著者
金 富子 中野 敏男 倉田 明子 橋本 雄一 吉田 ゆり子 澤田 ゆかり 野本 京子
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01 (Released:2016-04-21)

2016年度は1)中国東北への予備調査を兼ねたフィールドワーク、2)満蒙開拓平和記念館を含む長野県飯田市フィールドワーク、3)公開の国際シンポジウムおよびワークショップ、4)研究会を開催し、ほぼ所期の目標を達成できた。1)では、2016年8月に、翌2017年の本調査の候補地として大連・延辺を訪問した。この調査旅行の目的は、12月に開催予定の国際シンポジウム及びワークショップ(以下の3))の打合せをするとともに、本調査のための予備調査にあった。現地訪問し、研究交流や人脈づくりをしたことは、次につながる成果となった。2)では、2016年9月に本科研メンバー全員で、日本人の「満洲」移民の最大の送り出し先である長野県のなかで飯田市を訪問した。飯田歴史資料館では専門的研究者による研究史の現状に関する講演とともに、3人の移民経験者(子孫含む)の証言を直接聞く機会をもった。さらに川路村資料館での資料調査と文献収集、満蒙開拓平和記念館の訪問と館長の講演・面談をした。これらのフィールドワークを通じて、移民経験者の聞き取りや研究交流、人脈づくりをしたのは成果であった。3)では、第四課題に即して、2016年12月に中国延辺から研究者2人を招聘して、研究分担者・協力者、日本国内の研究者とともに、国際シンポジウム及びワークショップ「植民地を移動した〈在満〉朝鮮人の生活と抗日~その記憶と痕跡を移民史・オーラルヒストリーでたどる~」を2日間開催した。これらを通じて、翌2017年の本調査地の目処がついたとともに、現地研究者のよる写真集の出版企画が浮上したのは大きな成果であった。4)では、2016年3月に、本調査を前に、日本国内の研究者を招請して日本人「満洲」移民に関する公開研究会を開催した。本科研メンバーが同じ大学にいるという地の利を活かして、全体会議や予備調査打合せを精力的に開催した。
著者
蒲 豊彦 土肥 歩 山本 真 戸部 健 倉田 明子 石川 照子 佐藤 仁史
出版者
京都橘大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01 (Released:2013-05-21)

本研究は、キリスト教信者コミュニティーの動向およびその周辺事象を分析の基軸に据えることによって、それぞれに大きく異なる歴史的背景と地域的特性をもつ中国沿海の諸地区を、共通の基準から比較しつつ統一的かつ総合的に理解しようとするものである。そしてこの目的に沿って、具体的課題に共同で取り組む部分と、それぞれの地域を対象として研究分担者が独自に進める部分とに分けて、研究を進めている。前者にかんするもっとも大きな仕事として、本研究に新しく取り入れて進めてきたTimothy Richard, Forty-Five Years in Chinaの第一次翻訳稿がほぼできあがった。Timothy Richardは19世紀中国の社会の底辺と政府上層部の両方に深く関わった宣教師であり、その回想録を精読することによって、キリスト教をとりまくある種の枠組みを理解することができた。そのほか、東京で研究会を全4回開催し、共同研究者である倉田明子の『中国近代開港場とキリスト教―洪仁かんがみた「洋」社会』の合評および、おなじく魏郁欣「『墳樹』をめぐる宗族間の紛争――汀州羅姓を事例として」の研究報告と討論を行い、そしてTimothy Richardをさらに理解するために、何菊『伝教士与近代中国社会変革――李提摩太在華宗教与社会実践研究1870-1916』の輪読を始めた。研究分担者が独自に行う研究としては、前年度とおなじく中国でのフィールドおよび文献調査、イギリスでの文献調査を行い、各種の論考を発表した。
著者
倉田 明子
出版者
国際基督教大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008 (Released:2008-04-01)

本年度はまず、従来の上海・香港における開港場知識人、および洪仁〓に関する研究をすすめ、それらを博士論文「19世紀南中国におけるプロテスタント布教の発展と「開港場知識人」の誕生--洪仁〓と『資政新篇』の位置づけをめぐって--」としてまとめた。この博士論文を通して筆者は、洪仁〓と中国における近代化の最初の試みとされる洋務運動の実務的な担い手たちや香港の中国人エリートらを、一定の共通体験を持つ人々として「開港場知識人」という枠組みでとらえ、洪仁〓の太平天国における改革への試みも孤立した改革運動ではなく、洋務運動やその後の近代化への道筋と同じ源流を持っていたと見なすことができることを指摘した。博士論文提出後は、(1)中国キリスト教史、(2)洪仁〓研究、(3)開港場知識人に関する研究、の3点について史料調査・収集及びその分析を進めた。(1)については、宣教師によって出版された雑誌『教会新報』に注目し、1860年代に入り急速に中国国内でキリスト教布教の規模や勢力が拡大したこと、また宗教思想にとどまらない、西洋の文化、特に科学知識の伝播の担い手として再び宣教師や信徒たちが一定の役割を担ったこと等を確認した。また、『教会新報』の続編である『万国公報』についても内容の整理と分析を進めている。また、(2)については、洪仁〓の晩年のキリスト教に対する考え方について検討を加えようと試みた。『資政新篇』以外の洪仁〓の著作についても改めて丁寧に読み込み、分析を行っている。さらに、(3)の開港場知識人の関する研究については、1840年代から50年代にかけて、上海のロンドン伝道会やイギリス国教会の宣教師やその助手たちが、琉球布教に携わっていたベッテルハイム宣教師と緊密な関わりを持っていたことも明らかになってきた。そこで、香港においてベッテルハイム関係の資料の調査、収集を進めたほか、台湾においても関係資料の収集を行った。