著者
佐藤 慎哉 嘉山 孝正
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.443-451, 2013 (Released:2013-06-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2

低髄液圧症候群は, 脳脊髄液の漏出により頭痛等を引き起こす疾患で, 70年以上も前にその疾患概念が提唱された. その後, その中に低髄液圧でない症例が存在するとの理由で脳脊髄液減少症の名称が提唱されたが, 臨床像に異なる点も多く, 疾病の定義が混乱している. さらに本症と交通外傷の因果関係が社会問題化している. このような状況のもと, 平成19年度から厚生労働科学研究費補助金を受けて「脳脊髄液減少症の診断・治療法の確立に関する研究」が行われ, 平成23年10月に脳脊髄液漏出症を対象にした画像判定および診断基準が公表された. 今回は, なぜ対象が脳脊髄液減少症ではなく脳脊髄液漏出症なのかも含め, 公表した基準について概説する.
著者
佐藤 慎哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ホルモン治療に抵抗性の前立腺癌に対する治療法は限られており、新たな治療法が求められている。私達は、DNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを変えるエピゲノム機構を利用したホルモン治療抵抗性前立腺癌の増殖抑制を目指した。エピゲノム機構を制御するHDAC阻害剤(OBP-801)をホルモン治療抵抗性前立腺癌細胞に投与したところ、増殖抑制が確認された。さらにOBP-801は同じくエピゲノム機構を制御するマイクロRNA(miR-320a)の発現上昇を介して、前立腺癌の増殖に重要なアンドロゲン受容体の発現を抑制した。以上より、HDAC阻害剤はホルモン治療抵抗性前立腺癌に対する有望な治療薬と考える。
著者
伊藤 嘉高 佐藤 慎哉 山下 英俊 嘉山 孝正 村上 正泰
出版者
山形大学
雑誌
山形大学紀要. 医学 : 山形医学 (ISSN:0288030X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.15-25, 2013-08-15

【背景】医療提供に真に必要な医師数を推計することは困難である。厚生労働省「医師の需給に関する検討会」の医師需給推計を背景に医学部入学定員抑制が進められた結果、今日、国民のあいだで広く医師不足の事態が認められている。さらに、これまで、地域ごとの将来医療需要に基づく診療科別の必要医師数の推計が試みられたことはない。そこで、本稿では、現在のフリーアクセス等の医療提供体制を前提として、今後も医学部入学定員増加が続き、勤務医の負担軽減が図られた場合の山形県における診療科別将来必要病院勤務医数を推計した。【方法】患者調査と人口推計に基づく診療科別の将来医療需要を算出するとともに、医師・歯科医師・薬剤師調査のデータに基づく医師就業の卒後1年階級別コホートモデルを作成した。そして、県内病院勤務医の過重労働の是正を加味したうえで、両結果に基づき2030年に必要医師数を充足させるために必要な新卒医師数を推計した。【結果】2030年の県内病院勤務医は全体で3,048名(2008年比122.0%)となる。他方で患者数は減少し、将来医療需要に基づき過重労働状況の解消を図ると、全体で4.0%(73人分)の医師数の余裕が生まれることになる。しかし、全ての診療科で余裕が生まれるわけではない。現在見られる新卒医師の診療科選択の傾向が今後も続いた場合、とりわけ外科は23.7%の更なる新卒医師数の上乗せが必要であり、脳神経外科など他の外科系も10%前後の上乗せが必要になる。他方で、新卒医師の半数以上が余剰になるおそれのある診療科も見られる。【論】本推計は、医療提供体制のみならず、医師の就業動態など多くの仮定に基づいており、推計の精度には改善の余地がある。しかし、それでも、現在の医療提供体制が続く限り、外科系等の診療科は今後も相対的な医師不足が続くことが推測される。医学部教育や医療提供体制の見直し、病院勤務医の勤務環境の改善等について適切な対応が求められる。
著者
山木 哲 近藤 礼 長畑 守雄 伊藤 美以子 齋藤 伸二郎 佐藤 慎哉 嘉山 孝正
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.11, pp.885-889, 2012 (Released:2012-11-22)
参考文献数
12

総頚動脈閉塞症 (CCAO) に対し頚部頚動脈内膜剥離術 (CEA) を行うことはまれであるが, 今回, 大動脈炎症候群に合併したCCAOに対しCEAを施行し良好な結果を得ることができた1例を経験したので報告する. 症例は58歳女性で一過性脳虚血発作にて発症した. 大動脈炎症候群によるCCAOを認めたが, 神経放射線学的検討にて術前に閉塞部分はごく限局していることが診断しえたためCEAによる血行再建を行った. 本例のごとく閉塞が限局しその近位部および遠位部の開存が術前に確認できる場合には順行性の血行再建が行えるCEAは有効な方法である.