著者
壽 和夫 齋藤 寿広 町田 裕 佐藤 義彦 阿部 和幸 栗原 昭夫 緒方 達志 寺井 理治 西端 豊英 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.1, pp.11-21, 2002 (Released:2011-03-05)

1. ‘あきづき’は1985年に果樹試験場(現 果樹研究所)において‘162-29’に‘幸水’を交雑して育成した実生から選抜したやや晩生の赤ナシ品種である。1993年に一次選抜し,1994年からナシ第6回系統適応性検定試験に‘ナシ筑波47号’として供試した。その結果、1998年8月21日付けで‘あきづき’と命名され、なし農林19号として登録、公表された。また、2001年10月18日付けで種苗法に基づき第9401号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、短果枝、えき花芽ともに着生はやや少ない。開花期は‘幸水’とほぼ同時期で、‘筑水’とは交雑不和合であるが他の主要品種とは和合性である。‘豊水’と‘新高’の間に成熟し、病虫害に対しては通常の防除で対応できる。3. 果実は扁円形で平均果重が500g程度と‘豊水’より大きいが‘新高’よりは小さい。果肉は軟らかく、甘味は‘豊水’程度で酸味が僅かにあり、食味は良好である。芯腐れ、みつ症などの生理障害の発生は少ない。有てい果が多数混在する。
著者
山口 正己 土師 岳 西村 幸一 中村 ゆり 八重垣 英明 三宅 正則 京谷 英壽 吉田 雅夫 小園 照雄 木原 武士 鈴木 勝征 福田 博之
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
雑誌
果樹研究所研究報告 (ISSN:13473549)
巻号頁・発行日
no.5, pp.39-49, 2006-03

1. 'なつおとめ'は,'あかつき'と'川中島白桃'の出荷の谷間を埋める,果実品質が優れ,大玉のモモ品種育成を目的に,'あかつき'に'よしひめ'を交雑して得られた実生から選抜された中生のモモ新品種である。交雑は果樹試験場千代田圃場(現果樹研究所千代田圃場)において1984年に行われ,1987年春に育種圃に定植,同年7月に初結実した。1990年に第1次選抜され,1992年よりモモ第7回系統適応性検定試験に供試され,1999年8月に命名登録,2002年7月に品種登録された。2. 樹勢はやや強,樹姿はやや直立する。新梢の発生は多く,花芽の着生も良好で,花は単弁普通咲きで花粉を有し,結実は極めて良好である。開花期は'あかつき'とほぼ同時期である。収穫期は'あかつき'の1週間程度後になる中生品種である。3. 果実は扁円形で果実重は230g程度であるが,場所によっては350gを超える果実も収穫されており大玉果が期待できる。果皮の地色は白,着色は多く,玉揃いも良好で外観は優れる。果肉は白色で,溶質,粗密は密~やや密,果汁多く,糖度は14%余り,酸は少なく食味は良好である。4. せん孔細菌病,灰星病の発生が見られるが慣行防除により特に大きな問題とはならない。過熟になると果肉内に水浸状の異常,いわゆるみつ症状が現れることがあるので注意が必要である。5. モモの全栽培地域で栽培が可能である。特に中生モモの出荷時期の平準化に有効であり,普及が期待される。
著者
鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
no.10, pp.19-91, 2010 (Released:2011-07-13)

本研究は新規にギンナンを導入する際の参考に資するため、ギンナン実生個体の調査並びに既存の日本の品種、中国品種等について、詳細な果実特性調査を行ったものである。樹齢およそ20年生と思われるつくば市内の街路樹545本の調査から、開花結実していた雌樹個体は約28%であった。その果実は既存品種と比較すると小果であり、殻果も小さく、形状は縦長のタイプであった。これらの中から比較的特徴のある44個体を果樹研究所内の千代田圃場に高接ぎ保存した。既存品種の‘二東早生’、‘金兵衛’は早熟性で9月と10月との殻果重には差が無く、他の品種では増加するのが認められた。しかし、これら早熟品種は比較的小果であった。今回の調査では‘喜平’が大果であり有望な品種と思われた。‘金兵衛’は殻果表面に「アバタ」が多く発現する品種であり、数多くの実生個体の中にもこれほど「アバタ」が出る個体はなかった。胚乳上の内種皮の色は上位部と下位部に区分され、その比は品種によって異なり‘金兵衛’、‘栄神’では上位部のほうが長く、これは実生個体にも多く出現する特徴であった。中国6品種の殻果は全て日本の品種より縦長の形をしており、内種皮の上下比では下部が顕著に長いという特徴があった。なお、‘大馬鈴’は5年生の幼木で開花結実し、早期結実性のある品種と思われた。果肉部の屈折計示度は早熟品種が早い時期から高く、10月には全ての品種で20%を越えており、果実の着色と合わせて成熟度を測る指標となりうるものと思われた。また、樹齢が古いと成熟が早まり、若くて樹勢が強いと大果になるが、殻果歩留りは劣るようであった。
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 高田 教臣 平林 利郎 佐藤 明彦 正田 守幸 寺井 理治 西端 豊英 樫村 芳記 阿部 和幸 西尾 聡悟 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
雑誌
果樹研究所研究報告 (ISSN:13473549)
巻号頁・発行日
no.19, pp.1-9, 2015-03

1. '美玖里'は,1995年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において'石鎚'に'秋峰'を交雑し,育成した実生から選抜した果実品質が優れる中~晩生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し,2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。2009年2月の平成20年度果樹系統適応性・特性検定試験成績検討会(落葉果樹)で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ,2011年3月9日に,登録番号20474号として種苗法に基づき品種登録された。2. 樹勢は強く,樹姿は直立で,枝梢の発生量は多い。雌花の開花期は'筑波'より遅く'石鎚'とほぼ同時期,果実の成熟期は育成地では9月下旬~10月上旬で'筑波'と'石鎚'の間である。若木での収量は'筑波'や'石鎚'と同程度である。双子果,裂果,腐敗果の発生は栽培上問題とならない程度に少ない。環境条件により,虫害果が多発する場合がある。3. 果実は円形で,褐色を呈する。系統適応性検定試験における平均果重は26g程度で'筑波'や'石鎚'と同程度以上で,揃いは良好である。果実の比重は'筑波'や'石鎚'より高く,肉質,甘味,香気ともに'筑波'と同程度以上で'石鎚'より優れ,食味は良好である。渋皮剥皮は困難である。果肉は黄色で,'筑波','石鎚'と比較して明度が高く,黄色味が強い。4. 関東地方以西の産地で特性を発揮できるが,東北地方での適応性は不明である。既存の主要品種と比較して果肉色や食味の点で優れており,ゆで栗等家庭用消費の他,付加価値の高い加工原料としての利用が期待される。
著者
齋藤 寿広 壽 和夫 澤村 豊 阿部 和幸 寺井 理治 正田 守幸 高田 教臣 佐藤 義彦 平林 利郎 佐藤 明彦 西端 豊英 樫村 芳記 小園 照雄 福田 博之 木原 武士 鈴木 勝征 内田 誠
出版者
農業技術研究機構果樹研究所
巻号頁・発行日
pp.1-9, 2009 (Released:2011-05-24)

1. ‘ぽろたん’は、1991年に農林水産省果樹試験場(現農業・食品産業技術総合研究機構果樹研究所)において‘550-40’に‘丹沢’を交雑し、育成した実生から選抜した渋皮剥皮性が優れる早生のニホングリ品種である。1999年に一次選抜し、2000年からクリ第6回系統適応性検定試験に供試した。その結果2006年10月4日付で‘ぽろたん’と命名され、‘くり農林8号’として登録、公表された。2007年10月22日付けで種苗法に基づき第15658号として品種登録された。2. 樹勢はやや強く、樹姿はやや直立である。枝梢は密に発生し、太く、長い。雌花の着生は多く、結果性はやや多い。果実の成熟期は育成地では9月上~中旬で‘国見’と同時期である。3. きゅう果は扁球形で‘国見’と同程度の大きさで、果実の側果側面の形は帯円三角形、横面は尖円形である。平均果重は30g程度で‘国見’より若干小さいが、‘丹沢’よりやや大きく、揃いは中程度である。双子果の発生はやや多く、裂果の発生は少ない。果実の比重は‘丹沢’や‘国見’より高く、肉質はやや粉質である。果肉は黄色で甘味、香気ともに‘丹沢’や‘国見’より多く、食味は良好である。環境条件により、虫害果が多発する場合がある。蒸しグリでの渋皮剥皮性は易であり、焼きグリにした場合、チュウゴクグリ程度に容易に剥皮出来る。4. 試作を検討した関東地方以西の産地で特性を発揮できるが、東北地方での適応性は不明である。ニホングリで唯一渋皮剥皮性が優れる品種であり、家庭での消費増大はもとよりニホングリの新規加工需要の創出等多方面での利用が期待される。