著者
植田 信太郎 黒崎 久仁彦 太田 博樹 米田 穣
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2006

2500年前から2000年前にかけて古代中国の人類集団の遺伝的構成が大きく変化したことを示した我々の先の研究成果を発展させるため、黄河中流(中原)の3000年前ならびに3500年前の遺跡から出土した古人骨のDNA分析をおこなった。その結果、(1) 3500年前から3000年前にかけても変化が起きていたこと、(2) 3500年前と現在の人類集団の遺伝的多様性には違いがみられないこと、が明らかになった。
著者
太田 博樹 勝村 啓史 植田 信太郎 須田 亙 水野 文月 熊谷 真彦
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【研究目的】先史時代の日本列島に住んでいた人々は2~3 千年ほど前に劇的な“食”の変化を経験した。すなわち狩猟採集が中心であった縄文時代から大規模農耕が始まった弥生時代にかけての食性の変化である。この変化が先史日本列島に与えた生物学的インパクトは大きかったと予想される。本研究では先史時代遺跡で見つかる糞石や歯石のメタゲノム解析をおこない、“食”の対象となっていた動植物の特定を実現する。【実施した計画の概要】長崎大学医歯(薬)学総合研究科・弦本敏行教授(連携研究者)が管理する弥生時代遺跡出土人骨から採取を行った歯石から、琉球大学・澤藤りかい(研究協力者)がDNA抽出を行った。また、福井県立若狭歴史博物館・主任(文化財調査員)鯵本眞友美(研究協力者)、若狭三方縄文博物館・小島秀彰主査、および茨城県・ひたちなか市埋蔵文化センター・稲田健一主査(研究協力者)が管理する縄文時代遺跡出土の糞石から、北里大学・若林賢(研究協力者)がDNA抽出を行った。それぞれの遺跡から10検体、1検体、1検体の合計12検体からDNA抽出をおこない、うち9試料から検出限界以上のDNA濃度が検出された。葉緑体DNAプライマーをもちいて、2検体3試料でPCR増幅が確認でき、これらについてPCRアンプリコンシークエンスをおこない植物性食物の解析をおこなった。吹上貝塚遺跡出土糞石からはヒトが食する植物のDNAがヒットした。一方、鳥浜貝塚遺跡出土糞石からは環境DNAと思われるDNAがヒットした。また、前者からはヒトのDNAだけでなくイヌのDNAも検出された。このことから、この糞石がヒトのものかイヌのものか、区別を付ける必要が生じ、現在、さらなる分析をし、検討中である。
著者
長谷川 政美 堀 寛 岡田 典弘 宝来 聰 五條堀 孝 宮田 隆 植田 信太郎
出版者
統計数理研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

ミトコンドリアを持たない真核生物について、蛋白質をコードしているいくつかの遺伝子の系統学的な解析を行い、真核生物の初期進化に関して新たな知見を得た(長谷川)。進化の過程で遺伝子の多様化がどのように進んだかという問題を明らかにするために、多数の遺伝子族の分子進化学的解析を行った。その結果、遺伝子重複による遺伝子の多様化は、真核生物の進化の過程で徐々に起きたのではなく、断続的かつ急速に起きたことが明らかになった(宮田)。HIVの遺伝子を分子進化的に解析し、その進化速度が異常に高いことを明らかにし、このウイルスの感染者体内における進化のメカニズムに関してもいくつかの知見を得た(五條堀)。3人の現代人と4種の類人猿で、ミトコンドリアDNAの全塩基配列を調べた結果、現代人の共通祖先の年代は約14万年前と推定され、「アフリカ単一起源説」が強く支持された(宝来)。独自に開発したSINEによる系統樹推定法を用いて、クジラの起源の解明とタンガニイカ湖のカワスズメ科魚類の系統関係の決定を行った。クジラの起源に関しては、クジラ目と反芻亜目とカバが単系統をなすことを明らかにした(岡田)。その他、動物体色の発現機構の進化(堀)、細胞内共生細菌の進化(石川)、脳で特異的に発現している転写因子class III POUの分子進化(植田)、無脊椎動物の生体防御系の進化(石和)、などについても成果を挙げた。
著者
杉山 三郎 佐藤 悦夫 植田 信太郎 谷口 智子 渡部 森哉 伊藤 信幸 嘉幡 茂
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

本研究は新大陸の古代都市の成立とその変容・盛衰の諸問題を、斬新な技術や方法論を用いながら学際的視点から考察することを目的とする3年計画のプロジェクトである。最初の2年間は古代モニュメントと表象に関する資料を収集し、考古学、歴史学、民族史学、宗教学、人類学また生物化学的視点を織り交ぜ、コンピューター解析、空間分析、統計処理を行った。特にメキシコ政府研究所とテオティワカン「太陽のピラミッド」の発掘調査を行い、貴重な都市形成期の資料を得た。
著者
杉山 三郎 佐藤 悦夫 植田 信太郎 奥田 隆史
出版者
愛知県立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

我々は平成16年度まで「月のピラミッド」を集中発掘し、内部に7時期のピラミッド基壇と5基の埋葬墓を発見した。ピラミッドの隣接区域からは住居址、黒曜石工房跡、5時期の中規模モニュメント遺構を確認した。本研究では、7年間のフィールドワークにより得られた膨大な発掘資料の整理と報告書の作成、また出土した遺物の分析・解釈・出版準備、そして副葬品の完形遺物のデーターバンクの作成を行なった。現在成果の出版準備中である。英語版はニューメキシコ大学出版社から、またスペイン語による詳細な発掘報告書はメキシコ政府の国立人類学歴史学研究所から出版する同意を得ている。さらに地上測量を基にしたテオティワカン中心部の三次元復元図作成のため、長期の現地作業を行なった。すでに「月の広場」から「城壁」まで「死者の大通り」に沿った建築群を2.5Kmにわたり、一部の住居群を除き、測量済みである。これにより、都市計画全体の空間配置も正確に把握可能となり、建築データはすでに様々な研究に使われ成果が出始めている。巨大化したモニュメントの資料は、国家形成と政治体制に関する直接的資料であり、政権の拡張と宗教的イデオロギーを反映する。また生贄体や戦士の副葬品、戦士の象徴であるジャガー、ピューマ、狼、鷲等の生贄動物体は、従来考えられていた平和的な神聖国家像と異なり、軍事的な覇権国家であったと示す。他に黒曜石製品、遠隔地からの貝製品、ガテマラのヒスイ製品などはテオティワカン国家の交易・政治的介入を暗示し、マヤ王朝と直接の関係を示す資料も出土した。一方でモニュメント周辺の諸活動に関する資料も得て、現テオティワカン国家像を大きく変える物的資料獲得と理論形成に貢献したと考える。