- 著者
-
金子 晃
- 出版者
- お茶の水女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究は偏微分方程式とトモグラフィに関連した数学の問題の理論的研究と計算機を援用した実践研究を主題とした継続的なものであり,今期の科学研究費受領期間中においては,主として以下のような研究を行い,成果を得た.(1)冪型の非線型項を持つ非線型熱方程式に対する藤田型の爆発の臨界指数は,錐の開きを識別できたが,放物型や柱状などのさらに狭い領域に対しては,有界領域との区別さえできない.これに対し,対数型の非線型項を導入すると,これらが区別できることを期待して,その一般論を構築した.特に,log uと1/log uを補間した函数logg uのp冪とuの積の形の非線型項に対して,任意の領域においてpに対する爆発の臨界指数が確定することを示した.具体的な領域に対するこの新しい臨界指数の決定は将来の課題として残された.(2)平面2値画像の2方向投影データからの再構成は,ほとんどの場合に一意性が無く,得られる解の関係や,よい条件を持つ解の探索はあまり明らかにされていない.本研究では,スイッチング演算により解の集合に有向グラフの構造を与え,その諸性質を調べることで,この問題への新たな接近法を開発した.こうして導入されたスイッチンググラフについて,さまざまな連結性,特にハミルトン性など,多くの興味深い結果が得られた.また,多くの未解決予想も得られ,新しい研究分野を拓いた.(3)代数幾何符号を画像に組み込む方法を発展させ,自動修復画像やマスク,電子透かしへの応用等を与えた.(4)逆畳み込みはトモグラフィの反転公式と同様,代表的な非適切問題である.ある種の正則化計算を導入して逆畳み込みを計算することにより,焦点のずれた実写写真の焦点補正を行い,この手法の実用性を確認した.本研究は,適切な逆畳み込みのパラメータを自動検出するところまで進めてから発表予定である.