- 著者
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山梨 利顕
中田 裕久
児玉 和也
山田 勤
松尾 武文
- 出版者
- 社団法人 日本透析医学会
- 雑誌
- 日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.9, pp.981-985, 1990-09-28 (Released:2010-03-16)
- 参考文献数
- 17
マムシ咬傷により横紋筋融解症から, 急性腎不全を来し, 血液透析にて救命し得た症例を経験したので報告する. 患老は71歳の女性で, 昭和63年8月13日自宅にてマムシに左足蹠を噛まれ, 本院救急外来を受診し局所処置を受け帰宅した. その後左下肢の腫脹, 黒褐色尿を見るようになり, 次第に呼吸困難, 無尿を呈し8月16日内科入院となる. 意識は傾眠状態で, 左鼠径部以下の下肢の著明な腫脹, 左足蹠に血性水疱を伴う咬傷が認められた. 入院時検査では. BUN・Crの上昇と共に, GOT, GPT, LDH, CPK, ミオグロビンなどの筋由来と考えられる酵素群の上昇がみられ, マムシ咬傷による横紋筋融解症による急性腎不全と考えられた. 第1病日より血液透析を開始し, 計13回施行, 第18病日より尿量の増加と共に, 臨床症状の軽快を見た. 同時にミオグロビンや骨格筋由来の酵素値は急速に減少し, マムシ毒による横紋筋融解症は一過性のものと思われた. また経過中一過性の血液凝固異常がみられ, 蛇毒によるものと考えられた. 以上のことより, マムシ咬傷による横紋筋融解症から生じた急性腎不全は, 発症早期からの血液透析にて急性腎不全の状態を乗り切れば予後は良好であり, また一過性の血液凝固異常に対し, 体外循環時の抗凝固剤の使用には注意が必要なことが伺われた.