- 著者
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土師 岳
八重垣 英明
山口 正己
- 出版者
- 園芸学会
- 雑誌
- 園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.2, pp.97-104, 2004-03-15
- 被引用文献数
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日待ち性が異なる生食用モモ品種について,果実の肥大,成熟および老化の過程を通して果実重,果皮の地色のa値,果肉硬度,糖度,滴定酸音量,エチレン生成量の推移を調査し,熱度の指標の相互関係すなわち成熟特性の差異とエチレン生成特性との関連を検討した.溶質品種の'あかつき','櫛形白桃'および'長沢自派'はいずれも満開後日数の経過とともに果実肥大,地色の抜け,桧皮の上昇,滴定酸音量の低下が進み,特定の日以降収穫によりエチレン生成と軟化が明瞭に促進されるようになった後,樹上でのエチレン生成が認められるようになった.しかしエチレン生成と熱度の指標の進行との間には大きな品種間差異が見出され,'櫛形白桃'は果実肥大の途中で地色が残り,精度が急速に増加する前であってもエチレンを多く生成し軟化が進んだのに対して,軟化が遅延する'長沢自派'では果実肥大と植皮の上昇を終え地色が抜けた後にエチレン生成が始まった.また硬肉品種の'有明'ではエチレン生成と収穫後の軟化が認められず,樹上での果肉硬度は4.0kg前後までしか低下しなかったものの,果実肥大,地色の抜け,糖度の上昇,滴定酸音量の低下は溶質品種と同様に進んでいた.以上の結果から,モモでは果実の軟化特性とともに成熟特性にも大きな品種間差異が認められ,その発現にはエチレン生成開始時期の遺伝的差異が重要な働きをしていると考えられた.