著者
八田 徳高 福島 邦博
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.1-9, 2020-01-20 (Released:2021-01-20)
参考文献数
28
被引用文献数
1

目的 : 聞こえの困難さを訴える成人症例の聴覚情報処理機能の特徴を明らかにする。対象と方法 : 標準純音聴力検査は正常で、日常生活で聞こえの困難さを訴える成人 12 例を対象とした。聴覚情報処理に関する検査を実施し、聞こえの困難さの原因について分析を行うとともに、注意や記憶など聞こえの困難さの背景要因についても検討するために神経心理学的検査および発達面、精神的問題との評価を実施した。結果 : 全症例中 11 例に何らかの聴覚情報処理に関する問題が生じていた。10 例で聴覚情報処理能の低下とともに認知特性、発達障害、精神障害など、他の要因が併存していた。考察 : 全症例中 1 例は、神経心理学的検査の結果では成績の低下はなく、発達障害、精神障害の問題が認められないことから聴覚情報処理障害の可能性が高いと考えられた。また、神経心理学的検査の成績低下や発達面または精神的問題のいずれかの問題が生じている症例では、聴覚情報処理能の低下は、他の要因から生じる聞こえの困難さが疑われた。以上のことから聴覚情報処理機能の評価では、通常の聴覚検査とともに神経心理学的検査を実施し、その背景にある要因について検証することの重要性を確認することができた。
著者
立入 哉 中村 麻弥 八田 徳高
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.230-238, 2022-08-30 (Released:2022-09-17)
参考文献数
34

要旨: 聴覚情報処理課題について評価できるタブレット上で動作するアプリケーションを作成し, 成人16名と小学3年生以上の児童33名を対象として実施した。 この内, 成人群15名と児童群29名の結果を用いて, 正答率, 標準偏差, 基準値限界を示した。 この結果, 両耳分離聴課題, 雑音下聴取課題が困難である児童1名を検出することができた。 一方, 成人群のデパートノイズ下で-15dBSN 比条件での単音節課題は困難度が高く, GAP 数え課題と持続音の長短判別課題については, 回答方法や検査手法を修正または削除を検討すべきと考えた。
著者
八田 徳高 福永 真哉 太田 富雄
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.449-455, 2018

標準純音聴力検査の結果は正常であるが,日常生活,特に職場での聞こえの困難さを訴える成人2例に対して,聴覚情報処理に関する検査を実施し,聞こえの困難さについて分析を行った.また,聞こえの問題と同時に注意や記憶など他の背景要因の関連についても検討するために神経心理学的検査を実施した.その結果,2名とも聴覚情報処理に関する問題をもっていることが明らかになった.1名は,神経心理学的検査の結果では成績の低下はなく,聴覚情報処理障害の可能性が考えられた.もう一方の症例は,記憶及び注意に関する検査においても成績の低下がみられたことから,他の要因からくる聞こえの困難さが疑われる結果となった.このことから聴覚情報処理機能の評価では,神経心理学的検査を実施し,その背景にある要因について検証することの重要性を確認することができた.