著者
大田 啓一 半田 暢彦
出版者
日本海洋学会
雑誌
日本海洋学会誌 (ISSN:00298131)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.25-32, 1985
被引用文献数
8

西部北太平洋上で粒径別に採集したエアロゾル試料の有機炭素, アルカンおよび多環芳香族炭化水素 (PAH) を分析した結果, 次のことが明らかとなった. すなわち, これら有機物の大気中濃度は, 日本あるいはユーラシア大陸からの距離が遠くなるにつれて減少しており, 減少の度合いの大きさは, PAH>>アルカン>有機炭素の順であった. またこれら有機物は, 粒径1μm以下の小粒子に主として含まれていた. アルカンとPAHについての分析結果は, 日本の沿岸海域のエアロゾルに含まれる炭化水素は陸上の人間活動に由来するものであり, その寄与は, 日本から約1,000kmの海域におよんでいることを示した. 一方, 遠洋のエアロゾルについては, 1μm以下の粒子の炭化水素は陸上の自然源起源であり, それより大きい粒子中のそれは海洋起源であることが明らかになった.
著者
樋口 敬二 茅 陽一 川那部 浩哉 半田 暢彦 松野 太郎 中根 千枝
出版者
中部大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1994

地球環境科学の基本的な考え方、各学問分野において推進すべき研究課題、そして推進方策について6WG(研究基盤、気候システム、物質循環、生態システム、人間活動、総合技術)とそれを総括する総括WGを設けて検討を行った。7月から2月にかけて、計35回のWG会合を開催し、以下の結果を得た。(1)地球環境科学の定義としては、「人類の生存基盤である地球環境の理解を深め、人間活動の影響によって損なわれた地球環境の維持・回復に関連する諸問題の解決に資する総合的・学際的科学であり、そのために大気、海洋、陸域、生態系に関わる地球環境変動のメカニズムを解明するととともに、人間活動と地球環境の相互関係を踏まえて、影響の予測及び対応策に関する研究を行い、環境調和的な人間活動の在り方を考究するものである」と定義するのが適当と考えられる。(2)主要な研究課題としては、現象の総合化、対応策の総合化などに基づいたものが重要であり、各研究課題はa)人間活動や社会システムの変化による地球環境の変化を解明する視点、b)人為的な地球環境変化による自然や人間社会への影響を解明する視点、c)人間活動と自然現象との相互作用から地球環境保全の方策を探る視点の3視点を基にしたものに分類できる。たとえばa)に該当する一般的課題としては、人間活動の拡大や社会システムの変化による地球環境負荷の増大に関する研究、人為的環境負荷の増大による地球環境の変化に関する研究、地球環境の環境変化を引き起こす社会システム及び自然システムの解明に関する研究が考えられる。(3)推進方策として最も重要なのは、既存の研究ネットワークをもとにプロジェクト型の研究を推進する中核的研究機関の設立である。また、同時にプロジェクトの実施体制の改善、人材の流動化、国際共同研究の一層の推進と主としてアジア・太平洋地域でにおける持続的な研究とデータの蓄積を図ることが最も重要であるという方向が示された。