著者
大路 樹生 千葉 聡 遠藤 一佳 棚部 一成
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(A)
巻号頁・発行日
1993

棘皮動物はカンブリア紀以来現在まで生存する無脊椎動物の一門である。この門を特徴づけるもっとも明確な形質は、成体における五放射相称性であろう。この特徴がいつ頃から、どのように進化し、どのような機能的意義を持っていたのかを、古生物学的、発生学的、また分子生物学的な側面から検討することが本研究の目的である。1.化石記録からの検討 先カンブリア紀後期のTribrachidiumが三放射相称であることから、棘皮動物の対称性は三放射が起源であるとする考えもある。しかしTribrachidiumが棘皮動物であるかは疑わしい。カンブリア紀の棘皮動物にはすでに5本の歩帯溝が存在し、五放射のパターンが生じているのが分かる。この歩帯溝はまず3本に分かれ、そのうち2本がさらに2本に分岐し、計5本になるという、2-1-2のパターンを示している。このパターンはその後の棘皮動物にも広く見られ、本来五放射相称は2-1-2パターンから進化したと考えるのが妥当と思われる。2.発生学的検討 五放射相称が最初に現れるのは、水管系の形成において外側に5つの突起が作られる際であり、このことが五放射相称性の起源を考える上で重要である。今後水管系が発生の際にいかに作られていくかを詳細に観察することにより、先程の三放射と五放射の議論にも有益な示唆が得られるものであろう。3.分子生物学的検討 五放射相称性がどのような遺伝子に制御され作られているのかについては、現在全く分かっていない。生物のかたち作りにおける重要性を考えると、ホメオ遺伝子が五放射相称性の形成になんらかの形で関与していることが疑われる。そこで本研究では、ホメオボックス部分のDNAプライマーを作成し、ウニ類のホメオボックスを、PCR法により増幅することを試みた。その結果、エゾバフンウニにおいて目的とするDNA断片が増幅された。現在ホメオ遺伝子の発現と五放射相称性の形成との関係を調べつつある。
著者
窪田 薫 白井 厚太朗 杉原 奈央子 清家 弘治 棚部 一成 南 雅代 中村 俊夫 Kubota Kaoru Shirai Kotaro Sugihara-Murakami Naoko Seike Koji Tanabe Kazushige Minami Masayo Nakamura Toshio
出版者
名古屋大学宇宙地球環境研究所
雑誌
名古屋大学年代測定研究
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-6, 2018-03-31

Mercenaria stimpsoni (Stimpson's hard clam), found in shallow sandy seafloor of northeast Japan, has been proved to have longevity of more than 100 years, which is the longest record in Japan. The present study established nuclear bomb testing induced bomb-14C records from M. stimpsoni shells, for the first time in high latitude western North Pacific, in which chronology is robustly constrained from a synchronized annual growth width pattern among individuals. The record revealed a strong influence of Tsugaru Warm Current on shallow water of northeast Japan. Furthermore, age-determination of dead shells collected from the seafloor of the study region by utilizing the established bomb-14C records suggests that past tsunamis are one of the most important reasons of death of M. stimpsoni.東北日本(岩手県大槌)から見つかった二枚貝の一種ビノスガイ(Mercenaria stimpsoni)は100歳を超す寿命を持ち,日本産の二枚貝としては最長寿であることが最近明らかになった.本研究では,ビノスガイの殻を用いて,複数個体間で同期した年間成長パターンをもとに厳密な年代モデルを構築し,東北地域としては初となる核実験起源の放射性炭素曲線を復元した.その結果,三陸沖の浅海域においては,津軽暖流(対馬海流を起源とする)の影響が強く見られることがわかった.さらに,得られた放射性炭素曲線を大槌の海底から得られた死殻の死亡年代の推定に用いることで,過去の津波イベントがビノスガイの死を招く重要な要因になっている可能性が示された.
著者
岡村 定矩 嶋作 一大 神谷 律 岡 良隆 久保野 茂 山口 英斉 坂野 仁 飯野 雄一 棚部 一成 遠藤 一佳 濵口 宏夫 山内 薫 松本 良 浦辺 徹郎 山形 俊男 日比谷 紀之 山本 正幸 渡邊 嘉典 井原 泰雄
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.6-15, 2012-03

東大での半世紀/岡村定矩先生を送る/退職にあたって/神谷律先生を送る/ミクロとマクロの世界に魅せられて/久保野茂先生を送る/退職の辞/坂野仁先生を送る/退職にあたって/棚部一成先生を送る/欅とヒマラヤスギの間/濵口宏夫先生を送る/石の上にも…38年/松本さんを送る/大学人生活を終えるにあたって/山形俊男先生を送る/退職にあたって/山本正幸先生を送る/青木健一先生を送る
著者
浜田 隆士 奥谷 喬司 棚部 一成 出口 吉昭 福田 芳生 波部 忠重 平野 弘道 蟹江 康光 川本 信之 三上 進 小畠 郁生
出版者
日本貝類学会
雑誌
貝類学雑誌 (ISSN:00423580)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.131-136, 1978

Progress and some results of the second rearing experiment of Nautilus macromphalus in Tokyo are described. The temperature controlling experiment is still applying to three extant individuals, that were supplied from New Caledonia last year through the courtesy of the ORSTOM in Noumea, and they are surviving for 222 days in captivity (May 14, 1978). Copulating behaviors are observed mostly in the waters of 17-19℃ in temperature but not in the cooler conditions. Shell growth at the apertural periphery was first measured to find that some individuals probably in a gerontic stage show no remarkable increment on one hand, the young specimens show 10-12 mm elongation per 100 days on the other. Recently the JECOLN also takes care of a living Nautilus pompilius that had been floated possibly from the Philippines along the Kuroshio Current over 2, 000 km and was captured by a fishing net set off Kawajiri, Kagoshima Prefecture in Kyushu, Southwest Japan.
著者
棚部 一成
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1975, no.99, pp.109-132_1, 1975

北海道中軸北部達布地域のチューロニアン(Inoceramus hobetsensis帯)から連続的に採集された16サンプルに, 南樺太内淵地域および北海道中部の大夕張地域産の8サンプルを加えた計24サンプル, 約150個体のOtoscaphites puerculusについて正中断面, 横断面での詳細な形態解析を行なうとともに, 保存のよい数個体について実際に体積を測定し, 近似的に殻の浮力を算出した。その結果, 殻口に顕著なラペットのある成年殻のフラグモコーンの直径および5.5π以降の全回転角に対するら環の半径のアロメトリーの成長比は, 時間的に増加するが, 逆に正常巻きに補正した住房の長さは1.6πから1.2πに減少することがわかった。また半径に対する隔壁および腹壁の厚さのアロメトリーの成長比についても時間的に浮力の増大したことを示す。浮力計算の結果, 下位層準の標本ではフラグモコーンに水が入らない状態でも, 全体の比重は水より大きくなるが, 上位層準の標本ではフラグモコーンに約30~47%水を入れた状態で殻の比重は水と等しくなる。これらの事実から本種は上述の形態変化に伴って成年時の生活様式を底生から浮遊ないし遊泳性に変えたものと思われる。また下位層準のサンプルでは, ら環のほどける約1π前(約7.5π)付近から腹壁および隔壁の厚さが急に厚くなるから, 個体発生中に生活様式を遊泳・浮遊性から底生に変えたことが推定される。
著者
棚部 一成 小畠 郁生 二上 政夫
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.124, pp.215-"234-1", 1981-12-30
被引用文献数
2

北海道の上部白亜系産のNostoceratidae, Diplomoceratidae両科に属する異常巻アンモナイト5属8種の成長初期の殻形態を記載し, その古生物学上の意義を考察した。諸形質のうち, 縫合線と連室細管の位置は初期段階でも安定し, どの種も前者は式ELUIで, 後者は外殻側に存在する。またDiplomoceratidae科のScalarites 3種(うち1種はS. ? sp.)は成長初期に強いprorsiradiateなくびれを伴った直線状の殻を有する点で, 幼期に同様なくびれのないNostoceratidae科の類とは区別できる。この特徴的な初期殻はDiplomoceratidae科の他の類にも存在する(WRIGHT and MATSUMOTO, 1954)ことから, 同科の属性の1つとみなせる。他の形質のうちでは, 特に螺環の巻き方が変異に富み, 同一種の個体発生中でも複雑に変化する。その変異幅は巻貝類のそれに比較でき, RAUP (1966)のパラメータを用いることにより(1)平巻型(2)旋回型(3)旋回軸変換型の3群に区分できる。しかし記載種と似た巻きを示す類は別の系統の類にも存在する。Eubostrychoceras japonicumとNeocrioceras spinigerumに同定した個体では, ごく初期に胚殻と約1巻の螺環からなる正常巻のアンモニテラが識別された。アンモニテラは明瞭なくびれ(nepionic constriction)を境に異常巻の螺環に続く。他の種においても, 観察結果から同様のアンモニテラの存在が示唆される。なお表面装飾は異常巻段階に入って出現する。以上の事実や他の正常巻・異常巻類にも類似の内部構造を持つアンモニテラが認められていることから考えると, アンモニテラは卵中で形成された可能性が高い。おそらく異常巻類の孵化直後の"正常型"幼体は一時的な浮遊生活を営み, 以後底生型の生活に適応していったと想像される。
著者
棚部 一成 遠藤 一佳 佐々木 猛智 白井 厚太朗 伊庭 靖弘 守屋 和佳
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

氷室時代の現世と温室時代の白亜紀の軟体動物(貝類)を対象として、貝殻の成長縞解析と地球化学的分析を行い、海洋環境に対する生活史形質の応答様式を解析した。その結果、北西太平洋の貝類の個体としての寿命が100年以上と長く、全球規模での海洋環境変動の記録を貝殻に保存していることが明らかになった。また、保存のよい浮遊性有孔虫、底生有孔虫、貝類化石の酸素同位体比分析から、白亜紀後期の北米内陸海や北西大西洋の陸棚は温室期の白亜紀中期に比べてやや寒冷化し、低層水温には季節変動があったことが示唆された。また、これら海域の貝類は現世の温暖な海域の貝類と似た生活史形質を持っていたことがわかった。