著者
宇野 滋 阿保 備子 山田 敏元
出版者
一般社団法人 日本接着歯学会
雑誌
接着歯学 (ISSN:09131655)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.83-88, 2015 (Released:2022-04-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1

保険適用になった小臼歯CAD/CAM 冠用6 種レジンブロックの特徴を比較検討するために,ブロックの構造を SEM 観察した. CAD/CAM 冠用レジンブロックとして,Cerasmart(ジーシー),Shofu BLOCK HC(松風),LAVA Ultimate (3M ESPE),VITA Enamic(VITA Zahnfabrik),KZR-CAD HR(山本貴金属)およびKatana Avencia(クラレノ リタケデンタル)を用いた.レジンブロックを厚さ約2 mm に切り出し,エポキシレジンに包埋後鏡面研磨した.研 磨面にアルゴンイオンエッチングを施し,白金蒸着した後,SEM 観察を行った. 各ブロックともフィラー形状や大きさが異なり,多種多様な構造を呈していた.特に,VITA Enamic はセラミッ クスに近い構造を示し,またKatana Avencia ではナノサイズの微粒子フィラーが密に圧縮されていた.配合される フィラーの成分・形状,そして重合体の構造の違いは,強度,硬さ,弾性あるいは耐摩耗性など機械的諸性質に影響 を与える.また,支台歯への接着性はフィラーの成分やレジンブロックの構造によって左右されると思われる.した がって,CAD/CAM 冠の臨床的パフォーマンスには差が生じるものと危惧される.
著者
森上 誠 行定 健治 田島 賢一 佐藤 暢昭 杉崎 順平 宇野 滋 山田 敏元
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.517-524, 2010
参考文献数
9
被引用文献数
1

多岐にわたる各種の歯科処置が歯科医師の治療時間のなかでどの程度の割合を占めているのかについて,3ヵ月間にわたる調査を虎の門病院歯科において行った.通常行われる歯科処置について,初診診査,歯周処置,歯内処置,レジン修復,インレー修復,脱離修復物・補綴物の再装着,クラウン補綴,ブリッジ補綴,義歯補綴,インプラント処置,口腔外科処置,顎関節症処置,漂白,その他の14カテゴリーに分類し,さらにこれらを全50項目に細分化した.11名の歯科医師が診療を行いながら,その処置時間をストップウォッチで計測した(単位:分).調査期間終了後,各種の歯科処置に要した時間および患者数を集計し,これに基づき処置内容別の患者1人当たりの平均処置時間を算出した.また,平均処置時間とそれぞれに対応する保険診療報酬との関係を処置内容別に比較・検討するために,保険点数を平均処置時間で除した値(Point/Time ratio,以下,P/T ratio)を算出した.カテゴリー別の処置時間は,歯周処置が29,556分(28.7%),歯内処置が9,274分(9.0%),レジンおよびインレー修復処置が16,083分(15.6%)であり,歯科保存学領域の処置は全体の53.3%を占めた.処置内容別では,スケーリングが21,677分で全体の21.0%を占め,すべての処置内容のなかで最も多くの処置時間を占めることが明らかとなった.次いでレジン修復の13,019分(12.6%),初診診査の9,312分(9.0%),歯周疾患処置の4,276分(4.1%),義歯調整の3,938分(3.8%),クラウン失活歯支台歯形成+印象採得+咬合採得の3,930分(3.8%),根管貼薬の3,725分(3.6%)という順になった.また,すべての歯科処置のなかでP/T ratioの高い処置は,硬質レジン前装ブリッジ装着(218.8),総義歯装着(171.6),床副子(ナイトガード)装着(170.1)であり,P/T ratioの低い処置は,クラウンメタルコア高洞形成+印象採得(1.3),ブリッジメタルコア窩洞形成+印象採得(2支台歯:1.6),硬質レジン前装ブリッジ試適(1.8),根管貼薬(単根:1.9)であった.P/T ratioは,診療時間に対する歯科処置のコストパフォーマンスを考慮する際の指標になるものと思われた.
著者
山田 敏元 大桃 スワニ・マスミ ペレイラ パトリシア 猪越 重久 田上 順次
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械. Special issue, 日本歯科理工学会学術講演会講演集 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.15, no.27, pp.170-171, 1996-03-28

リン酸を歯面処理剤として用いるレジンボンディングシステムとセルフエッチングプライマーを歯面処理剤として用いるレジンボンディングシステムのエナメル質-レジンの接合界面のSEM観察を詳細に行ったところ、リン酸を用いるものでは、エナメル質の脱灰が大きく、表層下約20μmに亘ってエナメル小柱中のハイドロキシアパタイト結晶が著しく溶解され、疎な構造を示していた。一方、セルフエッチングプライマーを用いたものでは、エナメル質の脱灰の程度は弱く、アパタイト結晶の溶解も低かった。