著者
天野 知幸
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.11, pp.11-23, 2006-11-10

本論は、引揚・復員を<戦中>と<戦後>、トランスナショナルな経験とナショナルな経験とが交錯する場として捉え、それらが文学表象、雑誌メディアの言説により歴史化される始めの姿を、西條八十「ああ父帰る夫帰る」と『主婦之友』の引揚・復員記事をもとに考察した。そこに家族の再会という情緒的な<物語>が充満していること、また、<日本>の再建という欲望だけでなく、朝鮮戦争を翌年に控えた国内、国外の複雑な政治状況、危機感が反映されていることを論じた。
著者
日高 佳紀 西川 貴子 増田 周子 天野 知幸 大原 祐治 疋田 雅昭 吉川 仁子 浦西 和彦 浅岡 邦雄
出版者
奈良教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1940年代に大阪で創業し、戦後の占領期にメジャー出版社に比肩する業務を担った出版社「全国書房」の出版事業における作家と編集者、出版人を中心としたネットワークの全容を解明することを目指し、創業から1970年前後に至るまでの出版書籍の調査、1944~1949年に刊行された文芸雑誌『新文学』の分析、および、創業者である田中秀吉(故人)宅の所蔵資料調査などを行い、終戦前後の過渡的な時代における文学と出版メディアの関係について検討、研究期間終了後に取り組む成果出版のための基礎を構築した。
著者
天野 知幸
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所紀要 (ISSN:13405942)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.1, pp.161-176, 2008-12-25

戦後の京都市上京区五番町と京都府与謝郡を舞台に、「赤線」で働く「接客婦」の夕子と彼女のもとに通う吃音の僧、櫟田正順を描いた水上勉の小説「五番町夕霧楼」について、五番町と夕子の生まれた与謝郡「樽泊」の空間的な関係性、性産業をめぐる戦後の状況やそれらに対する社会の差別的な視線、さらには、「鳳閣寺」放火事件を報じるメディア上の言説とそれを起こした正順の「声」「ことば」との関係などを明らかにしながら、この作品が他者表象、他者理解の困難さを提示していることを論じた。
著者
副田 賢二 松村 良 原 卓史 天野 知幸 和泉 司 五島 慶一 三浦 卓 杉山 欣也
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

戦前期『サンデー毎日』を中心とした週刊誌メディアと文学との関わり、及びその誌面レイアウトや視覚表象の構造を扱う本研究は三年目となり、大阪市立大学所蔵『サンデー毎日』の調査、分析、データ化を進めた。その研究実績は、主に学術研究誌への論文掲載及び学会・研究会での研究発表で発表した。2019年度は、7月に第3回科研費研究成果中間発表会を大阪市内で実施した。同時に日本出版学会関西部会に参加し、雑誌メディアにおける挿絵やレイアウトの研究において、同学会との交流を実現した。なお、2020年3月に京都教育大学で第4回科研費研究成果報告会(一般公開形式)の開催を予定していたが、新型コロナ感染流行のため延期となった。また、大阪市立大学や国立国会図書館、大宅文庫等で調査した戦前期『サンデー毎日』をめぐる資料やデータベースについては冊子形式の資料集として刊行して実績報告書とする予定であったが、3月以降図書館等での調査が不可能になったため、現在研究期間延長申請を提出し、受理されている。延長期間は1年間だが、新型コロナ問題が改善された場合は、2020年8月までに本研究の研究活動及び資料集の出版(成果報告)を完了しようと考えている。そこで刊行する成果報告には、データ化した戦前期『サンデー毎日』の全表紙のデータベース(創刊から占領期まで)、『サンデー毎日』創刊記念号等の特集号の資料紹介、分析、1920年代の文壇ゴシップ記事の分析等、これまでの研究成果を掲載する予定である。また、まず大正期を対象として『サンデー毎日』の視覚表象を分析して目録を作成、データベース化する調査を現在複数メンバーで進めている。その調査、研究成果は、新たに獲得した「1920~1950年代の週刊誌メディアにおける文学テクストと視覚表象の総合的研究」(基盤研究(C) 課題番号:20K00361)にて公刊する研究書に掲載予定である。
著者
天野 知幸
出版者
京都教育大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

プランゲ文庫に所蔵されている検閲資料やGHQ 占領下に地方で発行されていた新聞・雑誌メディアの記事内容やそれらの表現に対するGHQ/SCAP 検閲の実態を調査・分析することによって、占領下における地方の言論環境、表現・思想の特性、文化・思想の生成のありかた、さらにはGHQ/SCAP 検閲実態の多様性や言論統制の地方への浸透の様子について明らかにした。