著者
亀井 宏一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.rv.2021.0003, (Released:2021-10-22)
参考文献数
29

免疫抑制薬内服中は,国内外の添付文書やガイドラインでは生ワクチンは併用禁忌とされている.一方で,免疫抑制薬内服中は感染症が重症化するリスクが高い.免疫抑制薬内服下での生ワクチン接種はこれまで 21 報告あり計 400 名に 816 回接種されており,致命的な合併症の報告はない.当センターでは,一定の免疫学的条件(CD4 細胞数≥500/mm3,PHA リンパ球幼若化反応のstimulation index≥101.6,血清 IgG≥300 mg/dL) を満たす場合,免疫抑制薬内服下での生ワクチン接種を施行してきた.抗体獲得率は麻疹 80.0~95.7%,風疹 100.0%,水痘 59.1~61.9%,ムンプス 40.0~69.2%で,ワクチン株ウイルス感染症は 1 名のみ(水痘ワクチン,免疫基準設定前の症例)であった.また,全国多施設研究でも約 2/3 の専門医が免疫抑制薬内服下での生ワクチン接種を必要と感じており,781 名の接種者中ワクチン株ウイルス感染症を発症したのは 2 名のみであった.免疫抑制薬下でも弱毒生ワクチンは有効で安全である可能性が高い.今後は,添付文書やガイドラインの文言の修正などを行っていくことが必要である.
著者
亀井 宏一 宮園 明典 佐藤 舞 石川 智朗 藤丸 拓也 小椋 雅夫 伊藤 秀一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.179-186, 2011-11-15 (Released:2012-10-25)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

免疫抑制薬内服患者への生ワクチン接種は添付文書上では禁忌とされている。しかしながら,免疫抑制薬内服患者はウイルス感染症で致命的となるリスクが高く,接種が望ましいという意見もあり,予防接種ガイドラインでは禁忌にはなっていない。今回われわれは,免疫抑制薬内服中で,麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜについて酵素抗体法で (-) か (±) を示した腎疾患または膠原病患者に,当院倫理委員会承認後に患者毎に十分な説明を行い,生ワクチン接種を行い,抗体獲得率と有害事象について前向きに検討した。40名 (1~24歳) に,55接種 (MRワクチン22接種,水痘ワクチン18接種,おたふくかぜワクチン15接種) 施行した。抗体獲得率は,麻疹 (90%) と風疹 (93%) は高く,水痘 (44%) およびおたふくかぜ (43%) は低かった。2名に発熱,1名に発疹,1名にネフローゼの再発を認めたが,重篤な有害事象はなかった。免疫抑制薬内服中でも生ワクチン接種が有効である可能性が示唆された。
著者
平沢 光明 元吉 八重子 小野 静香 北川 達士 横田 俊介 亀井 宏一 横井 匡 古川 晋 山口 明日香 宮田 理英 清原 鋼二
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.9-15, 2023 (Released:2023-02-02)
参考文献数
15

小児ネフローゼ症候群の治療に用いられるステロイド薬には,複数の副作用があり,緑内障はその一つである.しかし,ステロイド緑内障は点眼薬による治療で改善することも多く,手術まで要する症例は少ない.我々は,初発のネフローゼ症候群に対してステロイド治療開始後早期に眼圧上昇を認め,両眼に線維柱帯切開術を施行するも,ネフローゼ症候群再発の際にもステロイド治療に伴い,眼圧上昇を認めた症例を経験した.本症例は,一般的なステロイドレスポンダーの要素に加え,隅角形成不全も伴っていた.そのことによりステロイド治療開始早期に急激な眼圧上昇を来し,緊急の緑内障手術が必要になったと思われる.ステロイド治療による緑内障の発症は,本症例のように急速かつ重度な経過をたどる可能性もあるため,ステロイド使用時には可及的速やかな眼圧の確認・管理が重要である.
著者
中溝 智也 多田 憲正 宇田川 智宏 菊池 絵梨子 亀井 宏一 森 崇寧 蘇原 映誠 松岡 健太郎 白井 謙太朗 渡辺 章充
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
pp.cr.2022.0206, (Released:2022-10-26)
参考文献数
34

Galloway-Mowat症候群(GAMOS)は小頭症を伴う精神発達遅滞とステロイド抵抗性ネフローゼ症候群(SRNS)などの腎症を呈する疾患である.GAMOSにおける腎症は,治療抵抗性のため生命予後を規定する.今回シクロスポリン(CsA)で長期間の寛解を維持しているGAMOSの1例を報告する.1歳健診で精神発達遅滞,小頭症を指摘された.2歳時に蛋白尿を認め,5歳時にSRNSの基準を満たし,腎生検で巣状分節性糸球体硬化症を認めた.以上よりGAMOSと診断した.SRNSに対してCsAを導入したところ尿蛋白は減少し,7歳時に不完全寛解した.寛解維持した後にCsAの中止を試みたところ蛋白尿が増悪したため,CsAが尿蛋白減少に寄与していると判断した.腎毒性軽減のため8歳時から1日1回の投与へ変更し,14歳時の腎生検で明らかな腎毒性は認めなかった.CsAの単回投与は腎毒性を抑制し,GAMOS腎症のような遺伝性SRNSの予後改善に有効な可能性がある.
著者
小椋 雅夫 亀井 宏一 堤 晶子 野田 俊輔 佐藤 舞 藤丸 拓也 石川 智朗 宇田川 智宏 伊藤 秀一
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.31-35, 2011-04-15 (Released:2011-12-07)
参考文献数
11

グルココルチコイド (以下,ステロイド薬) の全身投与が長期にわたるステロイド依存性ネフローゼ症候群,頻回再発型ネフローゼ症候群,ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群などのいわゆる難治性ネフローゼ症候群ではステロイド薬の副作用が大きな問題となる。とりわけ骨合併症である成長障害 (低身長),骨粗鬆症,大腿骨頭壊死は重篤かつ不可逆的なものが多い。今回,私達はステロイド薬の副作用による骨合併症を呈した難治性ネフローゼ症候群4例に対してリツキシマブ療法を行った。リツキシマブの投与後,全例がステロイド薬からの離脱が可能となり,骨密度の改善や新たな骨合併症の予防が可能となった。リツキシマブは小児の難治性ネフローゼ症候群において再発抑制効果があり1)2),ステロイド薬の減量中止が可能となるが,infusion reactionをはじめとして,重症感染症,間質性肺炎,進行性多巣性白質脳症などの重篤な副作用を呈することもあり,使用にあたっては注意が必要とされる。