著者
冨田 賢一 北小路 博司 本城 久司 中尾 昌宏
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.116-124, 2009 (Released:2009-09-15)
参考文献数
19

【目的】夜間頻尿に対する温灸治療の有効性を評価するため、 対照として温度が十分に上昇しないsham温灸を用いたランダム化比較試験を行った。 【方法】夜間頻尿を有し薬物療法に抵抗性を示す36名の患者を対象とし、 温灸群 (n=20) とsham温灸群 (n=16) の2群にランダムに割り付けた。 治療は、 患者自身が自宅で下腹部の中極穴に1週間毎日3壮施灸を行った。 温灸群とsham温灸群で治療前1週間と治療中1週間の平均夜間排尿回数の変化について比較検討した。 【結果】1日あたりの平均夜間排尿回数の推移は、 温灸群では治療前と比較すると有意な減少がみられた。 sham温灸群では治療による変化に有意差はみられなかった。 【結語】中極穴への温熱刺激が1週間の平均夜間睡眠中排尿回数を減少させた可能性が示唆された。 中極穴への温灸治療は夜間頻尿に対して有効な治療方法の一つになり得ると思われた。
著者
冨田 賢一 渡邊 一平
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.819-828, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
7

【目的】生姜灸は艾と皮膚の間に介在物として生姜を置く隔物灸で、 局所の湿熱による温和な刺激効果が期待できる灸法である。 今回、 我々は艾重量を固定し、 生姜の厚さを変化させることで生じる温熱刺激特性を温度センサーを用い調査した。 また厚さの異なる生姜灸を被験者に行い、 温熱刺激に対するアンケート結果と施灸時の最高温度の関係について調査した。 【方法】厚さ3mmのベニア板上に温度センサーを設置した。 生姜は一辺2cmの正方形に切り、 厚さは3mm、 5mm、 7mmの3種類とした。 各厚さにスライスした生姜の上で、 重量200mg、 高さ2cm、 直径2cmの円錐形に整えた艾シュを燃焼させ、 経時的温度変化を測定した。 また人体に対する温度感覚の調査として、 それぞれの厚さの生姜灸を前腕内側部に行う際、 生姜灸と皮膚との間に温度センサーを設置して、 施灸時の最高温度を調査し、 施灸後、 生姜灸についての温熱感覚と快適感覚に関するアンケートを行った。 【結果】ベニア板上における温度測定の結果、 隔物である生姜が厚いほど、 最高温度は低くなり、 最高温度到達時間も遅くなることがわかった。 また、 人体への施灸の結果、 温熱感覚と施灸時最高温度の間に相関関係が認められ、 生姜の厚さが薄いほど温熱感覚が強い傾向が認められた。 快適感覚については、 やや心地良い、 心地良い、 非常に心地良いと回答した被験者は、 3mmは10例中5例、 5mmは12例中9例、 7mmは9例中5例に認められた。 【考察と結語】生姜灸を行う際の隔物の厚さは刺激量を決定する上で、 重要な要素であると考えられた。 快適感覚については、 生姜灸の温熱刺激は心地よさを与えやすい刺激であると考えられたが、 最も薄い厚さ3mmの生姜灸は不快感を訴えた被験者が10例中5例認められた。 艾重量200mgの生姜灸を行う際、 患者に不快感を与えないよう施灸する場合、 生姜の厚さは5mm以上が望ましい事が示唆された。