著者
窪薗 晴夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.5-15, 1998-04-30 (Released:2017-08-31)

Trubetzkoy (1958/69) proposed that natural languages fall into two groups, mora-counting and syllable-counting languages, according to the smallest prosodic unit used in that language. Japanese has been classified as a mora language, whereas English is labeled a syllable language. This proposal has been taken for granted over the decades and has been interpreted as suggesting that the mora and the syllable are mutually exclusive within a single prosodic system. This paper challenges this interpretation by demonstrating that at least one major role which the mora plays in Japanese is observed in syllable-based languages as well and, moreover, that the syllable plays a pivotal role in a wide range of linguistic phenomena in the putatively mora-based system of (Tokyo) Japanese.
著者
窪薗 晴夫
出版者
The Linguistic Society of Japan
雑誌
言語研究 (ISSN:00243914)
巻号頁・発行日
vol.148, pp.1-31, 2015 (Released:2016-05-17)
参考文献数
69
被引用文献数
1

この論文では,日本語の音声データ,とりわけ語アクセントに関連するデータをもとに,一般言語学が日本語(方言)の研究にどのような新しい知見をもたらすか,逆に日本語方言の実証的,理論的研究が一般言語学や他の言語の研究にどのような洞察を与えるか考察する。具体的な例として「音節量」の現象を取り上げ,この概念を日本語の分析に導入することにより,さまざまな日本語の諸言語が一般化できること,また,そのようにして得られた日本語の分析が一般言語学,音韻理論の研究に大きく寄与できる可能性を秘めていることを指摘する。論文の後半では日本語諸方言のアクセント体系・現象を取り上げ,この言語が「アクセントの宝庫」と言えるほど多様なアクセント体系を有していること,そしてその分析が言語の多様性について重要な示唆を与えることを指摘する。
著者
窪薗 晴夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.5-15, 1998-04-30
被引用文献数
3 16

Trubetzkoy (1958/69) proposed that natural languages fall into two groups, mora-counting and syllable-counting languages, according to the smallest prosodic unit used in that language. Japanese has been classified as a mora language, whereas English is labeled a syllable language. This proposal has been taken for granted over the decades and has been interpreted as suggesting that the mora and the syllable are mutually exclusive within a single prosodic system. This paper challenges this interpretation by demonstrating that at least one major role which the mora plays in Japanese is observed in syllable- based languages as well and, moreover, that the syllable plays a pivotal role in a wide range of linguistic phenomena in the putatively mora-based system of (Tokyo) Japanese.
著者
窪薗 晴夫
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_25-4_29, 2021-04-01 (Released:2021-08-27)
参考文献数
10

This article discusses how to disseminate research outputs in humanities in Japan to researchers abroad. It begins with an introduction of the various activities conducted by the National Institute for Japanese Language and Linguistics (NINJAL) for the internalization of Japanese linguistics. It will then describe the difficulties that researchers in humanities may face when they try to share their knowledge with scholars abroad. The second half of the article explores the reason why our knowledge should be disseminated in the common language of English and suggests several policies that can help us accomplish this goal.
著者
窪薗 晴夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.5-17, 2003-08-30 (Released:2017-08-31)

This paper provides an overview of the research on the acquisition of phonology and prosody from the viewpoint of language universals. By way of introduction, I first sketch the traditional but still prevailing hypotheses proposed by Roman Jakobson six decades ago and attempt to evaluate these hypotheses in light of empirical data concerning, in particular, the acquisition of vowels, consonants and syllable structure. I then discuss the acquisition of prosody with main emphasis on that of the mora and the prosodic structure of words in Japanese. I will also point out in passing several interesting questions that remain unsolved.
著者
儀利古 幹雄 大下 貴央 窪薗 晴夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 = NINJAL research papers (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-18, 2011-11

国立国語研究所 理論・構造研究系 プロジェクト研究員国立国語研究所 理論・構造研究系本研究は,語末が「ズ」であるチーム名およびグループ名(例:ライオンズ,ホエールズ)のアクセントの決定要因を明らかにし,「ズ」という形態素の音韻的本質を考察する。本研究で実施した発話調査の結果,チーム名・グループ名を形成する「ズ」は,語幹の音節構造におけるデフォルト型アクセントを生起させる性質を有することが明らかになった。この現象は,日本語における無標の表出(the emergence of the unmarked)であり,平板型アクセントが有標であることを示唆している。
著者
窪薗 晴夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー (ISSN:21850119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-7, 2014-06

日本語諸方言のアクセント体系が高さ(ピッチ)にもとづく「ピッチアクセント体系」であることは日本語音声研究の中で常識とされていることであるが,日本語以外の言語から見ると必ずしも自明のこととは言えない。実際,「ピッチアクセント体系(言語)」という類型概念そのものを否定する研究者も数多い。本稿は,2010年に本プロジェクトが主催した国際シンポジウムISAT 2010の成果(Lingua 122特集号)の一部を報告する形で,日本語の研究が一般言語学や言語類型論に貢献できる可能性を指摘する。
著者
窪薗 晴夫
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.281-286, 1997-07-20 (Released:2010-06-22)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

最近の日本語韻律研究を概観し, この成果から音韻発達の研究にどのような知見・示唆が得られるか検討する.具体的には, 音節・音節量・アクセント・モーラ・イントネーションといった韻律現象の構造を, (i) ローマン・ヤコブソンが提唱した有標性理論 (有標・無標の考え方) と, (ii) 大人の文法・子供の言語獲得・失語症の3つの現象間の相関関係という観点から考察する.
著者
窪薗 晴夫
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー = NINJAL Project Review (ISSN:21850100)
巻号頁・発行日
no.3, pp.17-34, 2010-10

国立国語研究所「ストライキ」から「スト」,「テレビジョン」から「テレビ」というように,多くの外来語が2~4モーラの長さに短縮される。この短縮語形成についてはこれまでもいくつか出力条件(制約)が考えられてきたが,一つの入力に対して唯一の出力を予測するまでには至っていない。本稿は「短縮語は短いほど良い(the shorter, the better)」という前提に基づく従来の分析に対し,単語分節という全く別の観点からの分析を提案する。この分析では,5モーラ以上の長さの単純語は音韻的には実は複合語(疑似複合語)であり,その後半部分が削除されることにより短縮形が生成されると分析する。この分析により,長い単純語の短縮パターンが説明できるだけでなく,単純語の短縮と複合語の短縮(携帯電話 → ケータイ)を同一のプロセスとして一般化できる。さらには,4モーラと5モーラの境界が関与する他の言語現象と短縮語形成の共通性もとらえられるようになる。
著者
窪薗 晴夫 田窪 行則 郡司 隆男 坂本 勉 久保 智之 馬塚 れい子 広瀬 友紀
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

主に日本語のプロソディー構造を特に統語構造・意味構造・情報構造とのインターフェースという観点から分析し、日本語諸方言におけるアクセントとイントネーションの構造、それらのプロソディー構造と統語構造、意味構造との関係を明らかにした。これらの成果は諸学会、研究会および年度末の公開ワークショップにて発表し、また研究成果報告書(冊子体およびPDF)に報告した。
著者
窪薗 晴夫 梶 茂樹 岩田 礼 松森 晶子 新田 哲夫 李 連珠
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

本研究の目的は世界の諸言語(とりわけ韓国語諸方言、中国語諸方言、アフリカのバンツー諸語)と比較することにより類型論的観点から日本語諸方言のアクセントを考察し、その特質を明らかにすることである。この目的を達成するために年度ごとに重点テーマ(借用語のアクセント、疑問文のプロソディー、アクセント・トーンの中和、アクセント・トーンの変化)を設定し、それぞれのテーマについて諸言語、諸方言の構造・特徴を明らかにした。これらのテーマを議論するために4回の国際シンポジウムを開催し、海外の研究者とともに日本語のアクセント構造について考察するとともに、その成果をLingua特集号を含む国内外の研究誌に発表した。
著者
窪薗 晴夫
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.93-104, 2012-04-30

This paper describes the prosodic system of Koshikijima Japanese, which is an endangered dialect spoken in the south of Japan, off the mainland of Kagoshima. This dialect resembles its sister dialect, Kagoshima Japanese, in several ways: It has a two-pattern prosodic system where words display only two tonal patterns; The domain of accent/tone assignment is the syntactic phrase known as bunsetsu rather than the word; Compounds inherit the tonal pattern of their initial morpheme. On the other hand, Koshikijima Japanese has developed its prosodic system in several unique ways. First, three-mora or longer words exhibit two high tones, or two pitch peaks. Second, this system relies both on the mora and the syllable, with the second high tone assigned to a particular mora at (or near) the end of the word and the first high tone linked to one or more syllables at the beginning of the word. Finally, this dialect has a high tone deletion rule whereby the second high tone of each word/phrase is deleted in non-final positions of the sentence.
著者
窪薗 晴夫
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

学会・研究会・集中講義等を利用して、言語学専攻・専修を有する大学の教員および学生(学部生、大学院生)に対して聞き取り調査を行った。また国際会議に来日した海外の研究者から、海外(主に欧米)の主要大学における言語学プログラムに関して情報を得た。これらの調査の結果、海外の大学と比較した場合に、日本国内の言語学プログラムについて次のような状況が浮かび上がった。1.多くの大学において、大学院重点化の結果、学部生向けの授業や研究指導から大学院生向けの授業・研究指導にカリキュラムの重心が移り、10年前に比べると学部生用のプログラムの比重が小さくなっている。とりわけ、学部生向けの授業が減少し、大学院生向けの授業と合同になっているところが多い。この結果、学部レベルの教育が不十分であると認識している教員が多い。2.その一方で、大学院の教育が充実しているかというとそういうわけでもない。10年、20年前に比べ、大学院生の数が倍増しており、研究指導にかかる時間が倍増しているものの、大学院生一人ずつの研究指導という意味では、以前より充実しているとは言えない。また、合同の大学院演習や研究発表会に予想以上の時間をとられているという教員も多いようである。3.大学全体の予算削減や、学長や学部長レベルの政策的経費が増えていること等の影響で、講座や教員に対する研究費が削減されてきており、研究図書費が大幅に減少している。大学院生が研究遂行のために必要とする研究図書費用や実験費用を教員の科研費でカバーしているところも少なくない。
著者
小椋 たみ子 窪薗 晴夫 板倉 昭二 稲葉 太一 末次 晃
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

第一に言語構造、養育環境(親の働きかけ、メディア環境、家族環境など)、個体要因(物理的世界の認知能力、社会的認知能力、気質、出産時情報など)の言語発達への影響を明らかにした。第二に親の報告から言語発達を測定するマッカーサー乳幼児言語発達質問紙の妥当性が実験と観察データから高いことを明らかにした。第三に言語構造の違い(複数の形態素の有無)が認知へ寄与するかどうか明らかにした。第四に大人の言語との比較を基調に、子供の言語を(i)非対称性、(ii)「幼児語」の音韻構造、(iii)アクセントの獲得、(iv)促音の出現、以上の4つの観点から明らかにした。
著者
窪薗 晴夫
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、これまで体系的な研究に乏しかった複合語の音韻構造を対照言語学・一般言語学的な観点から考察し、日本語と英語の複合語音韻構造の中の普遍性と言語個別性を明らかにすることを目的としている。この研究から次の4点が明らかになった。1.日本語のアクセント現象の記述・説明のためには、従来から言われてきたモーラという単位に加え、音節という単位が不可欠であり、この単位を用いて分析することにより、日本語と英語のアクセント現象に見られる抽象的なレベルでの共通性を捉えることができる。2.複合語を構成する二つの要素のうち、どちらのアクセント(強勢)が複合語のアクセント(主強勢)として生き延びるかを対照言語学的観点から考察すると、多くの言語において複合語の修飾語(modifier)が主要部(head)を統率するという共通した特徴が観察される。ただし日本語の東京方言はこの例外となる。3.音声素性という概念を用いると、「蝶々」という反復複合語が「てふてふ」から「ちょうちょ」へと母音部分の発音を変えたという歴史的事実を、「痛い」が「いてえ」となるような共時的母音融合の現象と同一の音声過程として記述できる。4.複合語アクセント規則をはじめとするアクセント規則と、母音挿入や子音削除のような分節音変化との関係を多言語について考察した結果、分節音変化が生じる前の音節構造(つまり一昔前の表層構造)を入力としてアクセント規則が適用されるケースが観察された。