著者
加来 義浩
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.237-242, 2004 (Released:2005-06-17)
参考文献数
11

ニパウイルス (NiV) 感染症は, 1998年~99年にかけてマレーシア, シンガポールで初めて発生し, ヒトに致命的な急性脳炎, ブタに主に呼吸器感染症の流行をもたらした新興の人獣共通感染症である. 両国合わせて265名の感染者, 105名の死亡者 (致死率40%) が報告された他, ブタの大量殺処分によりマレーシアの養豚産業は壊滅的な打撃を受けた. 本ウイルスの自然宿主はオオコウモリであり, オオコウモリからブタに感染したウイルスが, その後ヒト, イヌ, ネコなどに伝播したと考えられている. 99年5月以降, 本症の発生報告はなかったが, 2004年になりバングラデシュで二度の流行が報告され, 合計で感染者は57名, 死者は43名 (致死率75%) を数えた. バングラデシュにおける流行にブタの関与は認められておらず, ニパウイルスがオオコウモリ→ヒトあるいはヒト→ヒトに直接伝播した可能性が指摘されている. 本稿では, マレー半島, バングラデシュ両地域における本症の流行を比較し, これまで明らかになっている疫学的背景と, 現在のウイルス学的研究の進展状況を紹介する.
著者
加来 義浩 河原 正浩 浅井 知浩
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

狂犬病ウイルス(Rabies virus: RABV)に感染すると、ウイルスは血流を介さず、末梢神経細胞を経由して中枢神経へと伝達され、狂犬病を発症する。発症後の致死率は100%であり、有効な治療法はない。本研究では、狂犬病発症後の治療法の開発を目的として、RABV感染細胞内でウイルス蛋白質に結合できる人工小型抗体を複数作出し、一部についてはウイルスの増殖阻害効果を有することを確認した。また人工小型抗体の遺伝子をナノ粒子に封入し、神経細胞へのin vitroデリバリー系の構築を行った。