著者
木村 宏 佐藤 優子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.555-563, 2017-11-01 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15

生物の遺伝情報はゲノムDNAに刻まれている。ゲノムDNAからいかにして必要な情報を必要に応じて取り出すことができるのか,という問題を解明できれば,生命現象の理解に大きく近づくことができる。遺伝子の発現制御には,DNAに直接結合する転写因子が必須であるが,ヒストンの翻訳後修飾を介したエピジェネティクス制御や細胞核内でのゲノム高次構造なども重要な役割を果たすことがわかってきた。そこで,最近,細胞核を包括的かつ時空間的に理解する「ヌクレオーム(Nucleome)」研究が注目を集めている。ヌクレオーム研究という視点に立ち,顕微鏡解析,ゲノム解析,情報・数理解析を融合させることで,ゲノムの発現制御機構を理解できると考えられている。ヌクレオーム研究は米国ですでに予算措置されている他,ヨーロッパでの動きや国際コンソーシアム発足に向けた活動も進んでいる。わが国でもヌクレオーム研究を推進することが生命科学の発展に重要であると考えられる。
著者
内田 さえ 志村 まゆら 佐藤 優子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.555-566, 1999-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
48

人が生を受けて約10ケ月を過ごす子宮とはどの様な調節を受けているのだろうか。視床下部から分泌されるオキシトシンが子宮を収縮させ、分娩が起こる事実を始め、ホルモンによる子宮調節については良く知られている。一方子宮の神経性調節についての教科書への記載はほとんどなされて来ていない。近年ラットを用いた子宮の神経性調節に関する研究が大きく進んできた。これらの研究により、子宮の平滑筋や子宮の血流が自律神経の働きによって大きく変化することや子宮に関する情報が常時求心性神経を通って脳に伝えられる事実、さらに皮膚に加えた体性感覚刺激は自律神経を介して子宮の動きや血流を調節することができることなどが明らかになってきた。これらの研究成果は、鍼による産婦人科疾患への治療効果をある程度まで説明しうるものと思われる。
著者
内田 さえ 渡邊 一平 矢野 忠 佐藤 優子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.27-51, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
66

脳機能および中枢神経疾患に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、当該領域のレビューを行った。基礎研究における動物実験のレビューでは、麻酔ラットへの鍼刺激による大脳皮質および海馬の血流量に及ぼす影響とその機序を中心に紹介した。ヒトを対象とした基礎研究のレビューでは、fMRI、脳磁気図、脳波 (事象関連電位) などを指標とした鍼の効果に関する知見が総括された。また、中枢神経疾患に対する鍼灸の効果に関するレビューについては、脳血管障害後後遺症に対する鍼治療の有効性について総括すると共に、痙性抑制あるいは廃用症候群の改善によるQOL向上の可能性についても考察した。
著者
小野寺 康 佐藤 優子 佐藤 魁星 渡部 誠也 佐々木 信也
出版者
一般社団法人 日本トライボロジー学会
雑誌
トライボロジスト (ISSN:09151168)
巻号頁・発行日
pp.20-00011, (Released:2020-12-02)
参考文献数
21

Friction reduction by engine oil under low temperature as well as high temperature conditions are required because of the increasing number of hybrid vehicles where bulk oil temperature is low. Friction modifier (FM) technology to realize it is required. Friction performance of MoDTC, which works well at high temperature, used with adsorption type friction modifiers, which work well at low temperature, was investigated. Low molecular type, glycerol monooleate (GMO) inhibited friction reduction performance of MoDTC while polymer type FM showed little inhibition. Surface analysis indicated that the reaction film by MoDTC was not existed when the GMO was used together while it existed when it is used with polymer FM (PFM). The cause of the difference was studied by their adsorption performance examined by quartz crystal microbalance. GMO showed high adsorption density, while PFM showed low adsorption density compared to that of MoDTC. The result indicated that GMO competitively adsorbed on the surface, inhibiting the reaction film formation by MoDTC while polymer FM does not. The study indicated that use of the polymer FM with MoDTC is one of the solutions of FM design that works under both high and low temperature.
著者
小野寺 康 佐藤 優子 佐藤 魁星 渡部 誠也 佐々木 信也
出版者
一般社団法人 日本トライボロジー学会
雑誌
トライボロジスト (ISSN:09151168)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.77-85, 2021-01-15 (Released:2021-01-15)
参考文献数
21

Friction reduction by engine oil under low temperature as well as high temperature conditions are required because of the increasing number of hybrid vehicles where bulk oil temperature is low. Friction modifier (FM) technology to realize it is required. Friction performance of MoDTC, which works well at high temperature, used with adsorption type friction modifiers, which work well at low temperature, was investigated. Low molecular type, glycerol monooleate (GMO) inhibited friction reduction performance of MoDTC while polymer type FM showed little inhibition. Surface analysis indicated that the reaction film by MoDTC was not existed when the GMO was used together while it existed when it is used with polymer FM (PFM). The cause of the difference was studied by their adsorption performance examined by quartz crystal microbalance. GMO showed high adsorption density, while PFM showed low adsorption density compared to that of MoDTC. The result indicated that GMO competitively adsorbed on the surface, inhibiting the reaction film formation by MoDTC while polymer FM does not. The study indicated that use of the polymer FM with MoDTC is one of the solutions of FM design that works under both high and low temperature.
著者
小谷 スミ子 佐藤 優子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成16年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.66, 2004 (Released:2004-09-09)

目的 白飯は保存によりデンプンが老化し食味は硬くボソボソする。特にアミロース含量の高い米は老化しやすい。これを防ぐため柑橘果汁、食酢などを添加して炊飯する方法が考案されている。これらの飯に含まれるレジスタントスターチ(以下RSと略)を測定すると同時にRS生成に及ぼすアミロース含量と保存の影響について検討した。方法 1.試料:平成15年度新潟産コシヒカリ、平成15年度滋賀産日本晴、平成12年度タイ産タイ米、2.試料の調製:白飯は米に重量の1.5倍の水を加え、酢飯は米と炊き水合計重量の6%の食酢を炊き水に添加し、全自動炊飯器JNL-T551 Wで炊飯した。3.試料の保存:炊き上がり後、あらかじめ洗って水を切っておいた飯台に移し、ぬれ布巾をかけ放冷した。その後およそ100gずつ秤量し、市販の食品包装用ラップフィルムに包み、室温(23℃)および冷蔵(4℃)で2日間保存した。4.RSの定量:Goni等(1996)の方法を一部改変して測定した。5.アミロースの定量:Mestres等(1996)のDSCを用いた方法で測定した。結果 1.食酢を加えて炊飯することでいずれの米も粘りは増した。2.コシヒカリ、日本晴、タイ米を炊飯した白飯のRS量はそれぞれ0.10±0.02%、0.14±0.04%、0.77±0.02%であり、酢飯のRS量はそれぞれ0.11±0.03%、0.17±0.02%、0.50±0.08%であった。食酢添加によりタイ米のRS量は著しく減少した。3.すべての飯は保存によりRS量が増加し、酢飯のRS増加量は白飯より多かった。4.タイ米の酢飯は、保存により白飯と同程度のRS量になった。
著者
小池 朋孝 上田 康久 横山 美佐子 辺土名 隆 芝原 美由紀 川端 良治 岩松 秀樹 佐藤 優子 遠原 真一 安達 まりえ 広瀬 真純
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2002, pp.369-369, 2003

はじめに<BR>呼吸理学療法(CPT)において、特に肺理学療法と呼ばれる用手的排痰手技は、痰の喀出、1回換気量の増大など、その場での効果の報告は良く見受けることができる。しかし、急性期における介入がどの程度の効果をもたらすかという報告は、特に小児急性期には見当たらない。当院では、小児呼吸器疾患重症例にCPTの適応、不適応を検討し、必要な場合にCPTを展開している。今回、小児急性期呼吸疾患により重度呼吸不全を呈した症例に対し、第1病日から医師、看護師、理学療法士から構成される小児CPTチームに参入し、CPTの適応、不適応を検討し、必要な場合にCPTを展開した症例を数例経験した。小児集中治療室(PICU)入室日数、入院日数、再悪化、再入院、人工呼吸器管理中の肺機能の肺コンプライアンスの指標として人工呼吸器の最高吸気圧(PIP)、酸素化の指標としてPaO<SUB>2</SUB>/Fi O<SUB>2</SUB>(P/F比)の推移を数値化し、一定の傾向が見られたので考察を交え報告する。<BR>症例1:1歳男児 クループ 肺炎 二次合併症として気胸を呈する<BR>症例2:6歳女児 ARDS<BR>症例3 4歳女児 ARDS<BR> 気管支喘息以上の3症例に対し可能な限り、早期から参入し、医師、看護師との相互の情報交換によりCPTの施行・非施行を判断し、必要な場合には適宜CPTを行うこととした。抜管後も、吸入時の呼吸介助、用手的排痰法を行い、一般病棟入院中家族指導、退院後外来フォローを行った。<BR>結果<BR>PICU入室日数、入院日数に関しては、病態の相違もあり一定の傾向は見られなかった。再度悪化し、一般病棟から、PICU管理となった症例や、人工呼吸器PIPを上げなければならない症例は認めなかった。P/Fについては悪化の傾向は見られなかった。退院後数ヶ月以内の再入院患者はいない。また、脳血管障害などの二次的合併症を生じた症例はいなかった。<BR>考察<BR>小児呼吸器疾患急性期の呼吸管理において、理学療法士が早期から介入することによる悪影響は示唆されなかった。また、医師、看護師との連帯を密にし、病態理解に勤め、適切な手技を選択することにより、肺二次合併症の予防、治療、肺のコンディションの維持につながると思われた。病態の理解により、CPTが急性期呼吸管理に有用であると示唆され、状態の換気力学的な解釈などの観点から理学療法士の介入に意義があると思われる。