著者
水山 高久 佐藤 一朗 小杉 賢一朗
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
no.66, pp.p48-60, 1994-11
被引用文献数
2

山腹斜面中にはパイプ状の水みちがあり, 流出過程に大きな影響を与えていると考えられるようになってきた。しかし, その実態については限られた地域でしか明らかにされていない。山腹の表層崩壊について一様な土層構造を仮定した雨水の浸透現象に基づく説明が試みられてきたが, 崩壊の発生し易い斜面は判定できるものの, 時間的に降雨のピークに対応して発生する現象は説明されていない。筆者らは最終の研究目標を表層斜面崩壊の予測に置き, そのために必要不可欠な研究項目としてパイプフローを取り上げた。かつて谷の出口で流量観測が実施された芦生演習林内のトヒノ谷の中の1つの凹地形 (0次谷, hollow) において2つのパイプの流出量を観測するとともにパイプの空間的な分布を調べた。その結果, 以下のような項目が明らかになった。・0. 64haの0次谷で雨中の調査を行った結果, 直径3 - 8cmの7カ所のパイプの出口が見つかった。その内, 下流端の3カ所だけに常時流水が見られる。その他は斜面が先行降雨によって湿潤になって降雨強度が大きい場合にのみ流出が見られた。・パイプ流出量の時間的な変化は降雨波形とよく対応している。しかし, パイプの流量には上限があり頭打ちとなる。観測しているパイプの1つで1リットル程度の土砂流出が発生した。その後, このパイプについては上述の流量の上限が無くなった。・パイプの形状, 分布を調べるため掘ってみた。パイプの形をしているのは出口から50cm程度で, その後はマトリクスの流失したと思われる礫層につながっていた。したがって, 地表への出口はパイプとなっているが流れとしてはパイプ流というよりも礫間流と呼ぶべきものであった。・パイプからの流出は流量に上限を与えたタンクモデルでうまく説明することができた。
著者
槇村 浩一 佐藤 一朗 杉田 隆 山崎 丘
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.77-82, 2011 (Released:2011-02-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 6

It is important to promote microbiological research essential for long-term manned space activities under microgravity and in a completely closed environment in space craft in relation to long-duration space expeditions on the International Space Station (ISS) or to the moon and Mars in the future. Environmental monitoring data from the space shuttle, the Mir, and the ISS have already shown that microorganisms isolated from air and on inner surfaces of space craft were generally carried by crew members. The Japanese Experiment Module (JEM) “KIBO” was attached to the ISS and started its operation from 2008. It is an invaluable opportunity to begin the survey of the transition of microbiota, particularly fungal biota, in JEM from “brand-new” to “well-used” condition at various periods. Therefore, we are preparing the on-board analyzing systems for microbiota in air and on inner surfaces of ISS/JEM and normal microbiota of the astronauts themselves. In this paper, we introduce the current status and future plans on fungal research on ISS/JEM to protect flight crew members and flight hardware from potentially hazardous microorganisms from the environmental and biomedical aspects of Japan Aerospace Exploration Agency (JAXA).
著者
佐藤 一朗 槇村 浩一 蓮見 弥生 西山 彌生 内田 勝久 山口 英世
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会総会プログラム・抄録集 第52回 日本医真菌学会総会・学術集会 (ISSN:09164804)
巻号頁・発行日
pp.73, 2008 (Released:2009-03-06)

【目的】真菌症は免疫力の低下した患者にとって重篤な症状を起こす病害である。そのため、免疫力の低下した患者における微生物叢とその薬剤耐性を定期的に把握する必要がある。我々は外来患者の外耳道から新規Candida属酵母を得たので報告する。【材料および方法】国内病院での外来患者の外耳道から採取した耳漏スメアを分離源とした。純粋分離菌株の26S rDNA D1/D2領域(26S)および ITS1+5.8S rDNA+ITS2領域(ITS)を用いた分子系統分類を行った。そのほかの試験項目はThe Yeasts 4th edに順じた。【結果および考察】純粋分離菌JCM15448株は26Sの相同性がCandida haemulonii CBS5149T とは85.7%、C. pseudohaemulonii CBS10099Tとは83.0%であった。ITSはそれぞれ84.9、81.4%であり、系統樹ではCandida属に分類されたが同一な種は認められなかった。本菌株は42℃およびビタミンフリー培地で生育陽性であり、Candida属としては特徴的な培養性質を示した。その他の培養性質から本菌株はグループ VI(イノシトール・硝酸カリウム・エリスリトール陰性、40℃陽性)に分類された。本グループはC. albicansをはじめ病原性が報告されている種が複数属しているが、本菌株の病原性は不明である。ボリコナゾール・イトラコナゾール・フルコナゾール・フルシトシンに対する感受性は既知の種と差が認められなかった。これらの結果から本菌株をCandida属の新種と判断した。