- 著者
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副田 賢二
- 出版者
- 日本近代文学会
- 雑誌
- 日本近代文学 (ISSN:05493749)
- 巻号頁・発行日
- vol.92, pp.93-108, 2015 (Released:2016-08-02)
満州事変勃発以降『新潮』等の「純文学」の領域では「大衆文学」論が盛んになるが、「北支事変」勃発以降は〈銃後〉が〈前線〉に文学的アウラを「発見」するという言説モードが浮上する。一九三〇年代末には火野葦平や上田広等の「帰還作家」と「純文学」側との応答が「戦争文学」論として展開され、〈前線〉〈銃後〉の接続が擬似的に創出される。更に「帰還作家」の言葉の「空白」にこそあるべき〈理念的文学リテラシー〉が投影されるという転倒した事態が起きる。〈文学〉の生成において〈戦争〉が重要な要素として召喚される歴史的過程をそこに見出すことができる。対して『大衆文芸』等の「大衆文学」の領域では棟田博等の「帰還作家」の戦闘体験が強調され、〈前線〉と読者とのダイアローグ的な言説の構造が浮上する。『サンデー毎日』誌上でも〈前線〉〈銃後〉を超越的に接続する物語や「慰問」言説・表象の中に〈消費的文学リテラシー〉が発動していた。