著者
保坂 克洋
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.100, pp.285-304, 2017-07-28 (Released:2019-03-08)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本稿は,放課後児童クラブにおける指導員と発達障害児の相互行為に着目し,支援がどのように行われているのかを明らかにすることを目的としている。特にドロシー・スミスの「切り離し手続き」という概念を分析枠組みとして,支援の実践における指導員と発達障害児の非対称的な関係について考察を行った。 相互行為場面の検討から,発達障害児の行為が問題となる可能性の段階で指導員が介入する「予防的対応」という支援の特徴が明らかとなった。この対応は,ルールを破ることによって様々な社会的場面において排除されてしまうことを危惧していた指導員によって,発達障害児がその状況において適切に振る舞えることを目指しているものであった。 一方,この対応のもとでは,指導員と発達障害児の間にリアリティ分離が生じた際に,発達障害児の状況定義が認められることはなく,発達障害児は現実の構成過程から排除されていた。つまり,発達障害児の包摂を志向した実践であっても,支援の実践が行われている現在時制において排除的に機能する場合があるという,単純に包摂の営みとして捉えられない支援の実践が明らかとなった。 また,この予防的対応は,発達障害児に対する「衝動が強い」という理解に基づいていた。そのため,支援の実践において発達障害児を現実の構成過程から排除しないためにも,この認識枠組みを書き換えつつ発達障害児と関わる必要性を指摘した。