著者
佐々木 重信
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では,超広帯域(UWB)無線伝送を用いた短距離高速微弱無線ネットワーク実現のための信号設計法,受信技術、誤り制御技術、多元接続時の性能評価法などの検討を行い、主に次の成果を得た。[1]UWB微弱無線伝送におけるピーク放射電力制限を考慮した占有帯域と伝送速度の関係を通信路容量の点から明らかにした。[2]直接拡散(DS)変調を用いたUWB方式を拡張したDS-時間ホッピング(DS/TH)UWB変調,複数の周波数帯を用いるDS-マルチバンドUWB変調,およびこれらを組合せたDS/TH-マルチバンドUWB変調を提唱した。DS-マルチバンドUWBを利用した既存無線業務への干渉低減法を考案し、効果を確認した。[3]DS-UWB多元接続伝送の性能評価法として、簡易版改良型ガウス近似および特性関数による、任意のパルス伝送間隔における多元接続干渉のモデリング法を検討し,その適用範囲を明らかにした。特性関数を用いた方法では任煮のパルス波形やフェージング通信路への対応が可能で、かつ少ない計算量でシミュレーション結果と一致する理論誤り率特性が得られた。[4]DS-UWBにおけるマルチパス環壌を考慮したRake(レイク)受信技術の開発を行った。強度の高いパスを合成する選択Rake受信,最初に到来するパスを基準にパスを合成する部分Rake受信を検討し,パス合成法の違い、ジッタ,パルス間干渉,パス振幅の量子化などが受信性能に与える影響を明らかにした。また,UWBがパルスを間欠的に伝送することに着目し,パス到来時間の推定に基づく最適Rake受信の概念を提唱し,その実装面の問題を解決した方法として、分数間隔選択Rake受信を提案し,従来のRake受信よりも性能を改善できることを示した。またUWB信号のパルス幅とパルス間隔の関係(デューティ比)が受信性能に与える影響を明らかにした。
著者
朱 近康 佐々木 重信 丸林 元
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B-(0xF9C2) 通信 (0xF9C2) (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.p207-214, 1991-05
被引用文献数
44

スペクトル拡散 (Spread Spectrum: SS) 通信方式における最も重要な課題の一つは周波数利用効率である.帯域制限のある伝送路にSS方式を適用する場合,データの高速化に伴って処理利得が低下し,SS方式のメリットが生かせなくなる.本論文では,これらの問題に対して有効な新しい並列組合せSS通信方式を提案する.本方式を用いれば,系列長NのN個の直交拡散系列(例えば直交Gold系列)を利用して,送信情報によりN個の系列からr個の系列を並列に組み合わせることにより,(r+log2(NCr)) ビットのデータを同時に送信でき,Nが大きい場合には,例えばr=N/4のとき,Nビットのデータを,またr=2N/3のとき,1.58Nビットのデータを伝送できる.本論文では,並列組合せSS通信方式について,基本原理,システム構成を示し,処理利得と周波数利用効率の関係,組み合わせたr個の系列の誤り率,ビット誤り率,耐振幅制限性,などの特性を解析し,その利点を明らかにする.
著者
佐々木 重信 日馬 拓海 周 杰 村松 正吾 菊池 久和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WBS, ワイドバンドシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.74, pp.25-30, 2003-05-16
被引用文献数
5

Ultra Wideband(UWB)無線伝送方式は、数百psecから数nsecという極めて時間幅の短いパルスを用い、周波数を数GHzもの帯域に拡散する新しい無線伝送技術である。 UWB伝送は近距離の高速無線データ伝送の実現に有望な技術であるが、伝送に用いられるパルス幅が極めて短いため、パルス発生器で生じるジッタが深刻な問題になる恐れがある。また、信号が極めて広帯域を占めるため、同じ周波数帯域を占有する既存の狭帯域通信の影響が避けられない。本研究では直接スペクトル拡散(DS/SS)方式を用いたUWB(DS-UWB)伝送におけるジッタと狭帯域干渉の影響について、計算機シミュレーションにより評価を行った。その結果、本来の性能を得るためには、ジッタはパルス幅に対して1〜2%以下である必要があり、また狭帯域干渉ではSIRが20dB以上必要であることがわかった。
著者
佐々木 重信 菊池 久和 朱 近康 丸林 元
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B-II, 通信II-無線通信・無線応用 (ISSN:09151885)
巻号頁・発行日
vol.77, no.11, pp.655-664, 1994-11-25
被引用文献数
5

本論文では,筆者らがこれまで検討してきた並列組合せSS通信方式の一方式として,差動並列組合せSS(DPC/SS)通信方式を提案する.並列組合せSS方式は,複数のデータビットを+,-の状態をもつ拡散系列の組合せに変換して送信することで周波数利用効率を高めたSS方式である.本論文で提案する方式は,送信する系列にかかる+,-の状態データに送信側で差動符号化を施し,受信側で<は拡散系列の組合せを包路線検波により復調し,また+,-の状態データを遅延検波を用いて復調する.このため,受信側で搬送波の位相を再生する必要がなく,伝送路における位相変動が激しい移動体通信に有効と考えられる.本論文では,DPC/SS通信方式の基本的な性能として,白色ガウス雑音のみの伝送路,レイリーフェージング伝送路における誤り率特性,またレイリーフェージング伝送路においてダイバーシチを適用した場合の効果を明らかにした.その結果,本方式を従来のDPSKやBPSK方式と同等のデータ伝送速度で加法性白色ガウス雑音伝送路に適用した場合,ビット誤り率10^<-8>における情報ビット当りの所要SN比を,DPSKやBPSK方式に比べて,1dB以上削減できることが明らかになった.またレイリーフェージング伝送路において受信側にダイバーシチを適用した場合,ブランチ数の増加に伴うビット誤り率の改善効果が従来のDPSKによる直接拡散SS方式に比べて大きいことが明らかになった.