著者
金 富子 中野 敏男 倉田 明子 橋本 雄一 吉田 ゆり子 澤田 ゆかり 野本 京子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

まず、2年目の研究実績として、最大の成果といえるのは、初年度の成果をふまえて、2017年8月に本格的に中国東北へのフィールドワーク調査(長春、延辺、ハルピン、8泊9日)を実施したことだった。とくに延辺では、現地の研究者2名の全面的な協力によって、3日間にわたって日本人入植地と朝鮮人入植地をフィールドワーク調査することによって、両者の違いを現地で直接に経験しただけでなく、現地で当時を知る複数の経験者にインタビューすることができた。また、現地研究者との研究交流と写真論文集出版に向けた協力体制を深めることができた。なお、フィールドワーク調査の事前準備として、同年7月に中国東北への朝鮮人移民に関する専門研究者を招いて開いた公開研究会をもって認識を深め、さらに同年8月にはハルピンと万宝山事件の歴史と現在に関する研究分担者による内部研究会を開き、問題意識を共有した。また、フィールドワーク調査後の同年10月には、成果を共有するための記録集の作成と公開フォーラムを開催した。次に、2018年1月には、第3課題「『満洲』の社会と文化」を主題に関連して、中国から「満洲」文学の専門研究者を招き国際カンファレンスを開催するとともに、非公式の集まりを含めて、「満洲」に関する文学・文化の視点、現在のデジタル資料の利用方法などの研究交流を行った。さらに、この主題に関連して、同年3月に「満洲」のキリスト教史の専門研究者を招いて公開研究会を行い、「満洲」の宗教と欧米人という側面からテーマを深めた。以上のように、所定の計画通りに目標を達成することができた。
著者
蒲 豊彦 土肥 歩 山本 真 戸部 健 倉田 明子 石川 照子 佐藤 仁史 魏 郁欣
出版者
京都橘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、近代中国におけるキリスト教の展開という視点から横断的地域史研究を行った。時期としては19世紀中葉から20世紀初頭ごろまでを対象とし、中国沿海部の4地区―①北京・天津地区、②江南デルタ地区、③福建から広東にいたる南部沿海地区、④広州・香港の珠江デルタ―を選定した。アメリカや香港などからも研究者を招いてシンポジウムを開催して意見を交換し、キリスト教の視点が地域史研究にきわめて有効であることをあらためて確認することができた。
著者
倉田 明子
出版者
国際基督教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

本年度はまず、従来の上海・香港における開港場知識人、および洪仁〓に関する研究をすすめ、それらを博士論文「19世紀南中国におけるプロテスタント布教の発展と「開港場知識人」の誕生--洪仁〓と『資政新篇』の位置づけをめぐって--」としてまとめた。この博士論文を通して筆者は、洪仁〓と中国における近代化の最初の試みとされる洋務運動の実務的な担い手たちや香港の中国人エリートらを、一定の共通体験を持つ人々として「開港場知識人」という枠組みでとらえ、洪仁〓の太平天国における改革への試みも孤立した改革運動ではなく、洋務運動やその後の近代化への道筋と同じ源流を持っていたと見なすことができることを指摘した。博士論文提出後は、(1)中国キリスト教史、(2)洪仁〓研究、(3)開港場知識人に関する研究、の3点について史料調査・収集及びその分析を進めた。(1)については、宣教師によって出版された雑誌『教会新報』に注目し、1860年代に入り急速に中国国内でキリスト教布教の規模や勢力が拡大したこと、また宗教思想にとどまらない、西洋の文化、特に科学知識の伝播の担い手として再び宣教師や信徒たちが一定の役割を担ったこと等を確認した。また、『教会新報』の続編である『万国公報』についても内容の整理と分析を進めている。また、(2)については、洪仁〓の晩年のキリスト教に対する考え方について検討を加えようと試みた。『資政新篇』以外の洪仁〓の著作についても改めて丁寧に読み込み、分析を行っている。さらに、(3)の開港場知識人の関する研究については、1840年代から50年代にかけて、上海のロンドン伝道会やイギリス国教会の宣教師やその助手たちが、琉球布教に携わっていたベッテルハイム宣教師と緊密な関わりを持っていたことも明らかになってきた。そこで、香港においてベッテルハイム関係の資料の調査、収集を進めたほか、台湾においても関係資料の収集を行った。