著者
儀利古 幹雄 大下 貴央 窪薗 晴夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 = NINJAL research papers (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-18, 2011-11

国立国語研究所 理論・構造研究系 プロジェクト研究員国立国語研究所 理論・構造研究系本研究は,語末が「ズ」であるチーム名およびグループ名(例:ライオンズ,ホエールズ)のアクセントの決定要因を明らかにし,「ズ」という形態素の音韻的本質を考察する。本研究で実施した発話調査の結果,チーム名・グループ名を形成する「ズ」は,語幹の音節構造におけるデフォルト型アクセントを生起させる性質を有することが明らかになった。この現象は,日本語における無標の表出(the emergence of the unmarked)であり,平板型アクセントが有標であることを示唆している。
著者
儀利古 幹雄
出版者
国立国語研究
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-19, 2011-05
被引用文献数
1

国立国語研究所 理論・構造研究系 プロジェクト研究員本研究では,現在の東京方言における外来語複合名詞のアクセントを記述し,そこに観察されるアクセントの平板化現象に関わる言語内的要因を考察する。本研究で実施した,2世代の東京方言話者に対するアクセント調査の結果,(i)従来の記述と異なり,若年グループにおいて平板型複合名詞アクセントが観察されること,(ii)話者が若年グループであっても,アクセントの平板化は,後部要素が重音節(1音節2モーラ)であり語末特殊拍が撥音である場合においてのみ観察されること,以上の2点が主に明らかになった。
著者
儀利古 幹雄
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.61-71, 2006

The aim of this paper is to discuss the invisibility of the moraic nasal in Japanese by investigating the phonological factors that yield the unaccented pattern in medical terms. Firstly, I demonstrate that the unaccented pattern in medical terms that end in CiN# sequence occurs in phonologically predictable contexts. Secondly, I argue that the emergence of the unaccented pattern in medical terms has to do with the invisibility of the moraic nasal in word-final position. Lastly, I analyze the motivation for the invisibility of the moraic nasal by examining the literature on the phonetic property of the moraic nasal and the weight neutralization in word-final position in Japanese.
著者
儀利古 幹雄
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

最終年度は、漢語複合名詞アクセント(例:末広町、運動会)の平板化に焦点を当てて研究を行った。はじめに漢語複合名詞に関する全体的な調査を行った結果、アクセントの平板化を起こしている度合いが著しい語群が観察されたので、それらを特に重点的に調査した。具体的には「~町」「~会」「~祭」といった漢語複合名詞について、そのアクセントが平板化を起こしているかどうか、起こしているとすればその要因はどういったものなのかを調査・分析した。調査の結果、「~町」「~会」「~祭」という漢語複合名詞のアクセントは、高年層から若年層へと世代が下るにつれて平板化を起こしていることが明らかになった。ただ、これらの語群のアクセントの平板化には、話者の世代という言語外的要因以上に、言語内的要因(言語構造的要因)が大きく影響を及ぼしていることも統計的に明らかになった。具体的に述べると、前部要素(「末広町」の「 末広」、「運動会」の「運動」)が3モーラである場合は4モーラである場合と比較してアクセントの平板化の進行具合が早く、また、2 モーラや5モーラ以上である場合はアクセントの平板化は起こらないが明らかになった。さらに、前部要素の末尾の音節構造が重音節の場合は軽音節の場合と比較して、アクセントの平板化の進行が遅いことも明らかになった。これらの結果は、アクセントの平板化という言語変化現象は、ただ単に「若者」が引き起こしているのではなく、言語構造そのものにも大きな原因がある、すなわち、アクセントの平板化を起こしやすい語と起こしにくい語がそもそも存在しているということを示唆している。この結果は、アクセントの平板化の原因として言語外的要因のみを重点的に扱ってきた従来の研究に対して一石を投じるも のである。