著者
熊谷 隆 杉浦 誠 千代延 大造 尾畑 伸明 市原 完治
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

1。本研究を遂行する中で、有限分岐的フラクタル上の確率過程についての新たな知見が得られた。P.c.f.self-similar setと呼ばれる自己相似性を持った有限分岐的フラクタルの上にレジスタンスメトリックという距離を入れたとき、この上の拡散過程の熱核(基本解)の精密な評価が一般に可能であるという結果である。これまでに、図形に強い対称性がある場合には熱核のアーロンソン型の評価が得られていたが、今回の研究により、一般にはアーロンソン型の評価は成り立たないことがわかり、さらにショーティストパスの挙動との関連が詳しく調べられた。この結果を熊谷は共著の論文にまとめ、J.London Math.Soc.に掲載予定である。2。インフィニット、ラミファイド(無限分岐的)フラクタルについては、ランダムシェルピンスキーカーペットに於ける拡散過程の熱核の研究を行い、サンプルとなるカーペットごとの熱核の詳しい評価が得られ、ランダムネスに強いエルゴード性の条件が課せられる時には、この評価からさらに確率1で成り立つ評価が導かれることが分かった。図形が高次元の場合、バーロー・バス達によるカップリングの方法を用いることによりハルナック不等式を証明することが議論の一つの鍵となった。この結果を熊谷は共著の論文にまとめ、投稿予定である。3。ユークリッド空間での現象とのつながり、特にホモジナイゼーションについては、楠岡氏との共同研究以来くりこみ不変な点の安定性が問題になっている。本研究の中で、海外の学会等で関連した研究を行っている研究者達と議論を行い彼等のプレプリントを読むことによりいくつかの新たな手法、視点を得ることが出来たが、それを我々の範疇に適応するには依然いくつかの技術的困難が残っている。これは今後の課題である。
著者
尾畑 伸明 齊藤 公明 浦川 肇 日合 文雄 田崎 秀一 有光 敏彦 青本 和彦 千代延 大造
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,古典確率解析において'素'過程の役割を担っているブラウン運動とポワソン過程を量子ホワイトノイズ解析の枠組みにおいて統一し,従来の伊藤解析を拡張した。具体的な項目は以下のとおりである。(1)正規積ホワイトノイズ方程式。ホワイトノイズ作用素論の根幹にあるシンボルの理論を深化させた。それによって,拡張された確率微分方程式のの解の存在・一意性・滑らかさを詳細に調べた。(2)ホワイトノイズの高次冪とレヴィラプラシアン。ホワイトノイズの2乗とレヴィラプラシアンの関連を明らかにし,レヴィラプラシアンに付随する確率過程を直積分によって構成した。(3)複素ホワイトノイズ。シーガル・バーグマン同型をホワイトノイズ作用素に対して通用する形に拡張し,核型性に依存しない作用素シンボルの特徴づけ定理を証明した。作用素のユニタリ性の判定条件を証明し,正規積ホワイトノイズ方程式の解がユニタリになるための必要十分条件を導いた。(4)物理への応用。散逸過程を記述する種々の方程式の相互関係を組織的に研究し,数理的諸問題を明らかにした。フォック空間系列に関連して,特異なボゴリューボフ変換が現れるのを確認した。(5)代数的確率論からの視点。「量子分解」によるグラフの隣接作用素の漸近的スペクトル解析を確立させた。新しい例を構成し,極限分布のみたす必要条件を導いた。この制限を乗り越えて,q-変形ガウス分布を議論するための予備的考察を行うとともに,別のタイプの極限定理も証明した。
著者
村井 隆文 内藤 久資 千代延 大造 小沢 哲也 舟木 直久 青本 和彦
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

コンパクトリ-マン多様体上の調和写像に関連して現れる非線型楕円型方程式及び古典力学的ハミルトン系流体現象から現れる同種の非線型方程式を解析し、その幾何学的構造、確率論的解釈及び方程式自身の吟味を試みることが目標である.特に、これらの方程式の泡沫現象、爆発現象、安定性、境界条件の吟味等に焦点を合わせて研究を行っている.これらの幾何学的構造を明らかにし、確率論的意味付けを与えることは純粋数学としての重要性のみならず、応用の立場からも不可欠である.自然現象と照らし合わせながら問題設定、結果の吟味を行う必要がある研究代表者は、方程式の基本構造はその再生的構造が本質的であると考え、この立場から文献1、2(報告書欄11、上から順)をまとめた.楕円型方程式の基本構造は、対応する境界特異積分方程式と境界値問題に帰着する.この立場から、境界上のヒルベルト変換を導入しその構造と境界値条件の関連を調べた.青本氏は方程式の代数化を試みgー解析的立場から文献3,4,5を発表した.舟木氏は確率論的観点から流体力学的方程式(特に、ランダウ型方程式)の吟味とその考察を行い文献6をまとめた.小沢氏は幾何学的立場から、軌跡や安定性についての問題を量子的に定式化した.さらに多様体の埋蔵についての議論も行った.千代延氏は確率論的立場から、ラプラス型方程式の漸近挙動を解析した.内藤氏は微分幾何学的立場から、多様体上の熱力学的調和写象の安定性を議論した.