- 著者
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安原 健允
青山 基圭
出口 吉昭
- 出版者
- 日本甲殻類学会
- 雑誌
- 甲殻類の研究 (ISSN:02873478)
- 巻号頁・発行日
- no.19, pp.79-82, 1990-12-31
- 被引用文献数
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タカアシガニMacrocheira kaempferiの卵を培養して,ゾエア1・2期,メガロッパを経過し稚ガニまでの完全飼育に成功した。1990年3月19日に駿河湾戸田村沖で漁獲したタカアシガニの抱卵雌1個体を静岡県下田市にある日本大学農獣医学部下田臨海実験所の水槽で飼育し,1990年5月27日にこのカニの腹肢から卵を採取し,腰高シャレー(90×72mm)に400mlの海水を入れ水温15℃で培養した。ゾエア1期は8月15日から18日の間に孵化した。ゾエア2期には8月25日から9月2日の間に,また,最初のメガロッパは9月7日にできた。メガロッパが脱皮をして10月5日に最初の稚ガニができたが,メガロッパの期間は28日であった。タカアシガニでは,今迄に稚ガニを得ることができなかったので,この稚ガニが最初の記録となる。その後,8個体の稚ガニができたので合計9匹の稚ガニを得た。幼生の飼育条件は,アルテミアのノープリウスを餌料として与えた。割合は飼育海水1ml中,3,6,10個体とした区からそれぞれ2,2,5匹の稚ガニが得られた。また,飼育用シャーレーの底には砂の他に貝殻を砕いて0.5mm程度の厚さに敷いた。海水の塩分量は3.2-3.4%,水温は常に15℃を保ち毎日換水した。稚ガニは,甲幅1.9〜2mm,甲長3〜3,3mmでやや丸形をしており,第2歩脚の差渡しの長さは,甲幅の約5倍程度である。体色は薄い茶褐色,脚に赤褐色の小さな斑点がある。体表全体に剛毛が生えており,餌やアルテミアの死殻などを付けている。額棘は成体のカニと同様に左右の額棘と下に向く一つの額棘とで三角を呈して,タカアシガニの特徴を表わしている。