著者
森上 誠 行定 健治 田島 賢一 佐藤 暢昭 杉崎 順平 宇野 滋 山田 敏元
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.517-524, 2010
参考文献数
9
被引用文献数
1

多岐にわたる各種の歯科処置が歯科医師の治療時間のなかでどの程度の割合を占めているのかについて,3ヵ月間にわたる調査を虎の門病院歯科において行った.通常行われる歯科処置について,初診診査,歯周処置,歯内処置,レジン修復,インレー修復,脱離修復物・補綴物の再装着,クラウン補綴,ブリッジ補綴,義歯補綴,インプラント処置,口腔外科処置,顎関節症処置,漂白,その他の14カテゴリーに分類し,さらにこれらを全50項目に細分化した.11名の歯科医師が診療を行いながら,その処置時間をストップウォッチで計測した(単位:分).調査期間終了後,各種の歯科処置に要した時間および患者数を集計し,これに基づき処置内容別の患者1人当たりの平均処置時間を算出した.また,平均処置時間とそれぞれに対応する保険診療報酬との関係を処置内容別に比較・検討するために,保険点数を平均処置時間で除した値(Point/Time ratio,以下,P/T ratio)を算出した.カテゴリー別の処置時間は,歯周処置が29,556分(28.7%),歯内処置が9,274分(9.0%),レジンおよびインレー修復処置が16,083分(15.6%)であり,歯科保存学領域の処置は全体の53.3%を占めた.処置内容別では,スケーリングが21,677分で全体の21.0%を占め,すべての処置内容のなかで最も多くの処置時間を占めることが明らかとなった.次いでレジン修復の13,019分(12.6%),初診診査の9,312分(9.0%),歯周疾患処置の4,276分(4.1%),義歯調整の3,938分(3.8%),クラウン失活歯支台歯形成+印象採得+咬合採得の3,930分(3.8%),根管貼薬の3,725分(3.6%)という順になった.また,すべての歯科処置のなかでP/T ratioの高い処置は,硬質レジン前装ブリッジ装着(218.8),総義歯装着(171.6),床副子(ナイトガード)装着(170.1)であり,P/T ratioの低い処置は,クラウンメタルコア高洞形成+印象採得(1.3),ブリッジメタルコア窩洞形成+印象採得(2支台歯:1.6),硬質レジン前装ブリッジ試適(1.8),根管貼薬(単根:1.9)であった.P/T ratioは,診療時間に対する歯科処置のコストパフォーマンスを考慮する際の指標になるものと思われた.
著者
二階堂 徹 江 芳美 佐藤 暢昭 高倉 ひな子 猪越 重久 高津 寿夫 細田 裕康
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.12, no.6, pp.655-661, 1993-11-25
被引用文献数
6

インレー修復においては, 窩洞の仮封時の歯髄保護が問題となる.すなわち仮封材による封鎖性が悪いと細菌侵入を招き, 歯髄に為害作用を起こす可能性があるからである.ライナーボンドシステム(クラレ)は, ボンディング材と低粘性レジンであるプロテクトライナーによって象牙質表面に強固な被膜を形成させるユニークな材料である.このボンディングシステムを利用して窩洞形成直後に形成面をシールすれば, 印象採得や仮封中の機械的, 熱的, 細菌学的な刺激から歯髄を保護することが可能である.本研究では, 5種類の仮封材が, レジンセメントとプロテクトライナーとの接着に及ぼす影響について検討した.その結果, 水硬性材料であるCavit-G(ESPE)は, レジンセメントのプロテクトライナーに対する接着強さを有意に向上させた.またユージノール系, 非ユージノール系材料では, 接着に悪影響を及ぼさなかった.しかし, レジン系仮封材では, 仮封材がライナー表面に強固に付着し, レジンセメントの接着力を低下させた.さらに仮封材と接触したプロテクトライナー表面は, 形態学的に様々な変化が観察され, 表面の硬さも低下していた.このことから, プロテクトライナーと仮封材との間になんらかの相互作用が生じていたことが示唆された.
著者
二階堂 徹 高田 恒彦 バロー マイケル 佐藤 暢昭 細田 裕康
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.11, no.6, pp.910-915, 1992-11-25
被引用文献数
19

コンポジットレジンインレー等に用いられる各種デュアルキュア型レジンセメントの歯質に対する初期接着強さについて検討した.エナメル質に対する初期接着強さは, ほぼ満足できる値であったが, 象牙質に対する接着強さは極めて低く, 改善する必要があった.そこで直接充〓用コンポジットレジンでその有効性が認められた前処理剤, プライマー, ボンディング剤等の併用について検討したところ, ボンディングシステムを併用することによって初期接着強さを改善できることが判明した.さらに窩洞形成後, ボンディングシステムによって窩洞をシールし, 接着を完了した上で印象採得し, レジンインレーを合着すると, さらに安定した高い接着性が得られることが示唆された.