著者
小川 久貴子 安達 久美子 恵美須 文枝
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.2_50-2_63, 2006 (Released:2008-06-30)
参考文献数
53
被引用文献数
2 1

目 的 本研究では,1990年から2005年の10代妊婦に関する国内文献の内容を分析し,今後の課題を明らかにすることである。対象と方法 「医中誌WEB:」及び,「最新看護検索」を用い,キーワードを,『未成年者妊娠,若年初産婦,10代妊娠,思春期妊娠』として検索し,得られた106件の文献内容を分析し,それを分類して検討した。結 果 文献内容を分析した結果,10代妊婦の背景や妊娠から育児に関する実態と今後の課題の合計5項目が明らかになった。その中で,既存文献では,10代妊婦の実態やケア実践への提言は比較的多くなされているが,ケアの効果を実証する研究や10代の年齢による特性の違いを論じる研究は少ないことが明らかになった。さらに,10代女性にとっての妊娠の受容過程や,10代で妊娠することや子育てを経験することが,その社会のなかでその人にどのような意味をもち,健康面にどのように影響するかという心理・社会的状況についても十分には明らかになっていないことが判明した。結 論 今後の10代妊婦の研究では,実践のエビデンスを提供する質の高い研究を目指して,対象者の特性をより明らかにする主観的体験を探求する研究などが重要である。
著者
大石 時子 柳原 真知子 柳原 真知子 恵美須 文枝 山村 礎
出版者
天使大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

ピアエジュケーションの中から中高大学生のセイファーセックスネゴシエートの実際の言葉を抽出し、これらの抽出された認識や行動のパターンと大学生への意識調査の結果等を基本に、大学生ピアカウンセラーを養成するための、8パターンのロールプレイ用演劇シナリオを完成した。また大学生への意識調査からセイファーセックスネゴシエートに関する大学生ピアカウンセラー養成前後の教育効果を計る自己効力感の尺度を作成した。
著者
天野 道代 恵美須 文枝 志村 千鶴子 岡田 由香
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.354-365, 2013-07

本研究は,キャリア途上にある女性が,予期せぬ妊娠に気づいてから初めての出産にのぞむまでの体験を明らかにすることを目的とした。妊娠32週以降の女性で,自分の仕事に対して明確な目標をもち,その経験を積み重ねることに価値を置いて働いて(学んで)いた13名を対象に半構成的面接を行い,質的帰納的に分析した。その結果,妊婦は,土台となる【妊娠前に育成されたキャリア意識】があり,【職業生活が揺さぶられる予期せぬ妊娠の体験】に遭遇し困惑する実態が示され,そして,【妊娠と仕事との調和のとれた働き方にたどり着く体験】までには,さまざまな生活上の調整を行い,それを経て気持ちが落ち着き,その結果,【仕事と家族と自分をつなげる方向にキャリアの価値が広がる体験】という経過で,妊娠の体験を認識していた。以上のとおり,予期せぬ妊娠は,女性が歩むキャリア形成においての節目となっていた。妊娠して出産することを決意した女性は,その後のすべての体験をプラスに受け止める姿勢が養われ,キャリアと妊娠を融合しながら,他者とともに生きるという新たな生活の価値を獲得していた。妊娠初期には,職場や家族との調整に混乱状態にある女性を支援することの重要性が示唆された。
著者
習田 明裕 志自岐 康子 川村 佐和子 恵美須 文枝 杉本 正子 尾崎 章子 勝野 とわ子 金 壽子 城生 弘美 宮崎 和加子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.144-151, 2002-12-25 (Released:2017-10-27)
被引用文献数
2

訪問看護における倫理的課題を明らかにするために,訪問看護ステーションに所属する訪問看護師300人を対象に,倫理的課題の経験や悩みの有無に関する自己記入式質問紙調査を行った。114人から回答が得られ,以下のことが明らかになった。1.倫理的課題に関する質問19項目のうち,50%以上の者が経験していた課題が10項目あった。2.倫理的課題を経験した場合,その課題に関する悩みの有無については,19項目中18項目について70%以上の者が悩んでいた。3.5つにカテゴリー化した倫理的課題の分類の中で,<利用者の意向と看護職者の意向が食い違うため看護職者が悩む状況>,<利用者の意向と家族の意向が食い違うため看護職者が悩む状況>において,倫理的課題を経験している者が多かった。しかし悩みの有無に関してはカテゴリー間で大きな差はみられず,いずれのカテゴリーにおいても倫理的課題に対し多くの者が悩んでいた。以上の結果から,訪問看護活動において看護職者はしばしば倫理的課題に遭遇しており,それに対し多くの看護者が悩み(ジレンマ)を抱いていることが明らかになった。訪問看護職者個々人が倫理的な判断能力を向上させる一方,倫理的課題への組織的な取り組みなどの対応策が必要であることが示唆された。
著者
抜田 博子 谷口 千絵 恵美須 文枝
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.208-216, 2009 (Released:2010-04-06)
参考文献数
13
被引用文献数
2 1

目 的 助産師が行う周産期ケアについて,血液・体液および排泄物との接触の多い手指の感染予防策として,手袋着用状況と個人的属性との関連を明らかにする。対象と方法 東京都内の分娩を取り扱う病院に勤務する189名の助産師を対象とし,自記式質問紙調査を行った。調査内容は,年齢や経験年数,院内感染対策への関心等の個人的属性と,血液および体液,排泄物を扱う10項目の周産期ケアにおける手袋着用状況を,「必ず着用する」から「着用しない」までの4段階で回答を求めた。分析は個人的属性,手袋着用状況を各々2群に分類し,ケアごとに個人的属性との関連を,χ2検定により分析した。結 果 177名(回収率93.6%)から回答が得られた。助産師の手袋着用状況は,分娩第II・III期の直接介助では100%,妊産婦の内診,胎盤計測・処理では98%以上が「必ず着用する」と回答していた。一方で,乳房ケアは74.1%,新生児のオムツ交換では64.1%が「着用しない」と回答していた。個人的属性と手袋着用状況との関連においては,ケア毎に関連する要因が異なっており,教育課程や感染に関する研修の有無,スタンダード・プリコーションの認知度で関連が認められるケアがあった。年齢,産科以外での臨床経験の有無は,どのケアにおいても関連が認められなかった。結 論 明らかに血液・体液の接触を避けることができないケアでは,ほとんどの人が手袋を着用しているのに対し,血液ではない母乳や新生児の便については,手袋を着用しない人が多かった。また,血液・体液に直接触れない場合があるケアでは必ずしも手袋を着用していなかった。 看護師,助産師各教育課程や感染に関する研修受講の有無,スタンダード・プリコーションの認知度で着用状況と関連が認められるケア項目があり,感染対策に関する卒前および卒後教育の充実が必要であると考えられた。
著者
小川 久貴子 恵美須 文枝 安達 久美子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.1_52-1_63, 2005-06-30 (Released:2008-02-29)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

目的国内の10代妊婦に関する保健医療・看護領域の研究動向を明らかにするために, 文献の年次推移やエビデンスレベルに焦点を当てて検討する。方法本研究の検索範囲は, 10代で妊娠を継続し, 出産・育児に関連する対象と設定した。対象文献は, 医学中央雑誌刊行会『医中誌WEB:』 (1990年1月~2004年3月) と, 日本看護協会刊行『最新看護検索』 (1990年~2003年) を用い, キーワードは「未成年者妊娠, 若年初産婦, 10代妊娠, 思春期妊娠」を用い検索した。分析方法は, 文献の筆頭著者の所属機関・職種・文献数の年次推移, 研究主題のレベル別分析, さらに看護に有用なエビデンスレベルの高い文献の分析を行った。結果1) エビデンスレベル分類の結果, レベルIのRCTやレベルII―1のコホート研究などは皆無であり, レベルII―2の比較研究や症例集積研究は23件であり, エビデンスレベルの高い研究は少なかった。2) 対象文献の約6割が1990年から1993年の4年間に含まれ, 医師によるエビデンスレベルIIIの現状報告が多かった。3) 1996年以降の文献数は減少しているが, 心理・社会面に焦点を当てたインシデトスタディや質問紙調査等の研究が微増し, この分野の研究が次第に進展し始めている。4) 今後, 看護に有用なエビデンスレベルの高い研究を増やすために, 多様な研究方法を取り入れた量的研究を行うと同時に, 対象の複雑な社会・心理状況を考慮した質的研究によって, 10代妊婦の多面的な問題把握とその解決策に結びつく研究を発展させることが必要である。結論本文献調査より, 10代妊婦の多面的な問題把握とその解決策に結び付くような研究が必要なことが明らかになった。
著者
渡邊 淳子 恵美須 文枝 勝野 とわ子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-30, 2010
参考文献数
26

目的:本研究の目的は,熟練助産師の分娩第1期におけるケアの特徴を明らかにすることである。本研究においての熟練助産師とは,助産師として20年以上の経験をもち,さらに分娩介助の経験が1,000件以上ある助産師をいう。研究参加者は4名の助産師であり,それぞれの助産師が関わった9例の分娩を参加観察し,援助場面を中心に半構成的インタビューを実施した。分析の結果,<経過における特徴的な反応を生かしたケア><からだのバランスを調えるケア><自然な流れを尊重したケア><家族の出産を演出するケア><産婦自身の力を引き出すケア>の5カテゴリーとそれに含まれる12のサブカテゴリーが抽出された。熟練助産師は,自然分娩に対する自己の信念を持ち,経験から導かれた感覚を用いて判断し,それに基づいたケアを行っていた。
著者
小川 久貴子 安達 久美子 恵美須 文枝
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1_17-1_29, 2007 (Released:2008-07-07)
参考文献数
25
被引用文献数
1

目 的 本研究は,10代女性が妊娠を継続するに至った体験がどのような意味をもっていたのかを探求し,その特徴を明らかにすることである。対象と方法 研究協力の承諾が得られた10代で妊娠した女性8名を対象に,半構成的面接を3~4回(1.妊娠30週以降,2.産褥入院中,3.産後1ヶ月)行った。得られたデータの逐語録を,現象学的研究方法を参考にして質的記述的に分析した。結 果 10代女性が妊娠を継続するに至った体験は,Aは「苦労した生い立ちからの早期脱却と,結婚出来なくても母親になりたいという強い願望」,Bは「過去の中絶の後悔から今回は産むという決意の元,両親の祝福も受けた価値ある妊娠」,Cは「出会い系(IT)で知り合った相手との予定外妊娠に対する困惑と共に,実父の承認を得るための学業への前向きな取り組み」,Dは「過去の中絶の後悔から,今回は義母の猛反対や経済的に困難な状況下でも産むという決意」,Eは「彼の家族との繋がりにより新しい家庭を築く喜びと共に,医療者による中絶や母親役割を前提にした関わりへ反発」,Fは「予定外の妊娠による心身の辛さと共に,合格大学を退学したくないため学業との両立を決意」,Gは「困惑した予定外妊娠にもかかわらず周囲の後押しがあり,友人から疎外された中でも新しい家庭へ希望を抱く」,Hは「過去の中絶の後悔から,猛反対の両家を説得する決意と共に,妊娠や母になるための準備に価値を見出す」であった。また,妊娠継続に至る体験の特徴では『中絶体験の後悔』,『新しい家庭を築く憧れ』,『周囲の受け入れ』,『自分の意志を貫く強さ』,『医療従事者の否定的対応』の5点が明らかになった。結 論 予定外妊娠が多い10代女性は妊娠を継続させるために,学業の両立や家族関係の調整など多面的な体験を多くしており,それぞれに固有の意味が存在していた。また,8例の体験の特徴として,5つの事項を取り出すことが出来た。
著者
園部 真美 恵美須 文枝 高橋 弘子 鈴木 享子 谷口 千絵 水野 千奈津 岡田 由香
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.233-240, 2008-03-25

本研究は,地域住民のボランティア活動に関する意識の実態を把握することを目的とし,大学主催のボランティア講演会参加者を中心とする計94名を対象として,質問紙調査を実施した。対象者の性別は女性が88.3%平均年齢は44.8歳であった。過去のボランティア活動経験者は40.9%,現在の活動者は16.7%,その内容は,過去現在ともに「障害児(者)」「子ども」の割合が多かった。ボランティア活動をしていない理由の「機会がない・きっかけがない」という者の中に,潜在的ボランティア活動希望者がいることが示唆された。ボランティア活動の魅力は,他者の利益のためと自分のためにする場合の二つがあることが明らかとなった。自分にできる子育てボランティアとして「赤ちゃんの面倒をみる」「上の子の遊び相手をする」が多かった。ボランティア希望者と利用者とをつなぐコーデュネーターの役割をとる人材育成や組織作りが今後の課題である。