著者
中園 聡 平川 ひろみ
出版者
鹿児島国際大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究課題では遺跡の発掘調査を実施し,調査の細かな過程や遺物の出土状況等について徹底した3D計測するなど,実践を通じてこれまでにないレベルでの高密度記録に挑む。実例をもって,その実現と展開の可能性を広く示し,調査時から始まる情報の陳腐化という難問への対処や再現可能性,データの利用可能性等を追求する。また,取得データを活用した研究上・教育普及上の活用例の一端も示す。
著者
古賀 郁乃 渡 裕一 中園 聡子 野添 清香 井黒 誠子 松下 兼一
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.172, 2005

【はじめに】回復期リハ病棟では、ADLの改善を目指し様々な取り組みを行っているが、歯磨きは片手動作ということもあり「出来るだろう」と思われがちで、他のADLに隠れ後回しになっている。介助に関してもさほど手間もかからないためか、過介助になっている。しかし、歯磨きは移動、姿勢保持、巧緻動作を含み、専門的知識による訓練、介入が必要だと言える。高齢者の生命・健康、QOLの維持・回復における口腔ケアの重要性が見直されてきた今、当院での歯磨きについても考える必要があるのではないか。そこで、患者の歯磨きの現状を把握し、アプローチを行うため「歯磨きチェック」を行ったところ、いくつかの問題点が抽出されたため、検討を行った。<BR>【対象】回復期リハ病棟の脳血管障害患者から無作為に抽出した男性10名、女性10名。平均年齢75.1±11.2歳。<BR>【方法】1.移動2.姿勢3.棚への出し入れ4.歯磨き粉をつける5.歯を磨く6.うがいをする7.口をふく8.道具を洗うの8項目についてそれぞれ4つの基準を設け、セラピストが実際の動作場面を観察し、いずれに該当するかチェックする。チェックは3週間ごとに3回実施。その他のADL、高次脳機能障害などの調査も行う。チェックの結果をもとに、アプローチ方法を検討し、カードへ記入。それを車椅子にかけ、歯磨きを行う際の参考とした。必要に応じて、アプローチの更新を行った。<BR>【結果】「歯を磨く」「口を拭く」「うがいをする」に比べ、「歯磨き粉をつける」「道具を洗う」は動作が複雑になるため介助量が増えている。業務円滑化のための介助量増加がみられる。環境設定と患者の主体的・自主的行動の優先化により、特に「歯を磨く」項目は他項目より改善が見られた。セラピストによる歯ブラシ操作に対するアプローチが的確に行えなかった。カードの活用が少なく、統一見解が不十分ではあったが、患者の現状の能力を把握することは可能であった。<BR>【考察・まとめ】病棟ADL訓練として歯磨きに直接的にアプローチしていることが少ないという現状から、今回のチェックを行った。セラピスト、病棟スタッフともに歯磨きに対する意識の低さ、知識の無さが浮き彫りになった。その理由として、動作労力としての歯磨きと医学、社会的側面から考えた歯磨きとのギャップが存在することが挙げられる。<BR>今後引き続き調査し、セラピストの視点での正確な動作分析・高次脳機能障害の分析、それらに対する介入方法の指標を示す必要があると考える。また業務整理を行い、リンクさせた形で効率的に関わっていくために、アプローチすべき患者の抽出方法の導入や外部委託の歯科医・歯科衛生士とも協力し知識の向上を図る必要がある。そして何より、ADLの定義を明確にし患者を生活者と捉え、QOL拡大を視野に入れ関わりをもつことの大切さを全スタッフ共通認識として捉えていかなければならない。
著者
松本 直子 桑原 牧子 工藤 雄一郎 佐藤 悦夫 石村 智 中園 聡 上野 祥史 松本 雄一
出版者
岡山大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2019-06-28

ヒトが生み出す物質文化には、身体機能の拡張を果たす技術と、感性や価値観にうったえてヒトの心を動かす芸術という二つの側面がある。本計画研究では、「アート」として包括されるその両面が身体を介して統合される様相に焦点を当て、日本列島、メソアメリカ、アンデス、オセアニアにおけるアートの生成と変容の特性を比較検討する。アート(技術・芸術)によるヒトの人工化/環境のヒト化という現象を、考古学的・人類学的・心理学的に分析することにより、社会固有のリアリティ(行動の基準となる主観的事実)が形成される歴史的プロセスを解明し、新たな人間観・文化観を提示することを目的とする。
著者
西谷 正 甲元 眞之 山本 輝雄 中橋 孝博 田中 良之 宮本 一夫 中園 聡
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1994

平成8年度は、本研究3個年計画の最終年度に当たるので、過去2年間にわたって実施した調査成果を総合的にまとめ上げることを主眼とする研究を実施した。そのため、収集した膨大な調査資料を改めて整理、分析するとともに、研究成果報告書の原稿を執筆した。その間、支石墓研究会も開催し、第15回をもって最終回とした。その際、中国の遼東半島や朝鮮の西南海岸部・済州島の支石墓について補足し、また、日本の出土遺物として重要な供献小壺についても研究の現状を把握した。その結果を要約すると、支石墓は中国の東北地方から朝鮮の全地域において、主として青銅器時代に築造された。中国では、いわゆる石蓋土壙墓が支石墓を考える上で重要である。おそらく中国で成立した卓子形の支石墓は、朝鮮の西北部にまず伝播した後、変容を遂げながら南部地方へと波及し、碁盤形支石墓を生んだ。朝鮮の全域で独特に発達した支石墓は、いうまでもなく、もともと巨大な上石とそれを支える支石からなることに特徴があるところから名づけられた墳墓である。ところが、最近の調査例のように、実に多種多量の形式が見られるようになってくると、形式分類もひじょうに複雑なものとならざるをえない。それでもなお、共通点として指摘できるのは、巨大な上石を使用していることであるのに対して、支石をもたないものもけっして少なくないのである。そこで、巨大な上石の下にある墓室の構造を基準として形式分類を試みた。日本の支石墓は、縄文時代終末期から弥生時代中期にかけて、北部九州を代表する墓制の一つである。上石の下部に埋葬施設としての土壙・甕棺・配石などがある。古くは、土壙の場合が多いが、新しくなると甕棺が多くみられる。甕棺を埋葬施設とする点は、日本独自の特徴である。支石墓の存在形態を見ると、大規模な群集を示さず、数基ないし十数基からなる。
著者
中園 聡
出版者
一般社団法人 日本考古学協会
雑誌
日本考古学 (ISSN:13408488)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.87-101, 1994-11-01 (Released:2009-02-16)
参考文献数
36

縄文文化から弥生文化への社会・文化の変化については,在来の「縄文人」による内的な変化と考えるのか,それとも「渡来人」の関与を積極的に評価するのか,という「主体性論議」がしばしば取り上げられている。しかしながら,変化の局面においていかにあったのかという状況の把握がまずは的確に行われるべきで,そこから高次の解釈へ向かう理論的・方法論的枠組みを確立することが目下の急務である。そこで,まず集団と物質文化の関係が問題になるが,重視すべきは,従来の考古学的痕跡自体を擬人化するような,行為者が不在あるいは希薄な議論から抜け出ることである。本論は,九州西北部における弥生時代成立期の壺形土器を対象として,製作者と製品の間の関係についていかにあったかという問に対する,より満足のいく答を得る方向性を見いだそうとするものである。属性分析・多変量解析による型式分類と編年をしたうえで,地域的変異の抽出を行なう。小型壺において,より朝鮮半島と類似した玄界灘沿岸(エリアI)とそれをとりまく地域(エリアII)が認識された。また,縄文時代晩期以来の「形態パターン」と「形態生成構造」を抽出し,それに着目することによって,大型壺の生成にあたって伝統的な形態生成構造が変容しつつも存続していたことが指摘できる。さらに,ハビトゥス,モーターハビットなど,土器を製作し情報を伝達・受容した個人の認知構造と行為に関する概念的整備を行った。九州の小型壺は朝鮮半島のものと比べて頸部の研磨方向に差異がある。これは晩期以来の精製器種の研磨方向に一致しており,既存のモーターハビットによって行われたものとみられる。そこで,九州での壺の製作者の大半は,伝統的な縄文土器製作技術に連なる技術を習得していた者達であったということがいえる。先行する土器の変化も検討したが,晩期前半から玄界灘沿岸を中心にして徐々に変化が始まっており,それらは必ずしも渡来人の関与を考える必要はない性格のものであった。壺形土器の分析から,弥生文化への変化の主な担い手が「縄文人」とされる人々であったということが示された。弥生文化の形成は,朝鮮半島の文化に対する強い志向性の形成も含めて,「縄文人」が過去の経験の統合体である自らの認知構造に根ざした対応の結果であるととらえることができる。