は, 根拠のある新しい看護技術の普及戦略モデルを構築するために, 現在の日本の看護における「イノベーション」の概念を明らかにすることを目的とした. 研究方法はRodgers (2000) の概念分析の手法を用い, 「イノベーション」「看護」を含む和文献15件を分析した. その結果, 日本の看護におけるイノベーションの先行要件は, 問題の存在に気づき, 解決するために新しい技術を採用する過程であり, その過程に作用する要因があった. 属性は既存の看護技術や行動様式にとり替わる根拠に基づく技術の内容であり, その技術が組織に取り入れられることが一次的帰結, 取り入れた技術の施行による成果が二次的帰結であった. 看護におけるイノベーションは, 先行要件から帰結まで, 新しい看護技術の普及過程を示すものであり, 普及に影響する要因を含むものであった.
著者
平松 祐司 江口 勝人 米沢 優 早瀬 良二 関場 香
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.442-448, 1981-04-01

ポリアミン生物界に広く分布する生体アミンで, 核酸合成, 細胞増殖との密接た関係が明らかになつてきている.しかし, 産科領域におけるポリアミンの報告はきわめて少ない.そこで今回我々は, 妊娠, 分娩, 産褥, 新生児の血中ポリアミン(putrescine, spermidine, spermine)を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定してみた.なおポリアミンは血液中では赤血球に多く, 血漿中に少ないので, 今回は赤血球ポリアミンについて検討を加えた.妊娠するとspermidine, spermineは徐々に増加しはじめ, その増加程度は妊娠5ヵ月より急増し, 妊娠7〜9ヵ月では非妊振時に比較するとspermidineは約2倍, spemineは約3倍の高値をとるが, 妊娠10ヵ月に入ると両者とも減少してきた.そして, 産褥5同目では妊娠10ヵ月の値と比較しspermidineは同程度, spermineはやや高値をとつた.しかしputrescineは妊娠, 産褥を通じ非妊娠時と同程度の低値で推移した.この妊娠時のspermidine, spermineの変化については, 骨髄造血機能および内分泌の影響が, 産褥期の変化については, 分娩時出血による造血光進および乳汁分泌の影響が考えられる.分娩時母体血と膀帯血の比較では各ポリアミンとも膳帯血中に有意の差をもつて多かつたが, 膀帯動静脈間の差は認められなかつた.この母体血と膀帯血問の差は, 胎児造血機能の亢進のみでなく, 胎児の成長発育を反映している可能性もある.新生児期においては, 各ポリアミンとも生後1目目にやや増加し, putrescineは7目目までそのレベルを保つたが, spermidine, spermineは徐々に減少していつた.この新生用赤血球のspermidine, spermineの変化は, 新生児末梢血中の有核赤血球, 網状赤血球の生後の変化とよく似ている.