- 著者
-
千菊 基司
- 出版者
- 日本教科教育学会
- 雑誌
- 日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.1, pp.13-26, 2019 (Released:2021-02-03)
- 参考文献数
- 16
全国規模の英語力調査結果を踏まえ,「話すこと」,中でも「やり取り」に関わる力を高校生につける指導の高度化が提言されているが,その効果についての実証的研究論文は,ほとんど見られない。本研究は,スピーキング指導で交渉を行う言語活動を用い,英語発話の質が向上することを検証することを目的として行った。高校3年生の1クラス(実験群)を対象に,交渉を行う言語活動を用いた指導を一定期間行い,その前後にスピーキングテストで得られた発話の質の変容を,同様の指導を受けていない別生徒(対照群)の発話と,量的に比較した。実験群の生徒の発話には,流暢さに向上が見られた。また,相手の意見を引き出すことを意図した発言が増え,会話が行き詰まった時に主導権を取って,事態の解決に乗り出そうとする発言も見られた。実験群の受けた指導によって,概念化や形式化の段階で生徒が受ける認知的負荷が減り,対話の流れに自分の発言を嚙み合わせることに必要な注意資源を確保して練習することが可能になり,質の良い発話が練習時に達成され,発話の質の向上につながったと考えられる。