著者
千菊 基司
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.25-37, 2018 (Released:2020-01-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は,発話過程の形式化の速度向上を図る指導がもたらす,発話の質の向上を検証することを目的として行った。高校2年生の1クラス(スピーキング群)を対象に,複数の絵によって示されたストーリーテリングの活動を一定期間行い,その前後の発話の質の変容を,同様の指導を受けていない別クラス(対照群)と比較した結果,複雑さと流暢さに向上が見られた。特に,絵に付随して与えられた文字情報の発話への取り込み方を比べると,スピーキング群の発話の質が向上したことがわかった。スピーキング群の経験した活動では,概念化の段階で受ける認知的負荷を減らし,形式化の段階で既習語彙へのアクセスに必要な注意資源を確保して練習することが可能になり,複雑さ・正確さ・流暢さのそれぞれの観点から質の良い発話が練習時に達成され,指導後の調査での発話の質の向上につながったと考えられる。
著者
千菊 基司
出版者
日本教科教育学会
雑誌
日本教科教育学会誌 (ISSN:02880334)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.13-26, 2019 (Released:2021-02-03)
参考文献数
16

全国規模の英語力調査結果を踏まえ,「話すこと」,中でも「やり取り」に関わる力を高校生につける指導の高度化が提言されているが,その効果についての実証的研究論文は,ほとんど見られない。本研究は,スピーキング指導で交渉を行う言語活動を用い,英語発話の質が向上することを検証することを目的として行った。高校3年生の1クラス(実験群)を対象に,交渉を行う言語活動を用いた指導を一定期間行い,その前後にスピーキングテストで得られた発話の質の変容を,同様の指導を受けていない別生徒(対照群)の発話と,量的に比較した。実験群の生徒の発話には,流暢さに向上が見られた。また,相手の意見を引き出すことを意図した発言が増え,会話が行き詰まった時に主導権を取って,事態の解決に乗り出そうとする発言も見られた。実験群の受けた指導によって,概念化や形式化の段階で生徒が受ける認知的負荷が減り,対話の流れに自分の発言を嚙み合わせることに必要な注意資源を確保して練習することが可能になり,質の良い発話が練習時に達成され,発話の質の向上につながったと考えられる。
著者
千菊 基司
出版者
中国地区英語教育学会
雑誌
中国地区英語教育学会誌 (ISSN:24354422)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.65-77, 2021-03-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
16

In the present practice of a lesson unit, 1st-year high school students of one classroom had classes with speaking activities designed to enhance their interactive skills with which they can develop their conversation cooperatively to reach agreement. Their 3-week engagement in the speaking module focusing on sub-skill training, which would enable them to play better roles in interactive settings, preceded 3-week intensive engagement in role-play activities. The analysis, comparing their pre-test performance to their post-test performance, shows they became able to ask more confirmation questions, give more comments before showing opposite views, and argue logically. The result supports the view that the engagement in the role-play speaking activities help high school students become more aware of making the speech more interactive while exchanging their opinions.
著者
千菊 基司 多賀 徹哉 幸 建志
出版者
広島大学
雑誌
中等教育研究紀要 (ISSN:09167919)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.137-142, 1998-03-24

教育実習の最大の目的は,「授業を成立させる力」をつけることにあろうが,この力については教授が容易な技術と,そうでない技術に分けられると考えてよいであろう。特に後者は授業を通じて獲得されるものであるが,実習生の人数と教官の持ち時間の関係で限られた時間しか実際に授業の経験ができない。この点を克服するために,実習生全体に,(1)ビデオで録画した授業を媒介にした授業観察の指導とその後の指導案を考える演習,(2)指導案通りに進まない時の対処法についての講義,(3)発問の分類や発問を考え出す演習等を行った。初めての試みであったが参加した実習生には好評で,異なる学年を教える実習生がグループの枠を越えて多様な意見を交換することで,多くを学んだようである。本稿はその実践報告と,指導教官や実習生からのフィードバック等から得られた今後の課題からなる。