著者
山本 陽二郎 萩原 亨 足達 健夫 加賀屋 誠一 内田 賢悦
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.709-715, 2004-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
12

本研究では、歩行者の方向感覚を阻害する存在として、地上と地下を繋ぐ階段での進行方向の回転に着目した。地上から地下への階段の曲がり数とその後の地下歩行空間における歩行者の方向定位と経路探索時への影響を分析するため人の空間認知プロセスにおける視覚情報について具体的に検討した。階段通過時の進行方向の回転をシミュレートした室内実験を行った。被験者に対し情報提供を行い、それらの経路探索への影響を分析したその結果、階段の曲がり数が要因となって方向定位と経路探索が困難になった。また、情報提供内容によって方向定位を改善できる可能性を示唆した。
著者
関 清秀 五十嵐 日出夫 黒柳 俊雄 三谷 鉄夫 山村 悦夫 加賀屋 誠一
出版者
北海道大学
雑誌
環境科学 : 北海道大学大学院環境科学研究科紀要 (ISSN:03868788)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.i-47, 1978-03-25

以上述べたところで明らかなように,かなやま湖の建設を主とする開発事業は地域社会にとって重大な環境変化を意味するもので,ここに解明された南富良野町民の生活意識は,開発事業にたいする地域住民側からの環境影響評価の一表現とみなすことができる。本稿において明らかにされた点は,およそ次の如く要約される。(1)南富良野町の自然環境については,その満足度が地区部落ごとに差異がある。特に気候に開しては,かなやま湖を挟んで南西部に満足度が高い。(2)人情の篤さについては町民相互に概ね満足しているが,冬の生活を改善すべき必要性に関しては各地区とも強い意欲を示している。(3)各種の生活基盤施設の充足については町内各部落ごとに要求度が異なるが,市街地においては下水道整備,北落合においては電気施設にたいする不満が極めて高い。(4)医療施設整備への欲求は特に金山・下金山地区において高い。(5)社会福祉施設および防災施設については概ね満足している。(6)家族がみんなで楽しむ場を要望する声が強い。(7)町道未整備への不満が多い。(8)畑作地帯,低階層そして高齢者ほど,日本農業の将来は暗い,と予測している。特に女性の中には明るい予測をもつものがいない。(9)畜産地帯では前途に明るい希望をもち,生きがいを感じているものが比較的多い。(10)稲作地帯では離農指向が強い。(11)経営形態については,個別経営を主体としてこれに機械の共同利用を加味した営農への指向が強い。(12)耕地規模拡大難と後継者獲得難とは,相互に因となり果となりして悪循環現象を呈し,特に低階層に著しい。(13)政府の農業政策については,下層へ向うほど所得保障制度への支持率が低く,投入財価格制度への選択は逆に多くなる。(14)町民は,日常生活物資の購入はほとんど町内で充足しているが,他市との結合を強くもっているのは富良野市(月に1〜2回58%),旭川市(同じく47%),札幌市(同じく24%)で,帯広市(同19%)との関連は比較的薄い。(15)鉄道の運行時間と運行回数についてはかなり不満を感じている。(16)石勝線開通における根室本線のローカル化にともなう対策としては,乗合バスによる代替を希望するものが多い(町民の76%)。(17)町内への定住指向度は,林業,鉱業中心の集落では低い。特に年令層が若いほど移住指向が強い。こういった町民意識は,いうまでもなく,地域社会内の環境変動のみによって形成されているものではない。ダム建設と相前後して経験した日本経済の高度成長と石油ショック以後の社会経済変動がその背後にある。いまここに表明された住民意識を環境問題として把握し,これを環境科学的視野の中で考究するとすれば,一つには地域社会の"住みよさ"(habitability)の問題としてとりあげられるであろう。産業的にみれば自然の恩恵の極めて乏しい北海道内陸山間地帯の一つの自治体が,その住民にたいして住みよい豊かな生活環境を保証するためにはどのような施策を講じなければならないか,この調査結果の中に多くの示唆を読みとることができると思われる。最近の国土計画においては"定住圏"あるいは"環境圏"等が広域生活圏にかかわる新構想として提唱されている。しかし,"住めば都"という俚諺はもはや昔通りには通用し難い時代となりつつある。過疎地帯の自治体の深刻な苦悩はかかってこの点にある。上から与えられるキャッチ・フレーズは地元住民の生活意識になじみ難い面が多いであろうことを本研究の結果は表現している。かなやま湖の造成による環境影響に関しては,冒頭に述べた如く,まだその全容を解明するにいたってはいないが,15年後の住民意識にみる限り,顕著なプラスの効果は発見し難いといわなければならない。
著者
大井 孝通 高野 伸栄 加賀屋 誠一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.751-756, 2000
被引用文献数
1

地方都市において路線バスは唯一の公共交通であるが、その運行状況は極めて厳しく、さらに平成13年度からの需給調整規制の廃止により、赤字路線の廃止、事業者の撤退が予想される。この際、現在のような乗車密度等の直接的利用価値だけでなく、その存在価値も考慮した路線バスの評価が行われるべきと考える。<BR>そこで、本研究ではCVM (Contingent Valuation Method: 仮想的市場評価法) を用いることにより、路線バスのオプション価値、非利用価値の計測を試みた。さらに、地方都市における路線バスの評価へのCVMの活用についての考察を行った。
著者
足達 健夫 加賀屋 誠一
出版者
JAPAN SECTION OF THE REGIONAL SCIENCE ASSOCIATION INTERNATIONAL
雑誌
地域学研究 (ISSN:02876256)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.131-147, 2001-10-30 (Released:2008-10-10)
参考文献数
9

The purpose of this study is to consider the possibility to apply a third-sector railway “Furusato-gingasen”, for improvement the service level of transportation between central and eastern Hokkaido. Most of the lines which were separated from JNR (Japan National Railways-the forerunner of Japan Railways) were reborn as thirdsector railways. But the plans of management to maintain the minimal level of transportation infrastructure had not been discussed enough. The environment of transportation in rural areas is expected to become more difficult after the relaxation of restrictions on supply and demand adjustment in mass transit. The economy of Hokkaido Chihoku-kogen Tetsudo Company, the owner of the “Furusato-gingasen”, is not healthy just like other third-sector railways in rural areas. New countermeasures should be estimated and tried at this critical turning point.The first step was test calculation of the high speed improvement utilizing the “Furusato-gingasen”. We had a result that it would cost approximately four billion yen. We also analyzed the attitudes of the residents in Kitami and Abashiri who usually use railways. As the result of the simulation by a modal choice model, it was clear that application of the “Furusato-gingasen” would be able to raise the share of railway transportation between Sapporo and cities in eastern Hokkaido.
著者
メンサボンス アイザックF 加賀屋 誠一 山村 悦夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.506, pp.119-127, 1995

本件級は, 地方道路投資のための意思決定モデリングにおいて2つの顕著な問題を扱っている. すなわち, 公平性と効率性のトレードオフ問題と意思決定での受益者参加の問題である. このような, 問題を統合化するモデリング手法の開発と, その地方道路投資問題への適用がここでの目的で, それらの問題は, 多基準数理計画プログラミング問題としてモデル化された. そして, それは投資によるアクセスビリティの増加量を最大化する目的と, 分布するアクセスビリティ格差最小の目的を同時に満たすように表現, 定式化された.ε制約法が, 非劣解の集合を一般化するために用いられ, また選好解の決定は, 地方開発機関に対する各リンクの重要度の情報を集約し, その重要度を基にして非劣解から選好するプロセスを導入することでおこなわれた. その結果, 道路投資のための意思決定で, 各機関の参加が図られた. このような方法は, ガーナオフィンソ地区に適用され, 実証分析がおこなわれた. その結果, 開発途上国の道路投資決定法に有効であることが明らかにされた.