著者
菅沼 惇一 千鳥 司浩 池田 由美
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.399-404, 2022 (Released:2022-08-20)
参考文献数
28

〔目的〕本研究の目的は,足部感覚トレーニングが健常若年者の足底の体性感覚に与える影響を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は健常若年者26名とした.介入は,閉眼の座位姿勢にて多軸不安定板上に裸足で足底部を乗せ,前後左右の1ヵ所にランダムに重錘を置き,どこに重錘があるか回答を求めた.介入前後で足底(母趾,小指球,踵)の触圧覚および二点識別覚を計測し比較した.〔結果〕介入後は,触圧覚は変化を認めなかったが,足底(母趾,小指球,踵)の二点識別覚の向上が認められた.〔結語〕本研究で考案した足部感覚トレーニングを実施することで,即時的に足底の感覚機能が向上することが示唆された.
著者
袴田 友樹 千鳥 司浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.759-766, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
32

〔目的〕人工膝関節全置換術後に術後痛が持続していた症例に対して,知覚機能を向上させるための課題を実施し,歩行能力に改善を認めたため報告する.〔対象と方法〕対象は80歳代女性で,知覚機能の低下が生じ,歩行時痛や歩行能力の改善が認められないため,外来理学療法を行った.介入は,膝および足関節の位置覚課題,硬度識別課題,アライメント変化を認識する課題を行った.評価は,膝および足関節位置覚,硬度識別課題の正答数とした.〔結果〕膝,足関節位置覚の改善および硬度識別課題の正答数が増加した.さらに歩行時痛が消失し,知覚機能の向上,運動恐怖,自己効力感に改善を認め,歩行能力が向上した.〔結語〕人工膝関節全置換術後患者に対して,運動恐怖,自己効力感を考慮したうえで,知覚機能を高めていく介入の必要性が示唆された.
著者
千鳥 司浩 平井 達也 村田 薫克 下野 俊哉
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.35 Suppl. No.2 (第43回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0219, 2008 (Released:2008-05-13)

【目的】術後の症例は術侵襲による疼痛や疼痛に対する不安から十分な筋出力が発揮できないことが少なくない。こうした筋出力不全を呈する症例では反射性抑制などの神経生理学的な影響だけではなく、筋収縮を行う上での運動イメージが変容し、筋収縮が困難になっていることが考えられる。本研究では運動イメージを想起する作業が即時的な筋出力に及ぼす影響について検討した。【対象】ACL再建術(BTB)を施行した患者8名(男3名、女5名)を参加者とした。平均年齢20.9±5.7歳、平均身長164.7±5.2cm、平均体重67.4±21.7kgであった。すべての患者に本研究の主旨を十分に説明し、同意を得た。【方法】すべての患者は術後スケジュールに沿い、術後2週より5日間にわたり膝90度屈曲位にて疼痛の許容範囲内で膝伸展筋の等尺性最大収縮の筋力強化練習を30分間行った。毎回の筋力強化練習直後にHand Held Dynamometerにて練習時と同肢位における膝伸展筋の最大等尺性筋力を3回測定し、最大値を代表値とした。同時に膝伸展筋力発揮時の主観的疼痛強度をVASにて測定した。運動イメージを想起する介入は5日目の筋力強化練習の終了直後に行った。介入の方法は精度の高い運動イメージを形成させることを目的に健側の筋収縮における感覚を言語化し、そのイメージを患側に転移させ、比較照合する作業を繰り返し行った。また言語化を援助するために筋収縮の感覚を物に例える隠喩や擬態語で表現するように指示し、筋感覚を符号化する手続きを20分間行い、その直後に筋力とVASについて介入前と同様の測定を行った。分析はデータ収集初回の筋力値、VASの値を基準値として、2~5日および介入後の値の変化率(%)を算出し、標準化を行った。統計学的分析には一元配置分散分析、多重比較検定(Scheffe)を用い、有意水準を5%未満とした。【結果】2~5日の練習後の筋力には変化が認められなかった。一方、5日目における筋力の増加は平均32.4±24.9%、その直後の介入では平均81.3±30.6%であり、介入による有意な筋力増強の効果が確認できた。またVASは介入前後における変化は認められず、介入により疼痛が減少もしくは変化のないものが7例であった。介入後はすべての者が身体に生じる筋収縮の感覚について言語化することができ、筋出力の増大を実感した内省報告が得られた。【考察】運動イメージ想起の介入直後では筋出力が増加し、疼痛の増大は認められなかった。このことより介入前における筋出力の低下は疼痛強度とは直接的な関係がないことが示唆された。今回の即時的な筋出力の増加は健側の運動イメージを参照することで、術侵襲により変容していた筋収縮イメージが修正され、運動ユニットの動員、発射頻度そして同期化による神経性の要因が変化を起こしたものと考える。
著者
渡邊 紀子 平井 達也 宮本 浩秀 千鳥 司浩 下野 俊哉
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P3009-A4P3009, 2010

【目的】変形性膝関節症(膝OA)は,膝機能低下の影響により日常生活動作の遂行に支障をきたしやすい.日常生活動作を適切に遂行するには,調整能力が重要であるが,膝OAでは最大筋出力の検討が多く調整能力についての知見は少ない.調整能力の評価方法の1つにグレーディングという概念がある.グレーディングとは自己の出力強度を主観によって調整する能力をいう.本研究の目的は,膝OA患者の膝伸展グレーディング能力を検討するために健常高齢者と比較することである.<BR>【方法】対象は,健常高齢者10名(健常群),平均74.0±2.6歳,変形性膝関節症と診断された高齢者7名(膝OA群),平均76.7±5.7歳で腰野の分類にてグレード1~3,FTAは179±2.7°で,すべて女性とし,認知症状のない者(HDS‐R25点以上)とした.尚,両群に年齢の有意差はなかった.方法は,OG技研社製アイソフォースGT‐300を使用し等尺性膝伸展出力を測定した.測定肢位は端座位膝関節90°屈曲位とし,測定下肢は,健常群ではランダムに決め,膝OA群では患側とした.本実験では,100%(最大出力)を測定後,グレーディングを測定した.順序は100%に対し,A:40%→80%→20%→60%,B:60%→20%→80%→40%をA-B-A,B-A-Bの2パターンを対象者ごとにランダムに割り当てた.測定は,検者の合図により出力を開始し,指示された目標値になったと思うところで対象者に合図をさせた.実験中の痛みの強さに対して,実験後,VASを用い評価した.データは,合図の時点での出力データを採用し,3回の平均値を代表値とした.データ処理は,対象者ごとに各目標値に対する割合をグレーディング値(G値:%),各目標値とG値の絶対誤差(誤差:%),G値の変動係数(CV)を算出した.統計学的分析は,1)G値,2)誤差,3)CVについて,対象者(健常群・膝OA群)と目標値(20,40,60,80%)を要因とした混合2要因分散分析を行った.事後検定は単純主効果の検定及び多重比較を行った.いずれも有意水準は5%未満とした.<BR>【説明と同意】対象者には,倫理的配慮と上記研究内容を口頭で説明し,同意を得た.<BR>【結果】G値(平均)は,健常群/OA群の順で,目標値20%:29.2/39.2,40%:36.3/49.1,60%:42.1/61.3,80%:49.1/65.1であった.分散分析の結果は,1)G値:対象者要因(F(1,15)=2.302,n.s)に有意な主効果は認められず,目標値要因(F(1,15)=28.468,p<.001)に有意な主効果が認められ,また有意な交互作用(F(1,15)=1.115,n.s)は認められなかった.目標値要因の主効果における多重比較では,目標値20%に対し40%,60%,80%に,40%に対し60%,80%に有意差が認められた.2)誤差:対象者要因(F(1,15)=0.033,n.s)と目標値要因(F(1,15)=1.857,n.s)において有意な主効果は認められず,また有意な交互作用(F(1,15)=0.778,n.s)も認められなかった.3)CV:対象者要因(F(1,15)=9.508,p<.01)と目標値要因(F(1,15)=4.234,p<.05)に有意な主効果が認められ,また有意な交互作用(F(1,15)=5.429,p<.01)も認められた.目標値要因の主効果における多重比較では,20%に対し60%,80%で有意差が認められた.交互作用における単純主効果の結果, 20%と40%の対象者要因に単純主効果が認められ,膝OA群の目標値要因で単純主効果が認められた.膝OA群の目標値要因の単純主効果に続く多重比較では,20%に対して40%と60%に有意差が認められた.尚,本実験中のVASは全対象者0であった.<BR>【考察】健常群と膝OA群を比較した結果,G値に差はなく,誤差での比較も差は認められなかった.しかし,CVについては,20%と40%で健常群より膝OA群の方に変動が大きく,また,膝OA群において出力量の違いで変動が大きくなることが示唆された.一般に,膝OAでは,関節位置覚の低下や筋収縮の遅延をまねくとされ,これらの要因が,グレーディング時の変動に影響を与えた可能性が考えられた.また,罹患年数や変形程度の影響なども考えられるため,今後,膝OA群の対象者数を増やし,さらに検討する必要がある. <BR>【理学療法学研究としての意義】理学療法評価は,最大筋力などで表すような,量的な評価を指標にしたものが多いが,グレーディングのような質的評価も加えて,運動器疾患の運動機能を捉えることは重要であると考えられる.