著者
松岡 憲二 北村 清一郎 金田 正徳 堺 章 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.195-202, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
15

解剖実習用遺体において, 〓門, 天柱, 風池, 完骨, 翳風の5経穴に針を深刺し, 以後, 針を抜くことなく表層より解剖をすすめ, 刺入針と後頸部の構造との関連を調べた。〓門, 天柱, 風池の各穴への刺入針は, いずれも後環椎後頭膜や脳硬膜などを貫通し, 最終は延髄に達していた。刺入点より脳硬膜までの深さは頸周囲39.1cmの遺体でそれぞれ50mm, 51mm, 49mmであった。また, 風池穴の深部約40mm付近には椎骨動脈, 完骨穴の部では後頭動脈, 翳風穴の部では外頸動脈や顎動脈が浅層の部を近接走行しており, 刺針の際, 手技や深さに充分な注意を払うことが望まれる。
著者
井上 基浩 勝見 泰和 川喜田 健司 岡田 薫 中村 辰三 松本 勅
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.130-140, 1998-06-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

ラットの腰部への鍼刺激による坐骨神経の血流変化についてレーザードップラー法を用いて検討した。また、その機序を調べる目的で坐骨神経の電気刺激による坐骨神経血流の反応と、薬物投与の影響についても併せて検討した。その結果、鍼刺激時には増減さまざまな変化を認め、約半数において血圧の変化に同期した反応であった。しかし、半数においては血圧の変化と必ずしも一致しない反応を認めた。神経の電気刺激は測定側の同側と反対側で行ったが、同側では血圧の変化はみられず血流のみが増加した。この増加反応はアトロピンの投与によりやや減少した。反対側の刺激では血圧の変化と必ずしも一致しない反応を認めた。これらの結果から、鍼の刺激部位や方法によっては、血圧の変化を伴わない坐骨神経に対する血管拡張性の反応が得られる可能性が示唆された。
著者
大山 良樹 佐々木 和郎 中村 辰三
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.567-574, 1999-12-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
19

The effects of acupuncture treatment were investigated in 200 patients (99 males and 101 females, average age 16.1±0.2 (SE.)) who complained of reduced visual acuity, including juvenile myopia (age 13.25).Acupuncture treatment involved leaving the needle in place for 15 min, after inserting to a depth of 10-5 mm from the skin surface.The vital points Taiyo (Ex-HN5), Fuchi (GB-20), Shokyu (ST-1) and Goukoku (LI-4) were the basic points used for acupuncture therapy with Ganen (GB-4), Sanchiku (BL-2), Zui (ST-8) or Kyokuchi (LI-11) as supplemental points depending on individual symptoms. These acupuncture treatments improved the mean acuity by 0.33 in the right eye and 0.31 in the left.Analysis of these results indicated that acupuncture treatment caused significant improvement of visual acuity (P<0.01). Therefore, acupuncture therapy was considered to be an effective treatment that improved regulation of the ciliary muscle and the pupillary myosis system.
著者
坂井 友実 津谷 喜一郎 津嘉山 洋 中村 辰三 池内 隆治 川本 正純 粕谷 大智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.175-184, 2001-05-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
2 2

【背景】本邦での鍼に関するランダム化比較試験の試みは数少なく、対照群に鍼治療以外の治療法をおいた研究はほとんどない。本邦において、医療制度の中に鍼灸が位置付いてゆくためには、質の高い臨床研究の結果が求められている。今回の臨床試験はこのような状況を踏まえ鍼を受療することの多い「腰痛症」を対象として行われた。【目的】「腰痛症」に対する低周波鍼通電療法の有効性および安全性を経皮的電気刺激法を対照としたランダム化比較試験により検討する。本試験は1995年9月から1996年6月にかけて瀬踏み的になされた第1期の研究を引き継ぐ第2期に相当する探索的なもので, 第3期の確認的な試験へ向けてのデータ収集の意味を持つ。【対象および方法】下肢症状がなく、発症から2週間以上経過した腰痛患者を対象に低周波鍼通電療法 (A群) と経皮的電気刺激法 (T群) の多施設ランダム化比較試験とした。観察期間は2週間、治療回数は5回とした。通電は各群とも1 Hzで15分間行った。【結果】目標症例数の80例に対して71例の応募者があり、68例が封筒法によりA群とT群に割付けられ、最終的にはA群の31例とT群の33例が解析の対象となった。背景因子として、年齢、罹病期間などには両群間に有意差はみられなかったが、性別、鍼治療経験の有無、経皮的電気刺激法の経験の有無には有意差がみられた。疼痛スケール (以下「VAS」とする) は最終時でA群は5.3±3.0に、T群は5.9±3.4に軽減した。また、主要評価項目であるVASをもとにした痛み改善度の効果判定では、A群は13/31例 (41.9%) に改善がみられ、T群では10/33例 (30.3%) に改善がみられた。さらに、副次的評価項目である日本整形外科学会腰痛治療成績判定基準 (以下「JOAスコア」とする) は初診時14.5±3.0点、T群は15.0±2.8点であったが、最終時では15.9±2.0点と15.8±2.6点であった。しかし、A群とT群の両群問では、VAS及びVASをもとにした痛み改善度JOAスコアにおいて統計学的な有意差はみられなかった。【考察】プロトコールに沿ってデータの収集が行われたことは中央委員会の設立によるところが大きいと考える。目標症例数に達しなかったことは、臨床試験に対する患者の理解が低いことや参加施設のおかれている立地条件が考えられるが、患者募集の仕方にも工夫をしてみる必要があると思われる。また、鍼の効果を立証していくためには介入の方法や評価項目などについて検討していく必要があると思われた。【結論】腰痛症に対するA群とT群との間には有効性の差はみられなかった。第3期へ向けての基礎的データが収集された。
著者
中村 辰三 篠原 昭二 岡本 敏男 合田 光男
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.138-144, 1983-11-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
11

眼の調節機能と経穴との関係や鍼治療による視力改善について調べることを目的とした。〔方法〕経穴への鍼刺入の前後で調節時間の変化を, Accommodo-poly-recorder で測定した。この結果から有効穴と非有効穴を選び, 視力改善に対する差異について, 10回刺鍼による前後の視力変化を検討した。〔結果〕(1) 風池・太陽両穴共に術前の平均値に比し, 術後は0.06上昇し, Ggl. Ciliare 刺鍼では0.11上昇した。(2) Ggl. Ciliare 刺鍼 (1981年) では, 無眼鏡群で, 視力が0.4上昇し, 有眼鏡群で0.15上昇した。〔結論〕視力改善について鍼治療が有効であり, 視力の悪い者ほど改善度も低く, 軽度のものほど改善度が大きく, 早期の鍼治療により良好な結果が得られる。
著者
縄田 隆生 中村 辰三 小田原 良誠 篠原 昭二 池内 隆治 北出 利勝 南川 正純 兵頭 正義
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
日本鍼灸治療学会誌 (ISSN:05461367)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.105-112, 1981-03-15 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8

We previously reported on needle damage to needles sterilized 50 times. This time we increased the number of sterilizations to 100 times and investigated needle damage. damage.Sterilization was performed using a small high pressure steam sterilizer at a temperature of 126°C for 25 minutes each time.1. Non-gold or silver needles had a tendency to become finer but there was no remarkable weight change noted.2. Resistance to bending tests showed that Chinese needles become more difficult to break.3. Elasticity tests showed that non-gold needles become easier to restore to their original state.4. Insertion tests showed that some needles, especially Chinese needles and stainless steel No. 3 needles, become more difficult to insert smoothly.5. Hardness and sturdiness tests showed a general decrease in both factors with the exception of hard silver No. 3 needles and Chinese needles which become sturdier.
著者
金田 正徳 北村 清一郎 松岡 憲二 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.203-211, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
7

竹之内と濱添の取穴法に基づいて刺入した次〓穴への刺入針と第2後仙骨孔の位置関係, および体表より触知し得る上後腸骨棘や仙骨角を指標とした後仙骨孔の体表投影位置を解剖学的に検討した。得られた結果は次の如くである。1.. 竹之内と濱添の取穴法による次〓穴への刺入針は, 第2後仙骨孔の下方あるいは下外方に集中した。2. 第1~第4後仙骨孔は, 内外方向には後正中線と上後腸骨棘間のほぼ中間に位置した。3. 吻尾方向には, 第1後仙骨孔は上後腸骨棘とほぼ同じ高さに位置し, 第2から第4後仙骨孔は上後腸骨棘と仙骨角間の吻尾方向距離をほぼ4等分する3点に一致した。

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著者
小川 卓良 金井 正博 黒川 胤臣 福田 文彦 真柄 俊一 山口 智 小内 愛 中村 辰三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.693-706, 2010 (Released:2011-01-20)
参考文献数
19

今回が3回目の 「がんと鍼灸」 のパネルディスカッションである。 西洋医学のがん或いはがん患者に対しての攻撃的で深刻な副作用を伴い、 かつ免疫能を減退させる医療が適切か否か多くの医師・識者より疑問視されている現状がある。 それに対し副作用が無く、 QOLを高め、 免疫能を賦活する鍼灸治療はがん患者の予防から緩和ケア・再発防止までのあらゆる場において有用性は高いとの期待があり、 その成果は蓄積されつつある。 第1回で緩和ケアでの有用性を、 第2回では内外の文献調査結果を報告した明治国際医療大学の福田氏は今回がん化学療法による末梢神経障害に対し鍼治療の安全性と有効性について報告した。 防衛医科大学校の黒川氏は大学病院での補完療法としてがん患者の身体・精神症状の改善、 QOLの改善、 副作用の軽減、 術前・術後の障害対策等に鍼治療を行いその有効性について述べた。 埼玉医科大学の小内氏は、 大学病院での併療治療としての鍼治療の有効性と有効性の背景因子に言及された。 森ノ宮医療大学の中村氏は非摘出のがん患者の化学療法の副作用に対し長期に灸治療を行い、 その有効性について報告した。 以上は、 化学療法と放射線療法を併用した状態での鍼灸治療の有効性、 特に副作用の軽減とQOLの改善に鍼灸治療は有効であるという報告であったが、 第1回より一貫して主に術後の再発予防を目的とした西洋医学的治療を一切含まない鍼治療を含む自律神経免疫療法で報告された素問八王子クリニックの真柄氏は、 免疫に関わる種々のサイトカインの増加等による免疫力の改善や、 時に非摘出の進行癌でさえ縮小が可能であること、 今回は特に自身の臨床例における再発率を現代医学のそれと比較して数段再発率が低いことを報告し、 癌の再発予防に自然治癒力に関する研究に、 今迄以上の関心を持つべきであると強調した。 今回は更に今迄以上がんの鍼灸治療の大規模研究が望まれた結果になった。