著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
vol.79, pp.53-88, 2016-03-31

本稿は,「イギリスの多民族・多宗教統合と《共生》の問題」を歴史的に考察しようとする研究プロジェクトの一環として,筆者がこれまで進めてきた多民族・多宗教都市レスターの南アジア系,ブラック系移民研究に続き,ホワイト系移民,なかでもとりわけアイルランド系移民の「ライフ・ストーリー」の紹介を通して,彼らの歴史や文化を明らかにし,そこから戦後レスターにおける「好評判」の歴史を再考する足掛かりを得ようとするものである。筆者は,2001年以来,イギリスにおける代表的な多民族・多宗教都市の一つであるレスターに足を運びながら,フィールドワークを続けてきている。2001年時点で全人口約28万を数えるレスターには,数多くの南アジア系,ブラック系,ホワイト系移民が居住し,その年の国勢調査ではホワイトを除くエスニック・マイノリティが101,182人で,全体の36.1%も占めるに至っている。
著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学
雑誌
駿台史學 (ISSN:05625955)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.111-146, 1997-03

イギリスにおける中央政府レヴェルの居酒屋政策は、別稿1)で明らかにしたように、16世紀半ばから17世紀前半にかけて、施政者のさまざまな思惑を含みながらも、「酒場」政策を中心に積極的な展開をみせているが、こうした政策は、地方レヴェルではどのような様相を呈したのであろうか。地方によってそれぞれ事情は異なるが、この時期、「貧困」や「生存のための移住」(subsistence migration)などとも深く関わりながら「酒場」軒数が急増し、それに対して、そこでの「悪弊や無秩序」を取り締まるためにいち早く積極的な居酒屋政策を展開させたのは都市である。
著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所年報 (ISSN:05433908)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.46-47, 1998-07-25

筆者は,これまで近世前期イギリスの居酒屋を中心に研究をすすめてきたが,そこでの検討課題はほぼ次の三点であった。その一つは,当時の支配的な居酒屋像(「サタンの巣窟」)とは異なる居酒屋の「実態」(「飢餓に対する主要な砦」)研究,二つ目は,当時の居酒屋の世界を「変容」させる要因ともなった居酒屋政策の研究,そして三つ目は,そうした居酒屋政策にも影響を与えたと考えられるピューリタンらによる「モラル・リフォーム」の運動である。本研究では,これまでの,こうした近世イギリスの居酒屋に関する研究をより発展・深化させるべく,近世ロンドン(特に16~17世紀前半)を「実証」のフィールドに定め,「モラル・リフォーム」や居酒屋政策との関連で,当時における居酒屋の世界を明らかにしていきたいと考えている。
著者
佐藤 清隆
出版者
駿台史学会
雑誌
駿台史學 = Sundai historical review : the journal of the Historico-Geographical Association of Meiji University (ISSN:05625955)
巻号頁・発行日
no.148, pp.19-48, 2013-03

1984年6月,インド中央政府軍がパンジャーブ地方のアムリトサルにあるシク寺院「ゴールデン・テンプル」を襲撃し,数多くの死傷者を出した。その後,シクによるヒンドゥーへの報復活動や暴動がインド各地で発生した。さらに,同年10月には,当時のインド首相インディラ・ガンディーがシクによって暗殺され,その報復活動のなかで数多くのシクが殺害され。そして,これら一連の政治的大惨事による影響は,インド圏内だけでなく,イギリ,カナダ,アメリカ合衆国などのインド、系移民コミュニティの世界にまで及んでいたのである。本稿は,この移民コミュニティへの影響を問題とする。
著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 文学篇 (ISSN:03896072)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.149-165, 1978-12-01

画期をなす当該イングランド社会は貧民(the poor)が未だ嘗てないほど王国のあちこちに発生し、そのことが一つの大きな社会問題となって来る時期である。16世紀に入るとそれまで「教会」中心であった救貧が国家や諸都市の世俗的権力による貧民政策へと転換されるのもこの夥しい貧民の発生と深く関連している。つまり、国家による一連の救貧法施行やロンドンを初めとする多くの諸都市による貧民の調査、乞食厳禁、強制的な救貧税の徴収、病人の慈恵院収容、怠惰者・浮浪者の矯正院収容等さまざまな救貧政策の実施がそのことを物語っている。ところで、これらの政策の対象とされた貧民の世界はどのような様相を呈していたであろうか。
著者
佐藤 清隆
出版者
明治大学人文科学研究所
雑誌
明治大学人文科学研究所紀要 (ISSN:05433894)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.119-154[含 英語文要旨], 2009-03

2005年7月7日(木)と21日(木)の二度に渡り、ロンドンで同時爆破テロが発生した。その死者は50名を越えると報道された。ちょうど、グレンイーグルズ(Gleneagles)で主要国首脳会議(G8サミット)が開催され、また2012年五輪がロンドンで開催されることが決まった(64年ぶり3回目)翌日の出来事であった。この第一回目のテロには、国際テロ組織アルカイダが関係しているとされ、自爆テロを行った容疑者は4名で、パキスタン系英国人3名とジャマイカ系英国人1名と報道された。それぞれ年齢と住まいは、22歳(リーズ)、30歳(デュースベリー)、18歳(リーズ)、30歳前半か?(エイルズベリー)で、彼らは移民2世・3世であった。