著者
元吉 八重子 市川 家國
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.166-171, 2009-11-15 (Released:2010-05-31)
参考文献数
28

糸球体疾患において,高分子蛋白尿の量が多いほど末期腎不全へと移行するリスクが高く,蛋白尿は腎疾患の指標であるのみでなく,さらなる腎傷害の原因となる可能性がある。 糸球体から漏出した様々な蛋白質は,主にmegalinというレセプターを介したエンドサイトーシスにより管腔側から近位尿細管細胞へと取り込まれ,ライソソームへと運ばれて分解されるか,そのまま基底膜側へと運ばれる。それにともなって,MCP-1やRANTESなどの炎症に関わるメディエーターや,TGF-βなどの線維化に関わるメディエーターが尿細管間質に放出される。また,近位尿細管のアポトーシスも惹き起こされる。このように,漏出した蛋白質が直接的な尿細管傷害の起因となることによって悪循環を形成し,慢性腎不全を進行させている可能性がある。
著者
平沢 光明 元吉 八重子 小野 静香 北川 達士 横田 俊介 亀井 宏一 横井 匡 古川 晋 山口 明日香 宮田 理英 清原 鋼二
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.9-15, 2023 (Released:2023-02-02)
参考文献数
15

小児ネフローゼ症候群の治療に用いられるステロイド薬には,複数の副作用があり,緑内障はその一つである.しかし,ステロイド緑内障は点眼薬による治療で改善することも多く,手術まで要する症例は少ない.我々は,初発のネフローゼ症候群に対してステロイド治療開始後早期に眼圧上昇を認め,両眼に線維柱帯切開術を施行するも,ネフローゼ症候群再発の際にもステロイド治療に伴い,眼圧上昇を認めた症例を経験した.本症例は,一般的なステロイドレスポンダーの要素に加え,隅角形成不全も伴っていた.そのことによりステロイド治療開始早期に急激な眼圧上昇を来し,緊急の緑内障手術が必要になったと思われる.ステロイド治療による緑内障の発症は,本症例のように急速かつ重度な経過をたどる可能性もあるため,ステロイド使用時には可及的速やかな眼圧の確認・管理が重要である.