著者
内田 さえ 志村 まゆら 佐藤 優子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.555-566, 1999-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
48

人が生を受けて約10ケ月を過ごす子宮とはどの様な調節を受けているのだろうか。視床下部から分泌されるオキシトシンが子宮を収縮させ、分娩が起こる事実を始め、ホルモンによる子宮調節については良く知られている。一方子宮の神経性調節についての教科書への記載はほとんどなされて来ていない。近年ラットを用いた子宮の神経性調節に関する研究が大きく進んできた。これらの研究により、子宮の平滑筋や子宮の血流が自律神経の働きによって大きく変化することや子宮に関する情報が常時求心性神経を通って脳に伝えられる事実、さらに皮膚に加えた体性感覚刺激は自律神経を介して子宮の動きや血流を調節することができることなどが明らかになってきた。これらの研究成果は、鍼による産婦人科疾患への治療効果をある程度まで説明しうるものと思われる。
著者
内田 さえ 渡邊 一平 矢野 忠 佐藤 優子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-51, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
66

脳機能および中枢神経疾患に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、当該領域のレビューを行った。基礎研究における動物実験のレビューでは、麻酔ラットへの鍼刺激による大脳皮質および海馬の血流量に及ぼす影響とその機序を中心に紹介した。ヒトを対象とした基礎研究のレビューでは、fMRI、脳磁気図、脳波 (事象関連電位) などを指標とした鍼の効果に関する知見が総括された。また、中枢神経疾患に対する鍼灸の効果に関するレビューについては、脳血管障害後後遺症に対する鍼治療の有効性について総括すると共に、痙性抑制あるいは廃用症候群の改善によるQOL向上の可能性についても考察した。
著者
内田 さえ
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.83-87, 2022 (Released:2022-04-23)
参考文献数
24

鍼刺激が大脳皮質血流に及ぼす効果とその反応へのコリン作動性血管拡張系の関与について,とくに前肢刺激と耳介刺激の比較や加齢変化に着目した基礎研究を紹介する.麻酔下の成熟ラットにおいて,前肢足蹠の鍼刺激は血圧上昇を伴って大脳皮質血流を増加させる.一方,耳介の鍼刺激は血圧に影響することなく皮質血流を増加させる.いずれも求心路は刺激部位に分布する体性求心性神経である.前肢刺激による血流増加は,大脳皮質アセチルコリン(ACh)放出増加を伴い,脳内ACh受容体(ムスカリンとニコチン受容体)を介することから,頭蓋内コリン作動性血管拡張系の関与が示唆される.老齢ラットでは,ニコチン受容体(α4β2型)機能が低下するもののムスカリン受容体機能は維持され,前肢鍼刺激による大脳皮質血流増加反応は保たれる.血圧への影響が少ない耳介刺激は臨床適用しやすいと考えられる.