著者
習田 明裕 志自岐 康子 川村 佐和子 恵美須 文枝 杉本 正子 尾崎 章子 勝野 とわ子 金 壽子 城生 弘美 宮崎 和加子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.144-151, 2002-12-25 (Released:2017-10-27)
被引用文献数
2

訪問看護における倫理的課題を明らかにするために,訪問看護ステーションに所属する訪問看護師300人を対象に,倫理的課題の経験や悩みの有無に関する自己記入式質問紙調査を行った。114人から回答が得られ,以下のことが明らかになった。1.倫理的課題に関する質問19項目のうち,50%以上の者が経験していた課題が10項目あった。2.倫理的課題を経験した場合,その課題に関する悩みの有無については,19項目中18項目について70%以上の者が悩んでいた。3.5つにカテゴリー化した倫理的課題の分類の中で,<利用者の意向と看護職者の意向が食い違うため看護職者が悩む状況>,<利用者の意向と家族の意向が食い違うため看護職者が悩む状況>において,倫理的課題を経験している者が多かった。しかし悩みの有無に関してはカテゴリー間で大きな差はみられず,いずれのカテゴリーにおいても倫理的課題に対し多くの者が悩んでいた。以上の結果から,訪問看護活動において看護職者はしばしば倫理的課題に遭遇しており,それに対し多くの看護者が悩み(ジレンマ)を抱いていることが明らかになった。訪問看護職者個々人が倫理的な判断能力を向上させる一方,倫理的課題への組織的な取り組みなどの対応策が必要であることが示唆された。
著者
米村 法子 福井 里美 勝野 とわ子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.167-175, 2017 (Released:2019-10-14)
参考文献数
25

目的:本研究は,熟練した精神科看護師による統合失調症者の術後疼痛の判断を明らかにすることを目的とした. 方法:精神科経験3 年目以上で外科系病棟での勤務経験もある看護師9 名を対象に半構造的面接を行い,質的帰納的に分析した.結果:熟練した精神科看護師による統合失調症者の術後疼痛の判断として【手術侵襲の影響と回復状態からの判断】,【幻覚・妄想からの判断】,【疼痛時・不穏時・不眠時指示薬からの選択の判断】,【言語的表現と客観的情報の整合性からの判断】,【複数の立場からの判断】の5 カテゴリーが明らかとなった.考察:【幻覚・妄想からの判断】,【疼痛時・不穏時・不眠時指示薬からの選択の判断】は術後疼痛のある統合失調症患者への特有の判断と考えられた.これらの判断には難しさを伴い,看護師が 仮説的に判断してケアを行うことや,熟練した精神科看護師が中心となって振り返る機会がより求められる.
著者
渡邊 淳子 恵美須 文枝 勝野 とわ子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-30, 2010
参考文献数
26

目的:本研究の目的は,熟練助産師の分娩第1期におけるケアの特徴を明らかにすることである。本研究においての熟練助産師とは,助産師として20年以上の経験をもち,さらに分娩介助の経験が1,000件以上ある助産師をいう。研究参加者は4名の助産師であり,それぞれの助産師が関わった9例の分娩を参加観察し,援助場面を中心に半構成的インタビューを実施した。分析の結果,<経過における特徴的な反応を生かしたケア><からだのバランスを調えるケア><自然な流れを尊重したケア><家族の出産を演出するケア><産婦自身の力を引き出すケア>の5カテゴリーとそれに含まれる12のサブカテゴリーが抽出された。熟練助産師は,自然分娩に対する自己の信念を持ち,経験から導かれた感覚を用いて判断し,それに基づいたケアを行っていた。
著者
出貝 裕子 勝野 とわ子
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.5-12, 2007-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
24

本研究の目的は,介護老人保健施設入居中の認知症高齢者のagitationと周囲の騒音レベルの実態およびagitationに関連する要因を明らかにすることであった.ストレス刺激閾値漸減モデルに基づき,18名の認知症高齢者を対象にその周囲で騒音レベルを測定し,CMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)日本語版を用い,agitationの有無を2日間観察した.ロジスティック回帰分析の結果,騒音レベルが高いこと,時間帯では午前と比較して午後(特に15:00〜17:59)であること,HDS-Rが7点以下であること,重度難聴に比較し軽度難聴であることと, agitationが観察されたことに有意な関連があった.したがって,agitationに対し時間帯や騒音レベルを考慮した環境調整からのアプローチが有効である可能性が示唆された.