著者
村田 幸枝 松田 康裕 田中 享 小松 久憲 佐野 英彦
出版者
特定非営利活動法人日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.799-807, 2007-12-31
参考文献数
25
被引用文献数
2

再石灰化効果をもつ数種類のガムが,特定保健用食品として認められている.本研究の目的は,特定保健用食品の指定を受けているガム3種(添加物としてFN-CP:フノリ抽出物と第二リン酸カルシウム,POs-Ca:リン酸化オリゴ糖カルシウムおよびCPP-ACP:カゼインホスホペプチド-非結晶性リン酸カルシウム複合体を配合)の再石灰化パターンを比較検討することである.ヒト健全第三大臼歯のエナメル質を0.01mol/l酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH 4.0)で50℃,2日間脱灰し,実験的に初期齲蝕を作製した.この脱灰エナメル質試料を,ガム群は再石灰化溶液を用いた各ガムの抽出液に,コントロール群は再石灰化溶液のみに,37℃,2週間浸漬し再石灰化処理を行った.再石灰化処理を行った試料から作製された研磨試料をTMR(transverse microradiography)撮影し,ミネラルプロファイルを作成した.その後,新たに開発されたプログラムを用いて9項目のパラメーターを算出し,再石灰化の促進効果について比較検討した.3種類のガムでΔΔZが有意に増加していたことから,すべてのガムで再石灰化を促進させる効果があることが認められた.FN-CPはΔLd,ΔLBd,ΔLB,ΔSZ,ΔOSZ,ΔSA,ΔILB,ΔΔZの8つのパラメーターで有意差を認め,初期齲蝕病変の深層を主体として病変全体の再石灰化を促進することが認められた.POs-CaではΔLB,ΔILB,ΔΔZの3つのパラメーターで有意差を認め,深層での再石灰化を促進することが認められた.CPP-ACPではΔLB,ΔSZ,ΔSA,ΔILB,ΔΔZの5つのパラメーターで有意差を認め,中間層と深層の再石灰化を促進することが認められた.以上のことからすべてのガムで再石灰化を促進する効果があるが,その再石灰化パターンには違いがあることが明らかとなった.さらに,FN-CPが初期齲蝕の再石灰化に最も有用であることが示唆された.
著者
五十嵐 豊 付 佳楽 角田 晋一 田中 享 中沖 靖子 佐野 英彦
出版者
北海道歯学会
雑誌
北海道歯学雑誌 (ISSN:09147063)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.177-192, 2012-03

本研究は,4-META/MMA-TBBレジンのプラチナナノコロイド(CPN)処理をした象牙質に対するサーマルサイクリング(TC)試験前後での接着強さについて検討することを目的とした.0.5% クロラミンT水溶液に保存されていた18本の健全ヒト抜去智歯を歯冠中央部で切断し,健全な象牙質を露出させた後,#600の耐水研磨紙を用いて研磨したものを被着面とした.Control群として被着面を10% クエン酸3% 塩化第二鉄溶液(10-3溶液)でエッチングした.また,10% CPN群,100% CPN群として,被着面を10-3溶液でエッチングし,10%または100%のプラチナナノコロイド(アプト,東京)を塗布した.その後,全ての象牙質被着面にスーパーボンド(サンメディカル,滋賀)を用いてPMMAブロックを接着させた.試料は全て1日水中浸漬後に1mm2の棒状にした.さらに,これらを5℃および55℃の水中に各60秒間浸漬を1サイクルとするTC試験0回群,10,000回群,および20,000回群に分けて行った.TC後の試料は,クロスヘッドスピード1mm/minにて微小引っ張り接着強さを測定した.微小引張り接着強さの測定によって得られた測定値については,Games-Howell検定を用いて有意水準5%にて統計処理を行った.レジンと象牙質の接着界面はSEMとTEMを用いて観察した.Control群の微小引っ張り強さ(μTBS)は29.3MPa(TC 0回),36.6MPa(TC 10,000回),32.8MPa(TC 20,000回)であった.10% CPN群のμTBSは30.4MPa(TC 0回),40.3MPa(TC 10,000回),32.1MPa(TC 20,000回)であった.100% CPN群のμTBSは24.2MPa(TC 0回),12.0MPa(TC 10,000回),10.7MPa(TC 20,000回)であった.Control群と10% CPN群はTC試験前後で接着強さに有意差は認められなかった.100% CPN群の接着強さはTC試験後に有意に低下した.接着界面のSEM観察において100% CPN群ではTC試験後にControl群と10% CPN群と比べて短いレジンタグが観察された.接着界面のTEM観察では10% CPN群,および100% CPN群において,樹脂含浸層の上縁に細かい粒子状構造物の存在が認められた.プラチナナノコロイド表面処理した象牙質接着強さには濃度が影響していると考えられた.
著者
中沖 靖子 佐野 英彦 野田 守
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

カリエス治療に汎用されるレジン系充填材料は、健全歯質の保存という観点からその長期耐久性も重要と考えられる。申請者らは、この長期耐久性を阻害する接着界面のバイオデグラデーションの本態を解明するため、抗酸化剤の機能を有するプラチナナノコロイドを用い、劣化をとどめる方策を考えた。それに際し、接着界面の分子レベルでの超微細構造の情報を得るため、非常に高分解能であるが生体、特に軟組織観察に不向きとされてきた超高圧電子顕微鏡を、生体観察に応用する手技を確立した。