著者
浜渦 辰二 中村 剛 山本 大誠 福井 栄二郎 中河 豊 前野 竜太郎 高橋 照子 備酒 伸彦 竹之内 裕文 竹内 さをり
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

医療,看護,リハビリ,介護,福祉,保育,教育まで広がる「北欧ケア」を,哲学・死生学・文化人類学といったこれまでこの分野にあまり関わって来なかった研究者も参加して学際的に,しかも,実地・現場の調査により現場の人たちと研究者の人たちとの議論も踏まえて研究を行い,医療と福祉をつなぐ「ケア学」の広まり,生活中心の「在宅ケア」の広まり,「連帯/共生」の思想が根づいていること,などが浮かび上がってきた。
著者
前野 竜太郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.E4P3198-E4P3198, 2010

【目的】静岡県中部地域では,1997年より「外国人のための無料健康相談と検診会」を同実行委員会の主催のもと行っている.検診会を続ける中で,特に2002年度より3年間,受診者の最も訴えの多い症状は腰痛であった.このため2006年度より,腰痛対策として腰痛教室を行ってきた。そこで集められたデータをもとに今回,1.静岡県中部在住の外国人の腰痛の現状を明らかにし,2.通訳を交えて母語による腰痛教室を行った効果について検討したので報告する.<BR><BR>【方法】無料健康相談と検診会」の腰痛教室に参加した対象者に,母語に翻訳されたパンフレットを用いた腰痛体操指導や,日常生活動作指導の効果について,また,腰痛と日常生活動作との関係,腰痛への対処方法,予防などについて,自己記入または通訳者代筆記入による質問紙調査(スペイン語,ポルトガル語,英語,日本語)を行った.腰痛教室の方法としては, 1.個別に腰痛予防としての日常生活動作の指導を逐語訳にて説明しながら,2.通訳による問診にて,腰痛の症状や部位,頻度などを確認した後,3.個別に腰痛体操を処方した.4.体操の内容は,ストレッチング,腹筋筋力強化,背筋筋力強化の3種類であり,各1種類,計3種類の体操を処方し,5.会場内のリハ室にて個別に通訳付でPTが指導を行い、体操を実践してもらった.<BR><BR>【説明と同意】アンケートに関しては,事前にアンケートの説明を行った後,協力いただける場合のみ回答してもらった.また、回答したくない項目には空欄としてもらい,通訳を介して記入する場合は,事前に通訳者が記入してよいか事前承諾をお願いした.アンケート自体に回答したくない場合は,アンケート回答は強制しない旨通訳を交えて説明を行った.<BR><BR>【結果】1.基礎データ›日時:2006年10月30日,2007年11月11日,2008年11月9日.会場:静岡厚生病院(静岡市).対象者:腰痛患者のべ38人(男17人,女20人,不明1人).年度毎にそれぞれ19人(2006),9人(2007),10人(2008)であった.国籍;ブラジル11人,ペルー8人,フィリピン6人,中国3人,モンゴル,日本各2名の順に多数を占めた。ブラジル人とペルー人その他中南米系外国人が最も多く、22人と全体の57.8%を占めた.毎年、スペイン語,ブラジル(=ポルトガル)語の通訳付きで腰痛教室を受けたものが50%以上を占める.全外国人のうち、年齢別に最も多かったのは30歳代15人(39.4%)で,次いで40歳代11人(26.3%),20歳代8人(21.1%)の順で,合わせて86.8%を占めた.‹2.腰痛の現状›「普段の生活で、どのような姿勢の時に、痛いか」,「中腰」18人(47.4%),「寝ているとき」15人(39.5%),「椅子に座っているとき」11人(28.9%).「どのような作業の時に、痛みが増強するのか」,「立った姿勢での労働作業」31人(81.6%),「重いものをもって運ぶ」20人(52.6%).「痛くなった時の対処方法」,「安静にする」20人(52.6%),「市販薬を使う」15人(39.5%).「腰痛をおこさないために、日頃から、行っていることがあるか」,「特に何もしていない」15人(39.5%),「運動をする」14人(36.8%),「姿勢に気をつける」11人(28.9%).また、BMI25以上の者は,16人(42.1%)であった.‹3.指導効果›「腰痛体操は、役に立った」31人(81.6%),「毎日の生活の中で腰痛体操はできる」32人84.2%),「今後、腰痛体操、生活の仕方等の指導が必要」28人(73.7%).<BR><BR>【考察】1.腰痛は,国籍に関係なく20代後半~40歳代の働き盛りの成人に多い。2.また作業時、「立った姿勢での労働作業」時や「重いものをもって運ぶ」時に、痛みが増強する者が多く、それが非作業時にも慢性痛として影響を及ぼしている可能性がある.3.腰痛時には,何らかの自己対処を行っているものが多く,腰痛予防について,軽い運動をする者が見られる一方で,何も行わない者も多い. 4. 腰痛を抱える者の半数近くが肥満であったが,日頃から体重を増やさないように肥満対策をしている者は2名と少ない.5.事前の腰痛対策の有無のアンケート結果から見て,母語を用いた逐語通訳による腰痛体操指導,日常生活指導パンフレットを用いて,通訳を交えて行った腰痛教室は効果があった.6.また腰痛予防の意識付けとして日常生活動作指導には効果が見られ、その結果は、更なる自己対処法の要求へとつながっていた。7.しかし、腰痛体操指導は、ほとんどの者が通訳を必要としており、結果個別対応で施行せざるを得ない現状であり、有効なチャートの作成など集団への対応が今後の課題である.<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】1.労働条件・環境ともによいとは言えない成人外国人の腰痛の現状を明らかにできた。2.外国人に腰痛教室や日常生活動作指導を行うことが有効であり,継続していく必要があることが明らかとなった。
著者
前野 竜太郎
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.103-112, 2004-10-18 (Released:2018-02-01)

The purpose of this paper is to show how the nonverbal communication is used by physiotherapists with physically handicapped and serious mental retarded children, during physiotherapeutic interventions. We used interview with physiotherapists, so to speak, real narratives of physiotherapists, who give physiotherapy to these children, because most of children couldn't even communicate. These interviews show the intimate relationship between physiotherapists and handicapped children, by analyzing the data from the interviews with physiotherapists. In the past, only few attempts have been made at this process of study, because we have to need more objective reliability and validity to research physiotherapy. It is difficult for us to study nonverbal communication more objectively, as it were, it isn't in our field. As physiotherapeutic intervention would be so much different from special education for handicapped children, we need more specific research from physiotherapy about them. In this study, we use the existential analysis method defined by Mourice Merleau-Ponty. It is entirely different from logo-therapy. We avoid using the sociological method of analyzing interview data. The findings of this analysis of data show that we have to transcend the wall of specialty and objectivity of physiotherapy; in other words, we need to be involved in an ambiguity, that is, non-perceivable dimension. Then we could live children with physical handicap and serious mental retardation together, in their world and their daily living. In conclusion, caring is the most important art during the physiotherapeutic interventions.
著者
前野 竜太郎
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.35-42, 2000-12-15 (Released:2018-02-01)

We usually emphasize the objectivity of physiotherapy because of its reliability and validity. When we usually do physiotherapy, we can find out various physiotherapeutical problems in accordance with objective evaluation of the patient. We can then set up a rehabilitation goal, and sometimes we might prescribe scientific exercise for a patient. However, is that all we need? In particular, how about the great number of chronic cases? If we persist in our scientific method, we couldn't discover the whole patient. I suggest we need to use not only a rational medical rehabilitation approach but also an existential medical rehabilitation approach for chronic patients. Existential medicine means holistic medicine. Even if we can't expect improvement in the disability of all chronic patients, we must understand what their problem is as a whole patient, and be concerned about their suffering. If so, they may communicate real narratives. This promotes healing for them. It may also build confidence between patient and physiotherapist. This would be a different kind of rahabilitation based upon caring. The point I want to make is that a existential medical rehabilitation has seen a great number of chronic patients change from a suffering existence to a healing existence.