著者
佐野 弘好
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.6, pp.449-467, 2018-06-15 (Released:2018-08-18)
参考文献数
48
被引用文献数
2

美濃帯西部,舟伏山岩体東部のチャート優勢層の岩相層序と放散虫化石年代を検討した.チャート優勢層(全層厚約550m)は下部から玄武岩質岩,赤色チャート(中~上部シスウラリアン),砕屑性ドロマイト,灰~黒色チャート(下部グアダルピアン~最上部ローピンジアン),黒色粘土岩,暗灰~黒色チャート(下部三畳系上部~中部三畳系上部),珪質ミクライト・チャート互層(上部三畳系下部~中部)の順に重なる層序をもつ. チャート優勢層は大洋域の玄武岩質海山下部斜面~周囲の大洋底に堆積した遠洋性・深海堆積物である.砕屑性ドロマイトは浅海域からの再堆積物である.チャート優勢層の中部シスウラリアン~下部三畳系上部は舟伏山岩体西部の初鹿谷層に対比できる.中部三畳系チャートと上部三畳系珪質ミクライト・チャート互層を加えて,中部シスウラリアン~上部三畳系中部初鹿谷層として改訂することを提案した.
著者
平野 弘道 佐野 弘好
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1977, no.106, pp.100-105, 1977

熊本県八代郡東陽村美生からは, かって赤津健によりアンモナイト3個が採集され, 松本達郎により当地域に中部ジュラ系の存在することが示唆されていた。最近, 佐野は当該地域の調査を行い, 問題とされていた地層の分布範囲と層序を明らかにした。また新たにベレムナイト1個が得られた。これの化石はいずれも断片的ではあるが, 検討の結果アンモナイトの1個はCadomites sp., 他の1個はPlanisphinctes? sp.と鑑定された。ベレムナイトはジェレツキー博士の鑑定によりParahastites ? sp.といえる。以上の三者の共通の生存期間は中期ジュラ紀であり, 調査された地層の主部は中部ジュラ系を含むと考えられる。得られた化石の保存はよくないが, 化石産出層の岩相及び構造上の位置をあわせ考えると地史考察上貴重な資料となるので, 図示し記載した。
著者
桑原 希世子 加藤 泰浩 佐野 弘好
出版者
芦屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

古生代末の大量絶滅に至るグローバルな海洋環境変動を解明するために,パンサラッサ遠洋域に堆積した最上部ペルム系層状チャートに含まれる放散虫サイズと,チャートの化学組成や岩相との関係を検討した.放散虫アルバイレラのサイズの変動と直接同期するような,チャートの化学組成の変動は現時点では見いだせなかった.しかし,化石群集帯ネオアルバイレラ・オプティマ帯,および化石帯を代表するアルバイレラ・トリアンギュラリスの生存期間は,海洋の酸化還元状態と呼応関係にあることが明らかになった.
著者
尾上 哲治 永井 勝也 上島 彩 妹尾 護 佐野 弘好
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.4, pp.222-236, 2004-04-15
被引用文献数
5 22

九州・四国のジュラ紀新世〜白亜紀古世付加体である三宝山付加コンプレックスから産出する玄武岩の産状・岩相及び岩石学的特徴を記載し,化学組成(主成分元素,微量元素)を検討した.玄武岩類は,主に泥質岩および玄武岩質火山砕屑岩基質中に岩塊として産出し,interpillow limestoneを伴う枕状溶岩と塊状溶岩,玄武岩角礫岩,ハイアロクラスタイトから構成される.玄武岩の産状からは陸源砕屑物の堆積場で噴出した証拠は認められない.変質による移動が少ないと考えられている元素(Ti,Zr,Nb,Y)を用いた地球化学的判別図では,多くの玄武岩がTi,Nbに富む海洋島玄武岩(OIB)に類似する.したがって,三宝山付加コンプレックスの玄武岩は,太洋域でのプレート内火成活動によって形成された海山に起源を持つと考えられる.