著者
野崎 達生 藤永 公一郎 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.995-1020, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
147
被引用文献数
5 5

日本列島は主に過去4億年以降の付加体から構成されており,付加体中には古海洋底で生成した様々な鉱床が胚胎している.本論文では,別子型硫化物鉱床,層状鉄マンガン・マンガン鉱床に関する成因論の進展と未解明の課題をレビューする.三波川帯に分布する別子型鉱床は遠洋域の中央海嶺で生成し,ジュラ紀後期海洋無酸素事変によって保存された.現地性緑色岩を伴う四万十帯北帯の別子型鉱床は,白亜紀後期の海嶺沈み込み現象に付随して生成した.他のメランジュ中に胚胎する別子型鉱床については未解明の点が多い.層状鉄マンガン鉱床は,中央海嶺近傍の熱水性堆積物を起源とし,緑色岩を伴う層状マンガン鉱床は海山近傍の熱水性堆積物に由来する.チャート中に胚胎し緑色岩を伴わない層状マンガン鉱床は,貧酸素・高マンガンの深層水に高酸素・貧シリカの表層水流入によって形成したと考えられるが,マンガンの究極的な起源についてはいまだ不明である.
著者
野崎 達生 加藤 泰浩 鈴木 勝彦
出版者
日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.279-305, 2014-12-25 (Released:2015-01-06)
参考文献数
132
被引用文献数
1

Along with the progresses in analytical procedure and mass spectrometry, the number of papers using a Re–Os isotope system has rapidly increased, although Re and Os are trace elements whose typical concentrations in geological materials are ppt~ppb levels. Rhenium has two isotopes and 187Re is a radio isotope which generates 187Os through β- decay in the half-life of 41.6 Gyr. Since both Re and Os are highly siderophile and chalcophile elements, they are concentrated into sulfide minerals. Besides the 187Re–187Os decay system, Re is more incompatible than Os during a magma differentiation process, producing a large variety of the 187Re/188Os and 187Os/188Os ratios among various reservoirs on the Earth. The seawater 187Os/188Os ratio is mainly controlled by riverine flux having a high 187Os/188Os ratio (~1.4) and hydrothermal fluid/cosmic dust fluxes with low values (0.12~0.13). Thus, the Re–Os isotope system is a powerful tool for (1) geochronology of sulfide deposit, black shale and petroleum deposit using an isochron method, (2) geochronology of ferromanganese crust whose sedimentary age can be determined by fitting their 187Os/188Os ratios with the secular variation curve of the marine Os-isotope ratio, (3) decoding the trigger and processes of global climate change and impact event, and (4) unraveling the magma source and formation processes of volcanic rocks. Here, we review the recent geochemical study using the Re–Os isotope system and especially focus on a geochronology of the sulfide deposit.
著者
安川 和孝 中村 謙太郎 藤永 公一郎 岩森 光 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.171-210, 2018-12-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
130
被引用文献数
2

Since the discovery of rare-earth elements and yttrium (REY)-rich mud in the Pacific Ocean, a variety of research has been conducted to understand its spatial distribution and genesis. In this paper, we review the latest research outcomes on REY-rich mud, including the discovery of “extremely REY-rich mud” containing >5,000 ppm of total REY, a promising deep-sea mineral resource in Japan’s exclusive economic zone surrounding Minamitorishima Island. Then, we introduce a new statistical approach based on independent component analysis (ICA) to clarify the origin of REY-rich mud in the Pacific and Indian oceans, with a theoretical background and a protocol of ICA application on geochemical data. Independent components extracted from a multi-elemental dataset of ~4,000 samples demonstrate distinctive geochemical features, and their spatiotemporal distributions indicate that the sedimentation rate is an underlying key factor for REY-enrichment. We also refer to an important link between the genesis of REY-rich mud and Earth system dynamics. Finally, we focus on some challenges to be overcome. One of the most significant questions concerns the formation mechanism of the extremely REY-rich mud. An important key to this question is the depositional age of the extraordinary sediment layer.
著者
高谷 雄太郎 中村 謙太郎 加藤 泰浩
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.57, pp.15-15, 2010

CO2帯水層貯留の貯留サイトとして,地中の玄武岩層に注目が集まっている.玄武岩は反応性が高く,またCaやMg,Feといった,炭酸塩鉱物を形成しやすいアルカリ土類元素に富んだ組成を持つことから,CO2貯留の長期安全性を規定する地化学トラッピングが速やかに進行すると期待されるためだ.本研究では,玄武岩層内におけるCO2地化学トラッピングの進行速度やその特性を明らかにするため,貯留層を模した実験条件下でCO2‐水‐岩石反応を実施した.発表では,得られた実験データをもとに長期的な炭酸塩鉱物の形成モデルを提示し,さらにCO2の固定効率の推定を行う.
著者
加藤 泰浩 岩森 光 安川 和孝 藤永 公一郎 町田 嗣樹 大田 隼一郎 野崎 達生 高谷 雄太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

本研究は、海洋底の大部分を占める遠洋性粘土をキーマテリアルとして捉え、「化学層序プローブ」を用いて網羅的に解析することで、グローバル環境変動・物質循環のダイナミクスの全容を定量的に解明する研究である。また、有用元素の循環を定量的に議論することで、資源成因の支配プロセスの全体像を解明する。そして、環境変動や資源生成を統一的な枠組みで説明可能な,真に革新的なグローバル物質循環についての統合理論の創成を目指す。
著者
金田 博彰 正路 徹也 高木 秀雄 小林 祥一 加藤 泰浩
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

中国の地質区は、ほぼ東西の境界線で北より、シベリアプレート(Siberia Plate)、タリム〜北中国プレート(Tarim-North China Plate)、中央オロジェニックベルト(Central Orogenic Belt)、南中国プレート(South China Plate)、チベット〜雲南プレート(Tibet-Yunnan Plate)、インドプレート(Indian Plate)に分けることができる。現在、日本を始め世界の先進国においては新たな資源の発見・開発はほとんど無いといってよい。特に、日本は資源品国の代表である。これに対して、開発途上国の代表である中国は、今でも全土から数多くの新たな鉱物鉱床の発見がみられる。中国において、1993年以降発見、開発が進められてきた鉱床および鉱化地帯は70箇所におよぶ。これらの鉱床のほとんどは、本研究での調査地域の中国中部〜南部域に分布する。すなわち、上述の中央オロジェニックベルト、南中国プレート、チベット〜雲南プレートに分布する。各鉱床が産出する主要鉱種は、銅、鉛、亜鉛、金、銀、錫、タングステンなどである。また、数は少ないもののマンガン、鉄、ウランなどもある。鉱床によっては、希土類元素、ニッケル、モリブデン、金・銀、アンチモンなどの副産物を随伴する。銅鉱床規模を、Super large (Cu総埋蔵量:100万t以上)、Large(100万t〜50万t)、Medium(50万t〜5万t)、Small(5万t以下)に4区分すると、Super LargeとLarge規模のほとんどの鉱床は本研究の調査地域に分布する。予測される銅(Cu)埋蔵量は、Super Large=100万t以上、Large=281万t以上、Medium=55万t以上、Small=1.2万t以上と見積もられる。また、鉛・亜鉛鉱床は6地域と銅に比べ少なく、全てSouth China Plateに分布する。6鉱床中5つがLarge規模(Pb+Zn=100万t〜500万t)である。予測される資源量は、166万t以上である。金銀鉱床は、ここ10年間で30箇所発見・開発されている。ほとんどの鉱床は、South China PlateとCentral Orogenic Beltから発見されている。これらから予測される埋蔵量は、金=305t以上、銀=6300t以上と見積もられる。錫・タングステンは中国を代表する資源である。これらはSouth China Plateより新たに4鉱床発見された。予想埋蔵は、90万tと見積もられる。以上、近年中国で新たに発見・開発されている鉱物鉱床は、そのほとんどが本研究調査・研究地域に分布する。
著者
桑原 希世子 加藤 泰浩 佐野 弘好
出版者
芦屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

古生代末の大量絶滅に至るグローバルな海洋環境変動を解明するために,パンサラッサ遠洋域に堆積した最上部ペルム系層状チャートに含まれる放散虫サイズと,チャートの化学組成や岩相との関係を検討した.放散虫アルバイレラのサイズの変動と直接同期するような,チャートの化学組成の変動は現時点では見いだせなかった.しかし,化石群集帯ネオアルバイレラ・オプティマ帯,および化石帯を代表するアルバイレラ・トリアンギュラリスの生存期間は,海洋の酸化還元状態と呼応関係にあることが明らかになった.
著者
安川 和孝 加藤 泰浩
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.117, no.4, pp.217-237, 2011-04-15 (Released:2011-08-12)
参考文献数
113
被引用文献数
1

約55Maに発生した暁新世/始新世境界温暖化極大イベント(PETM)を引き起こした温室効果ガスの起源について,温度と大気中CO2濃度に依存性をもつ陸上岩石の風化フラックスを考慮した大気-海洋2-Boxモデルを用いて定量的検討を行った.その結果,同時期に北大西洋で生じた大規模火成活動により生成した熱分解起源メタンと,海底メタンハイドレートの分解による微生物起源メタンの放出を仮定すれば,PETMにおける-3‰の炭素同位体比負異常(CIE)を説明できることが示された.しかしながら,一般的な気候感度の範囲内において,-3‰のCIEに制約される炭素放出量では地質記録から推定される4℃以上の温暖化を再現できなかった.PETMのCIEと温暖化を同時に説明するには,従来の推定より著しく高い気候感度か,CO2による温暖化に加えてCO2以外の気候因子/フィードバックの寄与を考慮する必要がある.
著者
野崎 達生 鈴木 勝彦 加藤 泰浩 松岡 篤
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2009

本研究では,古海洋・古気候変動の原因解明に有用なRe-Os同位体の迅速測定方法を開発した.Re,Osは濃度が非常に薄いためにTIMSでの測定が一般的であるが,MC-ICP-MSと気化法を組合せた分析手法を開発し,従来よりも数倍サンプル処理能力を向上させることに成功した.本手法を美濃帯坂祝地域のチャート試料に適用し,三畳紀の約40 Myrにわたる長期の古海洋Os同位体比経年変動曲線を復元した.本結果から,チャート試料が古海洋のOs同位体比を復元する記録媒体として有効であることが初めて明らかになった.また,三畳紀前期に今まで確認されていなかった還元的海洋環境が広がっていたことが解明された.
著者
加藤 泰浩 中村 謙太郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

我々は東太平洋の広範囲に,希土類元素(レアアース;REE)を豊冨に含有した『深海低含金属堆積物』が分布していることを発見した.この新発見の資源は,(1)レアアース含有量が非常に高い,(2)資源量が膨大かつ探査が容易,(3)放射性元素であるウラン,トリウムの含有量が低い,(3)弱酸でほとんどのレアアースが回収できる,など資源として理想的な条件を備えている.公海上に存在しているが,国際海底機構への鉱区申請を経て我が国が開発することができる(技術的にも採鉱が可能な)資源であり,レアアース資源の安定確保という国家的課題を解決する切り札となり得るものである.本研究では,この含金属堆積物鉱床について,特に有望と見込まれる東太平洋域における分布状況とレアアース含有量(併せて他の有用元素含有量も)を網羅的に把握し,将来的な資源開発を見据えた資源ポテンシャル評価を行うことを目的としている.本年度はその初年度として,テキサスA&M大学における堆積物コア試料採取を行い,それらの鉱物同定(XRD),および全岩化学組成分析(XRF,ICP-MS)を行う予定であったが,より包括的な研究である基盤研究(S)が採択されたため,本研究は2010年8月25日をもって廃止となった.