- 著者
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佐藤 晋爾
朝田 隆
- 出版者
- 医学書院
- 雑誌
- 精神医学 (ISSN:04881281)
- 巻号頁・発行日
- vol.55, no.6, pp.571-574, 2013-06-15
はじめに
激越型うつ病とは,非常に強い不安と落ち着きのなさを示すうつ状態であり,うつ病の主な特徴である抑制性を部分的に認めない病態をいう。典型的な病像は7,8,9,14),一時も落ち着かずそわそわとし,椅子に座ったり立ったりし部屋の中をうろうろと歩き回り,あるいは逆に「体が動かない」と唐突に横になろうとする。一方,体のどこか,特に両手をもぞもぞと動かし,髪の毛や服などをずっといじっている。嘆息しながら苦悶様の表情で強い絶望感,不安感注1),悲哀感,罪業感,心気的訴えなどを繰り返し,話の内容も常同的といってよい状態となる。なかには訴えの内容が妄想的になり,精神病性うつ病へと診断が移行する場合もある。苦悩感が強い上に衝動的(激越発作;raptus melancholicus)13)になることがあり,臨床的には自殺企図が危惧される状態である9,14)。激越型うつ病は女性,高齢者に比較的多くみられ,いわゆる退行期うつ病(Involutionsdepression)との重複が論じられることもある4,7,14)。