著者
香川 真二 千田 廉 木村 愛子 前田 真依子 米田 稔彦 星 信彦 岡田 安弘
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.C0457, 2006

【目的】<BR>近年、歩行解析に三次元加速度計が広く利用されている。しかし、定量的な加速度解析や歩行周期の特定に関する報告は少ない。そこで、三次元加速度センサとデジタルカメラ映像を同時にパーソナルコンピューター(以下、PC)へ記録できるシステムを用いて、腰背部に取り付けた加速度データと歩様の関係を詳細に検討した。さらに、健常者と変形性股関節症(股OA)患者の加速度変化をリーサージュ図形により可視化し、各方向へのバランス評価を行った。また、各軸の加速度変化を周波数解析し、OA患者と健常者間の定量的な比較を行った。<BR>【方法】<BR>20人の健常者(平均年齢: 62.2)と20人のOA患者(平均年齢: 58.3)を対象とした。全ての対象者に研究趣旨を説明し同意を得た。被験者全てに腰背部中央に無線型加速度センサ(サンプリング周波数:600Hz, Microstone)を取り付け、さらに、主要関節部位に発泡スチロール製マーカー(直径: 3 cm)を装着し、自由歩行として約20mの歩行をサンプリングした。加速度センサデータと歩行動作画像は同時にデジタル化しPCへ記録した(Digimo)。<BR>【結果】<BR>加速度変量のピークと各歩行動作は単純には一致せず、個体間でも共通した傾向は見られなかった。しかし、健常者およびOA患者とも左右・上下での加速度がmid stance時に0に近い値を示し、この時点において「等速状態」であることが示された。PC上に加速度変量をリサージュ図形として可視化し、左右、前後および上下のバランスを視覚的かつ定量的に比較した。OA患者は左右・上下・前後とも健常者より、不規則かつ大きく変動した。2次元の加速度で合成される2次元ベクトル値(スカラー)の総和平均を比較すると、OA患者は健常者より有意に増加していた(p<.01)。mid stance時を基準にし、Fast Fourier 変換 (FFT)を用いて、加速度のパワースペクトルを算出した。OA患者における左右および前後方向での高周波領域(5-20Hz)のパワー値は、健常者より有意に高い値を示した(p<.05)。<BR>【考察】<BR>今回の結果から三次元加速度計波形の左右・上下成分加速度よりmid stanceの特定が可能となり、mid stanceを起点として歩行解析を行うことが、定量的解析方法の基準となることが期待される。加速度変化の可視化により、視覚的に歩様バランスを判断できる可能性も示唆された。患者への説明用データとしても有用であると考える。左右・前後成分でOA患者の高周波領域のパワー値の有意な増加は、体幹・骨盤の挙動を代表した異常歩行と関係することが示唆される。定量的加速度波形解析は、時間的変化を比較できることから、リハビリ過程の評価の一つとして有効であると考えられる。
著者
岡田 啓司 小林 晴紀 花田 直子 平沼 宏子 林 奈央 嵐 泰弘 千田 廉 出口 善隆 佐藤 繁
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
産業動物臨床医学雑誌 (ISSN:1884684X)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.183-188, 2011-12-30 (Released:2013-05-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

挙肢を行わない簡便な蹄病診断法の確立を目的として,3軸加速度センサと跛行スコアを組み合わせて,牛の跛行の主な原因となっている蹄底潰瘍および白帯病の摘発を試みた.その結果,正常牛の歩様は外蹄から着地し内蹄で踏み切り,重心が左右にぶれない安定した歩様であるため,跛行スコアは1,加速度変量総和は3622±227m/s2で安定していた.蹄底潰瘍罹患牛は歩行時に罹患肢の内蹄と外蹄を同時に着地し,跛行スコアは2~3,加速度変量総和は7225±877m/s2であり,正常牛に比べて有意(p<0.01)な高値を示した.白帯病罹患牛の加速度変量総和は正常牛と同様の値を示したが,跛行スコアは3~4であった.よって加速度センサと跛行スコアを組み合わせることにより蹄底潰瘍と白帯病を摘発できる可能性が示唆された.