著者
工藤 慎太郎 濱島 一樹 兼岩 淳平 小松 真一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.CcOF1067, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】足部横アーチ(横アーチ)の低下は,中足骨頭部痛や外反母趾の発生機序と関係するため,その形態を捉えることは,臨床上重要である.横アーチの測定方法として,第1~5中足骨頭の距離を足長で除した横アーチ長率(TAL)が知られ,その妥当性が報告されている.しかし,その再現性については検討されていない.また,TALは静止立位で測定する.臨床上,静止立位において,横アーチが保持できているが,歩行や走行などの動的場面において,横アーチが保持できず,中足骨頭部痛などを惹起している例も存在する.つまり,従来のTALは横アーチの形態を捉えることができるが,その保持機能を捉えられない.我々は先行研究において,従来のTALに加えて,下腿最大前傾位(前傾位)でTALを測定し,その差から横アーチの保持機能を捉える方法を報告した.本研究では,従来のTALと共に,前傾位でのTALの測定方法の再現性を検討することを目的とした.【方法】対象は健常成人8名(男女各4名,平均年齢19.3±2.4歳)の右足とした.検者は経験年数15年目と2年目の理学療法士(検者A・B)および理学療法士養成校に就学中の学生(検者C)の3名とした.各検者には実験実施1週間前に測定方法を告知した.各被験者に対し,1施行で静止立位と前傾位でのTALを3回測定し,中央値を採用した.測定にはデジタルノギス(測定誤差±0.03mm)を用いた.1施行ごとに1時間休息し,3施行繰り返した.統計学的手法にはPASWstatistics18を用いて,級内相関係数(ICC)と標準誤差(SEM)を求めた.なお,検者内信頼性にはICC(1,k),検者間信頼性にはICC(2,k),測定結果の解釈にはShroutらの分類を用いた.【説明と同意】被験者には,本研究の趣旨を紙面と口頭で説明し,同意を得た.【結果】検者AのICC(1,k)は静止立位で0.82(SEM:0.67),前傾位で0.92(SEM:0.36)であった.検者BのICC(1,k)は静止立位で0.80(SEM:0.02),前傾位で0.79(SEM:0.02)であった.検者CのICC(1,k)は静止立位で0.75(SEM:0.03),前傾位で0.98(SEM:0.04)であった.静止立位でのICC(2,k)は0.75(SEM:0.13),前傾位でのICC(2,k)は0.81(SEM:0.03)であった.【考察】歩行や走行において,立脚終期で,前足部に荷重が加わると,横アーチは低下する.中足骨頭部痛や外反母趾などの前足部の障害において,横アーチの過剰な低下を認めることがあるため,横アーチの形態を捉えることは臨床上重要になる.本研究の結果から,従来のTALは3名の検者とも,Shroutらの分類でgood以上と,高い検者内・検者間信頼性を示している.よって,横アーチの測定方法としての従来のTALの信頼性は高いと考えられた.諸家により,内側縦アーチの測定方法であるアーチ高率や踵骨角,第一中足骨底屈角の再現性は,触診の難易度と密接な関係があることが報告されている.そのため,従来のTALで高い再現性が得られた原因は,中足骨頭の側面に軟部組織が比較的少なく,触診が容易であるためと考えられた.臨床においては,横アーチの形態を捉える方法として,レントゲン上での第1,5中足骨角の測定やフットプリントでの評価などが用いられることが多い.しかし,レントゲンでの評価は,理学療法の臨床場面で簡便に測定することは不可能である.またフットプリント上の評価は信頼性に関して検討がされているが,報告者によって見解が異なっている.すなわち,従来のTALは,他の測定方法と比較して,簡便かつ定量的な測定方法と考えられる.一方,臨床において静止立位では,横アーチが保持できている例でも,歩行動作などの場面では,横アーチが過剰に低下する例も経験する.我々は先行研究において,動作場面での横アーチの保持機能を測定するには,従来のTALでは不十分であり,前傾位でのTALと比較することが必要なことを報告した.本研究の結果から,従来の方法と同様に,前傾位でのTALも,高い検者内・検者間信頼性を示している.そのため,前傾位でのTALの測定も臨床において簡便かつ定量的な測定方法であり,両肢位でのTALの測定は,横アーチの形態と保持機能を評価し得る信頼性の高い測定方法と考えられた.【理学療法学研究としての意義】本研究の結果から,従来のTALと前傾位でのTALの測定方法の信頼性が証明され,横アーチ保持機能の簡便かつ定量的な測定が可能になると考えられた.つまり,有痛性足部障害の疼痛発生機序を捉える場合や,足底挿板療法を処方する際に,同方法は客観的な測定方法として有効になると考えられる.
著者
斎藤 広志 小尾 尚貴 山田 祐子 竹内 大樹 兼岩 淳平 多田 智顕
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第38回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.F-025, 2020 (Released:2020-01-01)

【はじめに】超音波検査は体表から触知できない深層を可視化でき、患者へ与える負担が少ない検査法である。 今回肩挙上時に疼痛を訴える肩関節周囲炎患者に対して、理学療法評価に超音波診断装置を用いて機能評価、治療介入を行った症例を経験したので報告する。【症例】40代女性。2018年12月更衣動作で受傷し、右肩関節周囲炎と診断。【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に沿い発表目的を説明し同意を得た。【初期評価】右肩ROM自動屈曲100°他動屈曲160°外転90°であった。整形外科的テストはNeer Test陽性。上腕骨頭の超音波動態評価で、肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。Horizontal Flexion Test 陰性であった。肩甲胸郭機能はElbow Push Test陽性。 MMTは肩甲骨外転・上方回旋3肩甲骨下制・内転3であった。JOAスコア67点であった。【理学療法経過】超音波動態評価で肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。また、結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。評価上から肩甲胸郭関節機能障害を認めた。以上評価結果から肩甲胸郭関節機能障害から肩峰下インピンジメントが生じていると判断して、肩甲胸郭関節機能に対し理学療法を実施した。理学療法プログラムは前鋸筋トレーニング、小胸筋ストレッチ、側臥位で肩関節外転運動を実施した。 4週間理学療法を実施し、右肩ROM自動屈曲175°外転170°に改善した。Neer Test陰性、超音波動態評価の肩関節外転時の肩峰と大結節の衝突も消失した。MMTは全項目で改善を認めた。肩挙上時痛消失し、JOAスコア97点と改善した。【考察】超音波動態評価から上腕骨頭の動態を可視化することで、肩甲胸郭機能に対しての治療を立案でき、疼痛と可動域が改善したと考える。
著者
斎藤 広志 小尾 尚貴 山田 祐子 竹内 大樹 兼岩 淳平 多田 智顕
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.F-25, 2020

<p>【はじめに】超音波検査は体表から触知できない深層を可視化でき、患者へ与える負担が少ない検査法である。 今回肩挙上時に疼痛を訴える肩関節周囲炎患者に対して、理学療法評価に超音波診断装置を用いて機能評価、治療介入を行った症例を経験したので報告する。</p><p>【症例】40代女性。2018年12月更衣動作で受傷し、右肩関節周囲炎と診断。</p><p>【倫理的配慮】ヘルシンキ宣言に沿い発表目的を説明し同意を得た。</p><p>【初期評価】右肩ROM自動屈曲100°他動屈曲160°外転90°であった。整形外科的テストはNeer Test陽性。上腕骨頭の超音波動態評価で、肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。Horizontal Flexion Test 陰性であった。肩甲胸郭機能はElbow Push Test陽性。 MMTは肩甲骨外転・上方回旋3肩甲骨下制・内転3であった。JOAスコア67点であった。</p><p>【理学療法経過】超音波動態評価で肩関節外転時に肩峰と大結節の衝突を認めた。また、結帯肢位内旋動作の上腕骨頭前方移動量は左右差を認めなかった。評価上から肩甲胸郭関節機能障害を認めた。以上評価結果から肩甲胸郭関節機能障害から肩峰下インピンジメントが生じていると判断して、肩甲胸郭関節機能に対し理学療法を実施した。理学療法プログラムは前鋸筋トレーニング、小胸筋ストレッチ、側臥位で肩関節外転運動を実施した。 4週間理学療法を実施し、右肩ROM自動屈曲175°外転170°に改善した。Neer Test陰性、超音波動態評価の肩関節外転時の肩峰と大結節の衝突も消失した。MMTは全項目で改善を認めた。肩挙上時痛消失し、JOAスコア97点と改善した。</p><p>【考察】超音波動態評価から上腕骨頭の動態を可視化することで、肩甲胸郭機能に対しての治療を立案でき、疼痛と可動域が改善したと考える。</p>
著者
濱島 一樹 兼岩 淳平 工藤 慎太郎
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.177-180, 2012 (Released:2012-06-13)
参考文献数
18
被引用文献数
2

〔目的〕静止立位(立位)と,下腿最大前傾位(前傾位)の内側縦アーチ(MLA)の測定の差から,動作時におけるMLAの形態の変化を求める方法の再現性を検討すること.〔対象〕下肢疾患の既往のない健常成人8名8足(男女各4名)とした.〔方法〕測定項目は,アーチ高率(AR)と踵部角(CA)とした.また,測定肢位は立位と前傾位とし,各項目の信頼性を検討した.〔結果〕ARは両肢位共に高い再現性を示した.一方,CAは両肢位ともに再現性は低値を示した.しかし,測定経験や触診技術により,再現性が改善し得ることが示唆された.〔結語〕同方法は,臨床での使用に十分な再現性が得られることが示唆されたと考える.