著者
渡邊 淳子 森 真喜子 井上 洋士
出版者
日本臨床倫理学会
雑誌
臨床倫理 (ISSN:21876134)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-62, 2017 (Released:2021-07-12)
参考文献数
20

摂食嚥下訓練において言語聴覚士(以下,ST)はジレンマを感じることがある.そこで,摂食嚥下訓練の場面に注目し,STが経験するジレンマの様相とそのようなジレンマが生じるプロセスを明らかにすることを目的とした.摂食嚥下訓練の経験があるST8名に半構造化インタビューを行い,得られたデータをStrauss & Corbin版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.10のカテゴリーと1つのコアカテゴリーが抽出され,帰結となったカテゴリーのうち《患者に無益な努力をさせ続ける苦悩》,《直接訓練を止めると患者が衰弱してしまうジレンマ》,《患者の益にならないような直接訓練を続けるジレンマ》,《患者の死に加担したように感じる苦悩》の4つのカテゴリーがジレンマの状況であった.そのうち3つの状況は倫理原則が対立する倫理的ジレンマの状況であった.また,本研究の結果から,STが感情労働による疲弊や共感疲労に陥るリスクが高いことも示唆された.
著者
渡邊 淳子 Watanabe Junko
出版者
熊本大学
巻号頁・発行日
2009-03-25

本論文の目的は、先行研究を基にした嗜癖の理論構築とその実証を行い、併せて回復への道筋も視野に入れながら、人間の自発性や合理性の能力の可能性を探ることにある。
著者
渡邊 淳子 恵美須 文枝 勝野 とわ子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-30, 2010
参考文献数
26

目的:本研究の目的は,熟練助産師の分娩第1期におけるケアの特徴を明らかにすることである。本研究においての熟練助産師とは,助産師として20年以上の経験をもち,さらに分娩介助の経験が1,000件以上ある助産師をいう。研究参加者は4名の助産師であり,それぞれの助産師が関わった9例の分娩を参加観察し,援助場面を中心に半構成的インタビューを実施した。分析の結果,<経過における特徴的な反応を生かしたケア><からだのバランスを調えるケア><自然な流れを尊重したケア><家族の出産を演出するケア><産婦自身の力を引き出すケア>の5カテゴリーとそれに含まれる12のサブカテゴリーが抽出された。熟練助産師は,自然分娩に対する自己の信念を持ち,経験から導かれた感覚を用いて判断し,それに基づいたケアを行っていた。
著者
渡邊 淳子
出版者
新島学園短期大学
雑誌
新島学園短期大学紀要 (ISSN:18802141)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.150-145, 2008

更級日記の冒頭には、作者菅原孝標女が上総の国司館で物語世界に引き込まれ、十三歳で念願叶って、物語の待つ憧れの京に旅立つ経緯が、簡潔に纏め上げられている。ただ、「あづま路の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる人」という書き出しから事実に反するために、冒頭部分は日記全体の構想論、構造論に絡ませて、様々な"読み"が試みられてきている。冒頭部分は簡潔ではあるが、それだけに重層的に、日記を書く時点で捉え直された、大人の女性としての第一歩を、まさに踏み出そうとする、十三歳の自己が描かれていると言える。以下にこの冒頭部分に対する私なりの読みを纏めてみたい。