著者
山口 明日香
出版者
社会経済史学会
雑誌
社會經濟史學 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.547-570, 2011-02-25

本稿の目的は,産業化における木材利用の視点から,とくに産業資材としての木材に注目し,国有鉄道による枕木の調達・利用方法を明らかにすることである。近代日本の産業化の過程において木材は,エネルギー,資材,原料として利用され,木材の需要構造の変化や供給不足などに対応して,長期的な木材所要量の確保は各産業にとって克服すべき課題となった。1870年代以降,鉄道網の拡張に伴い枕木需要は拡大し,国有鉄道は1909年度分の枕木購入に際し「一般競争入札」から「随意契約」に調達方法を変更した。さらに国有鉄道は,1930年度に予算不足により枕木買入単価を引き下げて所要量を確保するため,調達方法を「指名競争入札」に変更したが,1933年度には「益金」が増加して予算不足が解決され,また木材市場が回復したために再び「随意契約」に戻した。こうした調達方法の変更を通じて国有鉄道は木材市場や予算の変化に柔軟に対応したが,単年度主義の予算制約から長期的な枕木確保の対応策をとれなかった。国有鉄道は,使用樹種の拡大や防腐枕木の利用により枕木不足を解消しようとしたが,とくに1930年代後半以降,枕木不足は深刻化した。
著者
山口 明日香
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.547-570, 2011-02-25 (Released:2017-07-18)

本稿の目的は,産業化における木材利用の視点から,とくに産業資材としての木材に注目し,国有鉄道による枕木の調達・利用方法を明らかにすることである。近代日本の産業化の過程において木材は,エネルギー,資材,原料として利用され,木材の需要構造の変化や供給不足などに対応して,長期的な木材所要量の確保は各産業にとって克服すべき課題となった。1870年代以降,鉄道網の拡張に伴い枕木需要は拡大し,国有鉄道は1909年度分の枕木購入に際し「一般競争入札」から「随意契約」に調達方法を変更した。さらに国有鉄道は,1930年度に予算不足により枕木買入単価を引き下げて所要量を確保するため,調達方法を「指名競争入札」に変更したが,1933年度には「益金」が増加して予算不足が解決され,また木材市場が回復したために再び「随意契約」に戻した。こうした調達方法の変更を通じて国有鉄道は木材市場や予算の変化に柔軟に対応したが,単年度主義の予算制約から長期的な枕木確保の対応策をとれなかった。国有鉄道は,使用樹種の拡大や防腐枕木の利用により枕木不足を解消しようとしたが,とくに1930年代後半以降,枕木不足は深刻化した。
著者
平沢 光明 元吉 八重子 小野 静香 北川 達士 横田 俊介 亀井 宏一 横井 匡 古川 晋 山口 明日香 宮田 理英 清原 鋼二
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.9-15, 2023 (Released:2023-02-02)
参考文献数
15

小児ネフローゼ症候群の治療に用いられるステロイド薬には,複数の副作用があり,緑内障はその一つである.しかし,ステロイド緑内障は点眼薬による治療で改善することも多く,手術まで要する症例は少ない.我々は,初発のネフローゼ症候群に対してステロイド治療開始後早期に眼圧上昇を認め,両眼に線維柱帯切開術を施行するも,ネフローゼ症候群再発の際にもステロイド治療に伴い,眼圧上昇を認めた症例を経験した.本症例は,一般的なステロイドレスポンダーの要素に加え,隅角形成不全も伴っていた.そのことによりステロイド治療開始早期に急激な眼圧上昇を来し,緊急の緑内障手術が必要になったと思われる.ステロイド治療による緑内障の発症は,本症例のように急速かつ重度な経過をたどる可能性もあるため,ステロイド使用時には可及的速やかな眼圧の確認・管理が重要である.
著者
山口 明日香
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.485-508, 2008-01-25 (Released:2017-06-09)

近代日本の産業化の過程において,エネルギーあるいは資材としての木材は,需要の変化や供給不足が顕著になるにつれて産業の制約条件となり,各産業にとって木材の安定的確保は重要な課題となった。本稿の目的は,主要産炭地であった九州地域に焦点をあて,炭鉱業における坑木の調達及び利用方法について検討し,産業化の一側面を明らかにすることにある。九州の諸炭鉱では,1890年代以降の筑豊炭田の開発を契機として坑木の入手競争が激化し,さらに第一次大戦期にいっそう拡大した坑木需要に対応するため,炭鉱各社は資材調達の集中化を図り,炭鉱会社間で資材問題の討議機関を組織した。1920年代以降,炭鉱各社において合理化が推進されるようになると,安価な小径木や鉄製支柱の利用などにより坑木の節約が図られた。しかし,1933年以降,出炭量が急増すると,新坑開発や乱掘の進行,鉄鋼材の不足,他産業との木材入手競争の激化などにより坑木難は深刻化した。国内の木材市場が逼迫する状況下で,新たな対応策が模索されるようになったが,坑木難は解消されず,坑木の確保は依然として炭鉱業の重要な制約条件であった。