- 著者
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杉山 三郎
佐藤 悦夫
植田 信太郎
奥田 隆史
- 出版者
- 愛知県立大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2006
我々は平成16年度まで「月のピラミッド」を集中発掘し、内部に7時期のピラミッド基壇と5基の埋葬墓を発見した。ピラミッドの隣接区域からは住居址、黒曜石工房跡、5時期の中規模モニュメント遺構を確認した。本研究では、7年間のフィールドワークにより得られた膨大な発掘資料の整理と報告書の作成、また出土した遺物の分析・解釈・出版準備、そして副葬品の完形遺物のデーターバンクの作成を行なった。現在成果の出版準備中である。英語版はニューメキシコ大学出版社から、またスペイン語による詳細な発掘報告書はメキシコ政府の国立人類学歴史学研究所から出版する同意を得ている。さらに地上測量を基にしたテオティワカン中心部の三次元復元図作成のため、長期の現地作業を行なった。すでに「月の広場」から「城壁」まで「死者の大通り」に沿った建築群を2.5Kmにわたり、一部の住居群を除き、測量済みである。これにより、都市計画全体の空間配置も正確に把握可能となり、建築データはすでに様々な研究に使われ成果が出始めている。巨大化したモニュメントの資料は、国家形成と政治体制に関する直接的資料であり、政権の拡張と宗教的イデオロギーを反映する。また生贄体や戦士の副葬品、戦士の象徴であるジャガー、ピューマ、狼、鷲等の生贄動物体は、従来考えられていた平和的な神聖国家像と異なり、軍事的な覇権国家であったと示す。他に黒曜石製品、遠隔地からの貝製品、ガテマラのヒスイ製品などはテオティワカン国家の交易・政治的介入を暗示し、マヤ王朝と直接の関係を示す資料も出土した。一方でモニュメント周辺の諸活動に関する資料も得て、現テオティワカン国家像を大きく変える物的資料獲得と理論形成に貢献したと考える。